2017年9月22日金曜日

打波川 願教寺谷~カサバノ谷支流~刈込池













ぼんやりとした明かりでだだっ広い所に大きな液晶テレビが有る。どういうわけかテレビの5m以内には近づく事は出来ない。する事もないので5mさがって茫っと画面を見ていると突然ハードポルノの上映が始まる。音声はIannis Xenakisの「Tetras」が大音量で流れているので全く欲情する事はない。画面の中で動いるのはただの動物である。25分くらい鑑賞していると、テレビを中心として半径1km位の円状に地面が轟音とともに突然陥没した。うう、これで俺も終わりかー、と後悔と懺悔に忙しくなり喜んだのも束の間、陥没した割れ目からふさふさの草が陥没したのと同じ速度で一気に生長し始めた。おろおろするうちにグラスホッパーなんかの草食虫が湧いてきて、それを貪る肉食虫、さらにそれを啄む小動物、猛禽類なんか現われて一つの生態系が形成された。ふさふさの草の中に稀に紫色の花が咲いている。匂いはきつくなく花びらが多めで弔花のようだ。空間の全体を俯瞰したくなったので、らせん状の階段を徐々に登るとする。牧歌的な円状の外側には金星の表面みたいに暴風が吹き荒れる硫酸の海がポルノTVを中心とする同心円状に牧歌的円内の約7倍の表面積で広がっていた。ややイエロー帯びた荒れた景色である。さらに階段登ると、硫酸の海の外縁エッジにパチンコ台がポルノTV同心円状一列に並び、その各台には齢40代後半の全く同じ顔をしたおじさんが何百万人と玉を打っている。当然パチンコなので、玉が出る台もあれば出ない台も有る。銀色の玉の出入り、ただそれだけに辛酸苦杯を嘗め尽くしたおじさんが一喜一憂する。パチンコ台の明滅とおじさんの感情の明滅が呼応した様はマスゲームのようで感動を禁じえない。おじさんと金星表面類似空間はどういう原理かわからないけど明確に仕切られているようで全く相関性無く存在しているようだ。一列に並んでいるパチンコ・おじさん層は薄く同心円のその外側は紺色から徐々に黒くなっていて最終的には漆黒となっている。階段を降りてTVの前に戻ると、吹く風は冷たくなり、画面の音声が「PLEIADES」に変わって音量はクレッシェンドとデクレッシェンドが1分間隔で繰り返されるようになっていた。足元にはキノコが生えている。秋の深まりを感じた。

以上が願教寺谷からカサバノ谷支流を下降し刈込池を訪れた際の筆者のイメージである。このルートは沢登りとしては面白くないかもしれない。しかしながら、ダイナミックな自然が短い区間に纏まっていて想像力を盛大にくすぐられるので、遡行者はげらげらと無抵抗に笑うしかない。こういう緩急のついた山が大好きだ。願教寺山南西壁は部分的に硬そうな所もあり、厳冬期に登ると2~3P程度の面白いクライミングが出来そうで今後が楽しみなエリアである。

<アプローチ>
最短距離、最安値を狙うならば国道359号から国道157号経由で鳩ヶ湯方面へ。下小池の駐車場から適当に本流へ下降して入渓した。入渓後、堰堤が連続して堪らないので一度林道へ上がったが、林道も荒廃していた。仕方ないので堰堤の乗り越しを繰り返した。下降は山頂から直ぐ東側のコルから沢を下降するのが早い。この沢はナメが美しい沢だが、少し際どいクライムダウンもある。懸垂は2回した。平らな場所に出ると水は伏流するが藪は少ない。沢筋を適当に歩けば刈込池の遊歩道に出合う。

<装備>
下降用にロープ。登りでは必要ない。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。

<博物館など>
白山神社の大カツラ:打波の道路沿いにある白山神社にあるカツラ。なんでも樹齢1300年とのこと(本当かしら)。折り重なった枝が時の流れを感じさせ趣がある。

白山平泉寺:白山信仰の越前側の馬場である。鎌倉~室町時代にかけては一大宗教都市であったそうだ。美濃の長滝寺、加賀の白山比咩神社も含めて訪れたい場所である。杉の並木と苔が美しい。


勝山城博物館:勝山城と越前大仏は異様なデカさで周囲の景観に全くなじんでいない。どちらも相互タクシーの創業者である多田清氏が私財を投じて建てらたそうだ。甲冑などの武具や中国の刺繍が展示されているが、うーん。有り体に述べると外観負けした博物館である。

福井県立恐竜博物館:北陸随一のスケールを誇る自然系博物館である。生物栄枯盛衰のシンボルとして恐竜が前面に出されているが、地球の歴史全体を深く学べる。何度でも訪れたくなる施設だ。

白山恐竜パーク白峰:福井の恐竜館より鄙びていて風情がある。展示は普通。公園が併設されていて子供は楽しい。川の対岸に手取層の化石帯が露出しており観察可能。博物館のイベントで採集もしている。

<温泉>
鳩ヶ湯:2013年に以前のご主人が亡くなられ、以降、岐阜の会社が運営するようになった。最寄で日帰り入浴可能で600円也。普通の温泉である。

白峰温泉総湯:昔は安くて汚くて良い銭湯だった。綺麗になって値段も上がった。でも良い温泉。

2017年9月18日月曜日

庄川 横谷















横谷はとんでもなく面白い谷である。と、書いても「感動の閾値が低いダボハゼ沢屋がまたほざいとるわ」と罵倒されるだけなので可能な限り相対的な表現を心がける事とする。難易度としては大畠谷の技術核心の部分が3、4箇所出てくるといった感じ。ロープを出さないシャワークライミングも緊張する場面は多い。基本日帰りで身軽なのでムーブを楽しめるはずだ。ルートファインディングを含む巻きの悪さは尾安谷などの黒部川支流に比肩する。V字状のゴルジュが緩み無く延々と続いた後に現れる大スラブには感嘆の声が上がるだろう。最後が強大な人工物であったとしても全然問題にならない名渓である。

こんなに素晴らしい谷なのになぜ登られる事が少ないのか。考察するに「横谷」という何処にでも有りそうな名前のためではないか。そもそも、「横」という表現は中心となる別存在を示唆しており従属的である。横谷には主体的な名称は無いといえる。ネーミング手法としては、「ゴミムシダマシ」や「後立山」と類するが、相違点は何の横かは明言されないため、茫洋とした印象を与えている点である。何と哀しい運命だろうか。筆者は憐れな横谷を応援すべく横谷の横へ寄り添う事を決意した。なので、誠に勝手ではあるが横谷は筆者の「横」谷とすることにした。といっても急に白川郷へ引っ越す事も出来ないので精神的にである。ところで、俺の横は誰やねん。と、横を見たらオーストラリア土産のカモノハシのパペットと全国高総文祭とやま2012のキャラクターである「らいとくん」の縫いぐるみが居る。俺とカモノハシパペットとらいとくん。三人寄れば文殊の知恵、まさしく三本の矢である。これで応援すれば横谷の人気沸騰は間違いない。今日もパペットを嵌めてレッツ、チアーアップ!

<アプローチ>
国道156号は九十九折で時間が掛かる。値は張るが白川郷ICまで高速利用か、国道359号で城端へ行き五箇山トンネル経由がお勧め。ホワイトロードのゲート手前に駐車し林道へ入り入渓する。ホワイトロードは歩行禁止なので三方岩山を経て登山道を利用して下山しよう。入渓は開通時間前の早い時間に済ませないといけない。

<装備>
カム一式、ピトン各種。良く磨かれた岩だが、コケている部分も多いのでフェルトが良いと思う。側壁の岩質は逆層スラブである。バンドやテラスだと思ってもスラブの場合もあるので要注意だ。水量が多いと突破が難しい滝もある。

<快適登攀可能季節>
8月~10月中旬。シャワークライミングが多いので暑いときの方が良いかもしれない。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

高地岳北壁第一ルンゼ





現在登山界においてボルトなどの残置物を残す事は基本的に悪とされている。道具と技術の発達していなかった時代はいざ知らず、時は21.17世紀5.15dやE11も登られる時代である。才能が無く努力しない人間が自然を不可逆に傷つけて、後世のクライマーへ冒険性を絶つなという論理である。そりゃあ、自然に敬意を払いながら挑戦し学び、自らに真摯になるため登攀しているのだからそうしたい。では、個人地主が存在せず後世に遺恨を残さないような場合、自然への影響が非常に少ない場所ならば不問なのだろうか。

高地岳北壁はクラックが極端に少ない壁である。写真の通り泥が固まったように見える壁であるが、岩は硬い部分も多い。核心のクライミング自体はⅣ級程度なのであろうが、中間支点はおろか、ビレイポイントの構築すらままならない。初登でもないし、ボルトを埋設してまで登る必要も無いと判断し途中でクライムダウンして下降した。敗退したものの、取り付きから眺めるカールマルクスフェースや、円形劇場のような第一ルンゼ取り付きの景色は素晴らしく最高の登山であった。

見た感じクライミングはそれ程難しくは無さそうだし、ボルトでも打って登れば素晴らしい景色やそこでしか味わえない体験ができるだろう。登らなかったのは面倒臭く感じたからだ。雪崩の通り道であるここは一冬でボルトなんて無くなってしまうだろう。そして抜落したボルトはあっという間に酸化して地に帰る。岩は元々剥がれやすい上、周囲に生物の影は薄く自然への負荷は非常に少ないと推察される。先の残置悪説はクライマーの勝手な理屈である。クリーンと思われがちなクラッククライミングだって、その中に生息していた生き物の住処を長期間(或いは半永久的に)奪っているし、岩場に生える地衣類は生長が非常に遅く貴重な生物だがバリバリ剥がしていて何の倫理問題にもなっていない。結局、人の気分の問題ですべて人間側の狭い視野でしか考えられていない論理といえる。人間同士のお約束事が嫌で山に来たのに、またお約束に縛られるなんてとってもシュールだ。

高地岳北壁の登り方は個々人に選択の幅が有ってよいのではないかと思う。僕はせっかちなので、ちまちまと岩に穴なんか開けてられないし、人がやるのも待っていられないだろう。それに登りながら穴を開けるのは怖そうだ。加えて吝嗇なのでボルト代が気がかりである。こういう場所はふと気が向いた時にフリーソロで登るのが一番自然で楽しいのではないかと思う。また、登れない場所が有るというのも憧れと想像の余地があっていいものだ。何はともあれ凄い所なので誰しも一度は訪れて欲しい場所だ。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。第一ルンゼは海川本流に滝となって落ちているので多分解る。出合いからルンゼを詰めるが、悪い草付きを詰める場面もあり結構緊張する。テラスからロープを出すことになると思うが、周囲には水が流れており大滝登攀という表現の方が的確である。下降は周囲を見る限り高地岳尾根が無難なようだ。

<装備>
脆い場所でのビレイポイントの作成用にジャンピングとボルト。岩が硬い場所はカムも使える場所も有る。ピトンも使える場所もあるが、岩のチェックは慎重に行いたい。足回りは沢靴でも十分。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。晩秋であれば水は涸れそうである。その場合クライミングシューズで登ると快適だろう。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

2017年9月12日火曜日

海川 鋸沢














沢登り界では多くの場合「流域で最も困難な」とか「悪絶なゴルジュ」や「最難」という文字列は「すっごく面白いからいってみ!」という言葉に変換可能である。これは沢登りの参考となる記録が古い事、或いは沢登りの記録を書く人が若干大げさであるためと考えられる。前者は時の流れだから致し方ないとして、後者は沢屋の罹患率が高いロマンティシズム病に由来するので筆者も大いに反省するところである。この病は直ぐに宇宙だの地球だの自然だのと、役に立たぬ戯言をひねもす騒ぎ立て一般社会の皆様へ迷惑を蒙る重篤な病である。筆者もこの病を古くから罹患しており、治療がままならぬまま而立を迎えようとしている。このまま病態が進行しては職場に迷惑がかかるのは必定。病気療養のため国外山岳地での集中治療が必要になるのではないかと危惧している。

鋸沢は登山大系に滝を完全に直登すれば海谷では最も困難な沢の一つと記載されている。登ってみたところ通例どうり面白い沢であった。遡行図の滝高は大分盛ってあるようで、出会いの2段滝は精々30mといったところ。ゴルジュの連瀑が続く序盤の突破と上部のスラブがポイントとなる。どちらもこれぞ海谷といった風情であり、楽しさ爆発にこにこスマイル地帯だ。稜線への抜けは撫でるような優しい草付きで藪漕ぎは一切無い。そこから鋸岳へのスリリングな登山道を経て山頂の雄大な景色を堪能して駐車場へ戻るころには貴方も宇宙が地球が自然がと騒ぎ始めているはずだ。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。ここからは本流を遡行してエビクラ西壁手前の川幅が狭くなる地点で左岸から合流するのが鋸沢である。日帰りの場合下山は鬼が面山~駒ケ岳を縦走するのが面白いと思う。海川をベースとして利用する場合は1458mから海川へ下降する登山道を利用すると良い。この海川へ下降する登山道は地形図に記載は無いものの良く踏まれており快適な道である。山峡パークまで国道8号線経由で2時間くらい。

<装備>
カム少々。ピトンをナイフブレードからロストアローを少々。クラックはそれほど発達していないので出番は無いかもしれない。連瀑帯は海谷らしい滝が多く楽しいが、巻く場合はやや渋い草付登りとなる。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

2017年9月7日木曜日

乗鞍岳 飛騨川 真谷











無雪期の乗鞍岳は過小評価されているのではないか。登山者からはスカイラインを利用して安易にピークを踏める点や五色が原の入場者制限など俗っぽさから敬遠されがちな気がする。しかし、乗鞍岳周辺の沢は静寂を保っておりナメに大滝にゴルジュにどれも素晴らしい景観を楽しませてくれる。堰堤や林道など人の手が入っている場所が多いが、そういう谷でも部分を切り取れば一級品の渓谷だったりする。下山が楽なので沢慣れしていない人には入山しやすい環境といえる。尾根では千町尾根が素晴らしい。高原のブナの森から湿原へ入り高山帯へとたおやかに山頂へ導いてくれるお気に入りの尾根である。登山者が少なく静かなのも魅力だ。花の時期にゆったりと歩いてみたい。

飛騨川の支流真谷は滝が連続して快適かつ楽しい谷だ。標高1700mから2700mへの遡行は高山帯の雰囲気も相まって独特の味わいがある。1900m付近から始まる連瀑帯は息つく間もない、というより深呼吸してゆったり味わいたい感じ。殆どの滝は直登か直ぐ脇を登る事が出来る。もちろん水量次第ではあるがどれも難しくは無いだろう。80mは有るだろう斜瀑は圧巻だ。流芯をシャワーで登ることも可能で爽快極まる区間だ。ぐいぐい標高をあげると沢はナメ状となり天国へ導いてくれるような風景になってくる。涸滝から岩場となりザレを少々歩けばあっけなく稜線に出る。そこから乗鞍岳主峰剣が峰までは一足飛びである。

<アプローチ>
アイミックス自然村南乗鞍オートキャンプ場から林道に入り、東谷出合いにゲートがあるので手前に車を止める。忠実に水線を詰めると藪漕ぎは全く無く稜線に飛び出す。折角なので剣が峰まで足を伸ばすと良い。地形図に記載されていない阿多野へ下山する道がある。道中には看板もあり、エアリアにも記載されている。ハイマツ帯で道が判然としない箇所があるが歩くのには支障は無い。下部の藪は刈払われていたが、時期と年によっては未整備の可能性もありそう。入渓点まで富山市内からおよそ3時間。

<装備>
沢慣れした人間であれば特に何も要らない。滝には節理が十分ある。確保する場合はカム、ピトン、ナッツどれも有効である。

<快適登攀可能季節>
7月~9月 南面とは言え、7月中旬までは有る程度の残雪がありそう。標高が高いので遅い時期は寒い。虫が少ないので真夏も遡行可能だと思う。

<博物館など>
光ミュージアム:崇教真光が運営する博物館。ピラミッド型の建築だけでも面白い。浮世絵から書まで展示する正統派で良いなぁ。っとおもったらいきなり現れる教祖の展示が見所。

飛騨高山美術館:アールヌーボー、アールデコのガラス工芸を展示。エミール・ガレ、ドーム兄弟の作品は沢ヤならばきっと気に入るはずだ。

千光寺:仏師界のニコラ・ジャジェールこと円空の作品を豊富に所有する寺。上から目線の悟り表情ではなく、微笑みかける一本彫の仏像に癒される。鬼気迫る両面宿儺も傑作。

世界の昆虫館:豊富な標本と、アート性を兼ね備えた昆虫館。展示内容が多彩で時間がどれだけ有っても足りない。リスとも触れ合える。秀逸なのは蝶で描かれた絵画。蝶が見たら地獄絵図だが。

2017年9月5日火曜日

片貝川 滝倉谷











滝倉谷はいかにも富山の沢登りといった内容である。谷には土砂が溜まり美しいとは言い難く、急峻な地形の場所にはスラブ状の滝やCS滝が続く。そして滝を突破できなければ悪い草付きと泥の処理に追われる。書いていて息苦しく辛くなるがこれが県内の沢の現実である。初心者には取り付きにくい内容と言わざるを得ない。だからといって沢登りが面白くないかといれば断じて否だ。大きくて静かな山の中で厳しい自然が味わえるいい地域だと思う。

出合いは登攀が難しそうな大滝なので巻く事になると思う。1160m二俣までは巻きも交えるが概ね快適な遡行といえる。左俣へ入ると現われるゴルジュ内三連瀑が技術的な核心部だ。筆者らが遡行した際にはF1右側に倒木があり容易に登る事が出来た。F2の登攀は下部が支点が取れずに少々怖いが興味深いフリークライミングが楽しい。F3は時間の都合で左岸を小さく巻いた。これを抜けると本谷は右折し、正面にはルンゼが見える。ここからは無難に登れる滝が続く。1460mに達すると難場は終わり、開けてもっさりとした沢になる。ほっとしたのも束の間、忠実に本谷を詰めると早々に水の流れの無いガレ沢となる。滝は無いので遡行速度は速まるはずだ。そのまま駒ケ岳の南稜線に出ると笹藪の歓待を受ける。苛立ちを存分に味わい辿り着いた駒ケ岳の景色はまた素晴らしいものだ。

富山の中では珍しく南向きで明るく楽しい沢だ。核心のゴルジュ帯は高巻く事も可能である。幕場は少ないので足の揃った(草付きに慣れた)パーティーであれば日帰りが良いだろう。縦走すれば駒ケ岳に僧ヶ岳と渋いピーク二つをゲットできるのも嬉しい。山頂好き沢屋には特におすすめしたい。

<アプローチ>
片貝山荘まで車で入りそこから徒歩。滝倉谷出会いは30mくらいの滝となっており、滝壷は堰堤があるので間違える事はない。


出合いまでおよそ30分。遡行終了後は笠谷を下降するか、僧ヶ岳まで縦走して登山道を下降する。笠谷は面白みの無い下降路との話を聞くので、縦走するのも一興かと。

<装備>
ゴルジュ帯を抜けるのであれば、カム少々とピトン数枚。ヌメリがきついのでフェルトが有効。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。南面なので残雪は比較的少ないと考えられる。日帰り遡行に自信が無い場合は日の長い8月中の遡行が良いかもしれない。

<博物館>
魚津水族館:歴史有る水族館で主に県内に生息する魚を展示。こじんまりとしているが魅力的な水族館。可愛いPOP解説も面白い。
魚津埋没林博物館:でっかい木が沈んでいるだけなのだが、なぜか趣がある。