2020年4月28日火曜日

医王山 豊吉川 蛇尾谷












 医王山西面の中では最もスケールがある谷が豊吉川である。緩やかな流れを基調としながら小滝、ナメ、三蛇ヶ滝の大滝と沢登りの要素がしっかりと詰まっている。この山域の特徴である緑色のコケが発達しているのも特徴である。

 三蛇ヶ滝までの下部はゆらゆらとお散歩気分で楽しめる。沢歩き、山歩きが初めての人でも十分に楽しめるだろう。三蛇ヶ滝を越え、地形図の医王山へと向かう谷が蛇尾谷(ダオ谷)だ。ここから岩質が固くなり沢はスラブ状を呈してくる。浅野川水系もこの標高から同様の岩質となるのが興味深いところだ。地形図では一定の傾斜が続き難儀は無さそうに見えるが、実際には3段50mくらいの連瀑が出てきたり、ちょっと渋いスラブが出てきたり俄然沢登りの雰囲気が高まる。が、それも長続きはせず林道を走る車が見えて遡行は終了する。余韻を楽しむために少し歩いて蛇尾山まで行くのが良いだろう。
 夕霧峠には自転車を楽しむ人、山菜を取る人、無線を飛ばす人、展望を楽しむ人など山を登らない人も多い。そして子供からお年寄りまで年齢層はとても広い。そこに沢登りをする我々もいる。この多様性こそ富山と石川で愛されるキングオブ里山、医王山の真価といえる。豊吉川へは緑が深まったら時にも訪れてみたい。

<アプローチ>
奥新保町の川へと向かう林道に入り脇に駐車させてもらう。蛇尾山山頂からは道を歩いて車に戻る。車が二台あれば夕霧峠へ一台デポするのもあり。

<装備>
部分的に悪い巻きが発生する。念のためロープとスリング。沢慣れした人は特にいらない。

<快適登攀可能季節>
4月~11月

<温泉>
ぬく森の郷:施設も綺麗で眺めがよい露天風呂がある温泉。交通量が少ない山間にある施設でアウトドア派には最高の立地だが、採算が取れているのか謎である。最寄で最適な温泉。
湯楽:温泉でありながら大衆浴場で入浴料は400円以下と格安。
銭がめ:入ったこと無いが、古民家風の温泉。きっとお風呂も雰囲気が良いのだろう。食事も可能のようだ。

<博物館など>
福光美術館:福光は棟方志功が6年ほど疎開していた土地である。そのため作品が多くの作品が残されている。企画展も渋く見逃せない。別館の愛染苑も訪れたい場所である。厠にまで絵を描く棟方志功の自由な人柄が感じられる家だ。

南砺バットミュージアム:日本プロ野球の往年の名選手のバットが触れる。メジャーリーガーのバットもある。タイカッブとベーブルースが使用したバットを触って大興奮!

井波彫刻総合会館:井波彫刻は県外にそれほど認知されていないように思う。豪快かつ繊細な技術に感動する。瑞泉寺も是非訪れたい。

2020年4月13日月曜日

稲子岳南壁 左ダイレクト







八ヶ岳という山は実にたくさんの人が登る山である。しかも3000m級でありながら一年中登られる稀有な山だ。車を所有していない学生の頃は電車とバスで登山口まで容易に行けるので何回か長期間滞在して西面東面ともに登ったものである。昔は青春18きっぷで北陸本線、大糸線、中央線と乗り継いでえっちらおっちら訪れていた。今は北陸本線路線が別会社運営になってしまったので青春18きっぷで行けないのが何となく悲しい。
そんな八ヶ岳、とってもいい山だと思うのだが、富山から遠いのと多くの会社員の開放日(土日)はめたくそ混雑するのでめっきり訪れなくなった。

ところが近場の山の状態がどうしよもなく悪い3月、稲子岳南壁の存在を思い出してたのでふらりと行ってみた。そうしたら、あーらびっくり。いい感じに岩壁なのである。南八ヶ岳の冬期登攀の殆どが岩稜登りであるが、稲子岳南壁はまごうことなき岩壁である。しかも節理が発達しているためラインの自由度は高く、今日的な楽しみ方ができるのが魅力である。

1P目は面白そうな凹角から取り付いて,Ⅳ。2P目はちょっとリッジ状を辿ったのち、右へトラバースして傾斜の強いクラック入り口へ,Ⅲ+。核心の3P目は右フェースの細かいホールドを使いながらやや幅広のクラックを登る,Ⅴ級。最後の4P目は岩が脆いフェースから巨岩帯をくぐってトップアウト。核心部は中々の登りごたえであった。表題に左ダイレクトと書いたがルート同定にあんまり自信は無い。話半分で訪れていただければ幸いである。

南壁なので好天が続けば夏と変わらない状態となるだろう。南岸低気圧通過後の雪が付いた状態で登った方がムードがあってよいと思う。トップアウトしてからの眼下に広がる森の雰囲気が独特であるのも興味深い。火山地形であるのは間違いないが、どんな活動をした火山なのだろう。また新しい山を調べる楽しみができた。稲子岳南壁には冬山ブームは到達していないようで他の登山者の姿は見られなかった。喧騒から離れたクライミングを楽しめるであろう。近くで遊べない時、ちょっと登山に変化が欲しい時、はたまた稲子湯への温泉旅行を兼ねてなど、ふらりと訪れてみてはいかがでしょうか。

<アプローチ>
稲子湯からちょっと先の林道脇にある登山者駐車場に駐車する。ここまでは三才山トンネル、佐久市を経由して行くと安くて最短のように思う。よく歩かれた登山道を2時間くらい歩いて壁までの分岐点に到着する。この分岐点はかなり分かりづらいが良く見ると赤テープがある。ここから壁の基部まで結構な傾斜の斜面を上がり取り付きに到着する。下降は登山道を利用すればトップアウトしてから1時間半程度であっさりと降りられる。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々。核心のクラックはキャメロット#4以上があれば支点が取れると思う。無い場合はちょっとランナウトする。岩は割合硬いが上部に行くほど脆くなる。

<快適登攀可能季節>
年中登れるだろうけど、岩が脆いしので冬の方が楽しいのでは。

<温泉>
稲子湯:源泉は温泉ではなく鉱泉で加温している。二酸化炭素硫黄泉で何となくピリリとした肌触りであった。秘湯めいた情趣ある旅館である。

2020年4月9日木曜日

甲斐駒ヶ岳 赤石沢奥壁中央稜






駒ヶ岳といったら、海谷の駒ヶ岳が一番、二番目は僧ヶ岳のちょっと南にあるやつ、三番は強いてあげたら木曽駒ケ岳という親しみ具合である。甲斐駒ヶ岳は冬に行くにはちょっと遠いなぁと思いつつ幾星霜。思わぬ僥倖により訪れる機会を得た。ぶったまげた。めちゃ良い山なのだ。どこもかしこも花崗岩の岩壁だらけでスラブには氷が張り付いている。もしゃもしゃの藪を盲点に追いやっておけばアラスカのクライミングがアラスカに行かなくてもできるのだ。

赤石沢奥壁中央稜は甲斐駒ヶ岳の岩場の中でおそらく最もポピュラーなライン。序盤3ピッチ程度が岩の要素が強くて面白い。支点は取り易いが、3ピッチ目のワイドクラックでは大きいカムが無かったのでランナウトとなった。ここを越えるとあとは雪稜、雪壁とちょっとした岩場が続く。簡単なのだが長いので要領よくこなさないと時間がかかるだろう。終了点は山頂のすぐ近くなのが嬉しい。十分なスケール、程々な難しさ、多彩な内容で人気な理由がよくわかった。せっかく岩壁と氷が一杯あるので、氷と岩壁の継続登攀をしたいところだ。

<アプローチ>
黒戸尾根8合目岩室から左へトラバースするとすぐに岩場へ至る。ただし、3月だと岩小屋は埋まっていて分からないと思う。ちょっとコルになっているのでたぶんわかる。
富山からだと松本から高速道路を使って大体4時間半くらいで登山口に到着する。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々。ワイドクラック部でキャメロット#5以上があれば万全。

<快適登攀可能季節>
年中登れるだろうけど、岩はちょっと脆いし藪がうるさいので冬の方が楽しいのでは。