2025年7月1日火曜日

黒部川 森石沢













 帰宅して地形図を眺めて驚嘆したのだが、森石「沢」なのである。富山県なのになぜここだけ「谷(タン、ダン)」ではないのか。黒部川流域で末尾語が沢となっている谷は信濃側の猟師達の呼称で県境の谷ばかりである。思いっきり越中のこの谷に主として東日本で用いられる沢という地名がぽつんとあるのは何かの手違いとしか思えない。

 名称遍歴に謎を持つ森石沢の遡行記録は少ない。志水哲也氏の著作に遡行記録があるが、谷の様相は土砂が流入しており随分と変わっていた。しかし下部のゴルジュ小滝群は健在で手ごわく悪い。うーん黒部だなぁ。足元に転がる岩はザクロ石を含む片麻岩や結晶質石灰や角閃岩を含む岩が多い。富山だなぁ。下部ゴルジュを抜けると土砂堆積が著しく谷が埋まっているのが分かる。主として花崗岩からなる谷なので部分的な脆い個所が崩壊によって谷に土砂をもたらしているようだ。志水氏の遡行図にある小滝は埋まってしまったり、倒木が架かっているのも多い。中部~上部のセクションはひと時楽しい小滝と美しい渓相となる。途中に雪渓が沢山出てきたので沢中の様子は一部不明な所がある。どこだったか忘れたが小滝を水線沿いに登れず非常に悪い左岸の泥壁を登ることになった。1303mへ向かう沢は小滝は出ずに体力勝負の急登。尾根に出てからも登山道は無いためほかの沢を下降することとなる。筆者らは弥太蔵谷右支流を下降したが、雪渓だらけで下降は相応に緊張を強いられた。右支流は登っても面白そうな地形をしており、次は遡行したいところである。

水量は多く雪が多かったこともあり歯ごたえ十分の遡行であった。小渓流でありながら側壁の高さが大渓谷の風格を醸すのがいい。容易に下山できる登山道が無いことも一層この谷での登山活動を面白くする。遠方から遡行対象とすることは滅多にないだろうが、週末系の山行としては完成度は高く行けば満足間違いなし。

 <アプローチ>
宇奈月ダムからしかるべきところを歩き出合いまで歩く。森石沢内の幕営好適候補地が雪で埋まっていたのでどこが良いのか不明。ただ、入渓時間と内容を考慮したら森石沢で泊まることはあまりないと思う。下降は弥太蔵谷右支流が合理的だが、この谷も下降は相応に時間がかかる。右支流中はそこそこ快適に幕営できる箇所は多い。

<装備>
カム0.3~1.0、ピトン各種。足回りはラバーでもフェルトでもいいかも。泥壁草付きが多いのでハンマーはピックが長いほうが有利。

<快適登攀可能季節>
7月~10月 残雪、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし

<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。

<博物館など>
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。

<グルメ>
よか楼:昨今話題の町中華的定食屋。コスパという卑しい概念を持ち出さなくても味で選べる良店。ジビエ料理も時折そろえる。

2025年6月16日月曜日

川浦谷 日河原洞













 川浦谷は富山からちょっと遠いが、北陸よりは沢登りシーズンの始まりが早いので沢養分を早く補給したいのであれば行先として悪くない。そうはいっても、海ノ溝や本谷ゴルジュは盛夏にバシャバシャやるのが楽しいので、どこを登ろうかと思って地図を眺めていたら日河原洞が五月闇の月光に照らされる紫陽花の如く滋味あるものに見えてきた。
 入渓すると近年の大雨の影響が土砂と倒木で少し谷が荒れた印象を受ける。しかし、岩盤はおおむね露出しており小滝や小ゴルジュは美しい。段々両岸が立ってきて凄いゴルジュ地形になるが、残雪が詰まっていて上に乗ったり、雪の隙間をずりずりしながら進む。ゴルジュ内に滝は無いようだ。どんな所なのか全然調べずに来たので高鳴るハートビート。渓の雰囲気は良く、20mくらいの滝も現れ始めて盛り上がりを見せる。その後この谷最大の40m滝である。難しすぎず、簡単すぎない緊張感でプロテクションも程々に取れる。あとは何も無かろうと思いきや、ロープなしでも快適な小滝や連瀑が続いて想像していたよりもずっと楽しい。尾根に出て中部電力管理林道に出て遡行終了となる。小ぶりな谷ではあるがきらりと光り間延びしない良さがある。

<アプローチ>
下道で高山からせせらぎ街道(県道73号)経由で郡上まで。さらに国道256号を使いタラガトンネルを抜けて北上。林道終点(ゲートあり)から徒歩30分で銚子滝遊歩道起点に着く。日河原洞は目の前なので間違うことはない。下降は箱洞、西ヶ洞谷川どちらでも可。川浦谷流域のみで一泊二日だと時間を持て余すので、西側へ降りて東河内谷流域を登り返して遊ぶといい。明神洞や二又谷が地理的に下降しやすい。

<装備>
カム一式、ピトン薄刃数枚。

<快適登攀可能季節>
6月~10月位な気がする。6月上旬はヒルを見かけなかった。

<博物館など>
洞戸円空記念館:円空は高賀山で修行をしたといわれる。縁の地に数多く作品を残した。虚空蔵菩薩、狛犬など後期の名作が多い。高賀神社では円空直筆の歌集も発見されいる。山頂への登山道の途中には修行に使われた岩屋がある。円空好きには堪らないスポット。

モネの池:洞戸の神社の入り口にある美しい池。日中は無茶苦茶混むので早朝がお勧め。次は蓮の花が咲いたときに訪れてみたい。



大滝・縄文鍾乳洞:郡上郊外にある鍾乳洞。普通に廻ったら一周するのに20分くらいかかる大きさである。洞内にある30mの大滝は凄い。観光地化されていて入場料1300円とお高いが訪れる価値は十分ある。

根尾東河内谷川 二又谷

 








 美濃の谷はちょっと遠いので一度行ったら沢山の沢を巡りたい。根尾東河内谷川の一番星は明神洞に違いない。しかしながら、明神洞の一つ南側に当たるのが二又谷も捨てがたい。思いがけず出会った美渓は心象に残るものだが、それを差し引いても良き沢だと思う。ちなみに名称は入口にある堰堤の銘板で知った。沢は明神洞のような固い岩質が主体で登ったら面白そうな滝がいくつも出てくる。最上部にはのっぺり大きなスラブ滝が鎮座する。下降で訪れた谷であったが、登ってこそ面白そうである。もし、明神洞を登ったことが有あるなら川浦谷から継続で二又谷を登るのはいかがだろう。
 
<アプローチ>
上大須ダムから至近であるが、筆者らは川浦谷から山越えをして下降している。箱洞や日河原洞を登って明神洞や東河内谷本谷を下降すると運転する距離も省けて合理的。

<装備>
カム一式、ピトン薄刃数枚。

<快適登攀可能季節>
6月~10月位な気がする。6月上旬はヒルを見かけなかった。

<博物館など>
洞戸円空記念館:円空は高賀山で修行をしたといわれる。縁の地に数多く作品を残した。虚空蔵菩薩、狛犬など後期の名作が多い。高賀神社では円空直筆の歌集も発見されいる。山頂への登山道の途中には修行に使われた岩屋がある。円空好きには堪らないスポット。

モネの池:洞戸の神社の入り口にある美しい池。日中は無茶苦茶混むので早朝がお勧め。次は蓮の花が咲いたときに訪れてみたい。



大滝・縄文鍾乳洞:郡上郊外にある鍾乳洞。普通に廻ったら一周するのに20分くらいかかる大きさである。洞内にある30mの大滝は凄い。観光地化されていて入場料1300円とお高いが訪れる価値は十分ある。

2025年6月15日日曜日

庄川 192m左岸支流

 







 庄川での沢登りはどうも癖になる。それは沢登り的に楽しいところもあれば、そうでもないところもあるから。どこを登っても面白い流域はただ行くだけなので消費していく感がある。しかし、時々あちゃーってなりながらも時々すごく楽しい所が有ると、地図をしっかり読んで楽しいところの共通点を探すようになる。この操作には時間を要する事もあり、来訪間隔が伸び、その間に感受性の変容も生じる。ゆえに遊びとして深くなる。
 駈足谷川は国道から快適そうな連瀑が丸見えで誰しも訪れることだろう。谷の名前が分からない192m左岸支流は国道からはさっぱり見えない。国道は大牧トンネルが通っているためだ。意味深な谷の屈曲やちょっとゴルジュっぽい地形は行ってみないとわからない。
 
 真剣に悪い国道からの下降と本流のへつりを経てたどり着いたその渓の入り口はすごい土砂。この程度で動じていたのでは富山での沢登りはままならない。トンネル工事によって残されたであろう人類の遺構を存分に堪能して屈曲点を過ぎると沢登りらしくなる。屈曲点は特別な点は何もなく、涼しい顔をして曲がっていた。岩は基本飛騨帯の花崗岩質で時々破砕作用を受けており脆い。コンタの詰まった所に現れる12m滝はロープを出して快適に登れる。以後も小滝が散発的に出て退屈しない。出合いの土砂で身構えたが思った以上に沢登りを楽しめている。地形図で登山道が横切っている箇所は何もわからない。快適なまま、793.6m三角点西へと向かい採石場へと続く廃林道を降りた。
 アプローチがすごく悪いので行きづらいが遡行は早く終了する。篤志家かつ午後から予定がある時にちょっと遊ぶ、ちょっと雨の日に軽くお散歩したい、庄川の地形と土砂崩れを研究している、大牧トンネル推し活で建設遺構を見学したいなど多くの人に訪れる理由が見いだされる渓谷といえよう。

<アプローチ>
駈足谷橋から次のスノーシェッド隙間にある路肩パーキングに駐車して本流へと下降する。駐車は大牧トンネル入り口より少し手前である。沢登りよりもこの本流への下降と支流入口までのへつりのほうが悪い。本流への下降が悪いと感じたら懸垂したほうが安全。下降は十八谷右俣か採石場から続く林道を利用する。

<装備>
カム少々

<快適登攀可能季節>
6月~11月。早い時期だと残雪が残っている。

<温泉>
大牧温泉:舟で対岸に向うという、火曜サスペンス劇場的なロケーション。もちろん行った事は無いが一度行ってみたい。

2025年5月1日木曜日

池ノ谷右俣奥壁

 













 池ノ谷右俣には岩場が多い。加えて登行距離は長くどこも剱岳の中でも指折りのスケールを誇る。岩が不安定なことは明白なので諸々がっちり固まった積雪期に登りたいのだが、富山県の条例で積雪期には池ノ谷に入れない。でも行きたい。しかし怖い。でも行きたい。春が来るたび、花占いの如く循環していたがその時が来た。

 暖かい日が続いたので氷がすっからかんの池ノ谷。右俣のドーム稜はカラカラなので壁状ルンゼをノーロープで駆け上がり、北面に申し訳程度に残る氷雪を繋いで右俣奥壁に入る。雪壁と岩場が段々になっている構成であるが、岩場は要所にピリッとした箇所があり面白い。場所によって岩は予想通りの不安定さである。岩が不安定とは岩が脆いのと、脆い岩が堆積していて積み木状になっていることを意味する。このような岩場を登る時はワニワニパニック、ジェンガ、ツイスターが合わさったゲームをしていると思えば楽しめよう。そうはいっても命がけの三種混合ゲームは最小限にすべく岩が安定しているところを目視で定めながらライン取りをすることになる。加えて落石を避けるためのビレイポイント位置が肝要である。より硬い岩、長い登行距離、そして楽しめるクライミングを求めて右へトラバースしていく。成り行きで登ると鯱の如く天を摩す剣尾根ノ頭を目掛けて突することに。すると技術的にもなかなか面白いピッチが続き楽しめた。不安定な岩をある程度許容できるならば、右俣奥壁は既登ラインに拘泥せず自由に遊べる良き壁である。

 壁状ルンゼをノーロープで登った高差150mくらい+合計9ピッチと申し分ない長さを楽しめる好ルートである。これが岩が安定するだけ氷雪の発達するタイミングであれば、さぞ楽しいことだろう。次は寒い春にもう一度遊びに行きたい。

<アプローチ>
12月~4月15日までは早月尾根から山頂経由か西仙人谷から稜線に上がり三ノ窓まで行く。復路も同じルートを辿る。アプローチは長時間行動になるので水分と栄養をしっかり定期的に摂取するのが大事である。栄養の軽量化は敗退する要因なので避けたい。4月15日以降であれば池ノ谷を詰めてもいい。ただし、白萩川の埋まり具合や池ノ谷ゴルジュの状況に依る。

<装備>
カム#3までをワンセット+中間サイズワンセット、トライカム少々。

<快適登攀可能季節>
年中登れるけれど、冬壁装備で11月~4月に登ると落石のリスクも少なく楽しい。

<温泉>
アルプスの湯、ゆのみこ温泉

<博物館など>
西田美術館:ロシアイコンや曼荼羅が展示されている。そして剱岳の資料が豊富。

大岩山:行基菩薩の石仏は大迫力。夏はそうめんが名物で多くの観光客が訪れる。

富山県薬用植物指導センター:5月中旬に芍薬の花が満開になるとても綺麗。五月の連休より少し後が見頃になる。芍薬は生薬として用いられるので栽培されている。有効成分はペオニフロリン。有名なのは甘草との組み合わせたもので芍薬甘草湯。グリチルレチン酸との組み合わせである。







2025年4月15日火曜日

ジャンダルム北面 正面フェース右

 







 ジャンダルム周辺には過去も何度か行っているのだが、いつも一体どこをどう登ったのかはっきりしないことばかりだった。登った日が大体ガスっていたこと、筆者の地形認知能力が低いことが理由に違いない。しかしこのたび快晴のもと、概念を把握して登山大系のルートを認知することが漸く叶った。
 随分と久しぶりに春の白出沢を詰めていると朧げな記憶が徐々に想起されてくる。そういえばセマ谷はこんな感じのゴルジュだった、セマ谷上部の傾斜が強くて意外に緊張した、カチカチの雪面を延々バックステップで恐々下降した。靄がかった過去の光景がモノクロになり、やがてカラーになっていく。緊張しながらもじんわりと懐かしい。悪天にせっつかれながら登る必要がないので、ゆっくりと概念を確認しつつ登る。やがてジャンダルムその方とご対面。クライミングの開始地点まで少々悪いアプローチをこなし、リッジ状の凹角からロープをつけてスタート。
 クライミングはジャンダルム山頂直下2Pは凹状や簡単なワイドクラックを繋ぎ50m~60mくらい伸ばして進む。脆い岩は固まっておりプロテクションは良好でアックスクライミングが楽しい。割合残置支点が多く見かけるので過去はよく登られていたのであろう。ジャンダルム本体頂上への登りはプロテクションの取りづらそうな傾斜の強い中央凹角を避けて右上した。ここもプロテクションは良好である。ただ登るにつれて岩が堆積しただけの状態となるので注意したい。登山体系にはⅢ級とあるが、実際に各ピッチがⅢ級なのか全然わからなかった。気持ちよく面白いクライミングに感じたのでⅣ級くらいあるのかもしれない。ちょっと緊張する縦走をこなす必要があるので、ジャンダルム山頂についてからのほうが緊張する。白出沢の下部平坦地まできてようやく一安心。埃っぽい風が春の香を運ぶ。靴の中は融雪で水浸し。また一つ冬を越えたのだ。
 自らの記憶の覚束なさには毎度あきれる。しかし、記憶力が良すぎても懐古の悦びがないのではないだろうか。鮮明な記憶は事実と真実から良きところを抽出した思い出という概念を作り出すのに障壁となる。適度な記憶力の悪さと記憶補正精度のプラス側への偏りが長く山登りを楽しむ重要特性なのかもしれない。

<アプローチ>
ジャンダルム飛騨尾根を登ってトラバースして取りつく、或いは白出沢を詰めて取りつく。白出沢を遡行して取りつく場合には大滝が出ていると右岸から高巻く必要がある。積雪が少ないと天狗沢を少し上がり尾根を乗越したほうが良いかもしれない。更にセマ谷を詰めあがるが、雪崩のリスクがあるため積雪期は相応の判断が求められる。セマ谷内も部分的に悪い個所が出てくるので油断ならない。正面フェースはセマ谷から登ってくると最も左側に回り込んだところにある。下降はセマ谷が降りやすいコンディションならばそちらを、そうでない場合には奥穂まで行き白出沢を下降する。厳冬期で雪崩リスクがある場合には涸沢岳まで行って西尾根を下降することも検討したい。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン少々

<快適登攀可能季節>
12月~4月。岩がぼろいので岩が固まっている時期がよい。厳冬期はエビの尻尾に覆われてやりがいがある。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。