2016年5月30日月曜日

明王谷~奥ノ深谷








比良の山では最も美しいといわれる沢であり、初めての沢登りが明王谷~奥ノ深谷という話も多く、関西の沢ヤには御馴染みの沢である。明るく開けた沢筋に多くの滝を懸けて遡行者を退屈させることはない。各滝の巻き道は明瞭な踏み跡となっており、沢が初めての者同士でも遡行出来ると思う。堆積岩質の岩は硬く、支点は良好で、ホールドも良い具合に配置してある。もちろんコンディション次第だが、経験者は激しめのシャワークライミングを満喫できるだろう。

入渓時にアマゴ釣りのおじさんが竿を振っていた。遡行者が次から次に通るので、おじさんには多勢に無勢。声をかけると明るくそろそろ帰りますよと言い納竿していた。心が痛んだ。渓流釣りも嗜む小生は遡行者、釣り人どちらの立場も少しずつわかる。双方が譲らず争いごとに発展したという話も聞く。こうなってくると、イスラム教のスンニ派とシーア派が争う理由が少し解るような気がする。渓に遊ぶ似て非なる存在の二者。同じ渓を愛するもの同士、手を取り合って自然を語り合いたいものである。

<アプローチ>
富山からは高速を利用して敦賀まで行き、国道161号(湖西道路)を経由し国道367号線でアプローチするのが早くて安価。下山は登山道利用できる。そのまま堂満岳を登っても面白い。

<装備>
直登するのであればカム一式、ナッツ、ピトン各種

<快適登攀可能季節>
6月~11月

2016年5月26日木曜日

宮川支流 桑谷






土砂と倒木が多くお世辞にも美しい沢とはいえないが、次から次へと滝が連続する。か細い水量のため積極的にシャワークライミングできるのがこの沢の売りだ。一時間以内で行ける小さい沢なので短時間で遊べる点もいい。下降に使用する北側の沢は降りやすく気楽に入山できる。周辺の山はススタケがよく出るので、山菜取りがてらも楽しいだろう。童心に帰って水浸し泥まみれで藪を掻き分ければ、日ごろの疲れも吹き飛びリフレッシュすること間違いなし。

と、紋きり型の文言で文章を締めようとして重い、非常に重たい現実に直面した。

四季を通じて泥と藪にまみれている続けている私はわらべ心を保ち過ぎており一向に成人していないのだ。せっかく平日に勤労によって大人への階段を登っても、休日に著しく退行しているのである。云わば一歩進んで五歩下がるような状態といえる。そのため、私の会話の主題は未だに宇宙、生き物、うんこ、ちんちん、であり男子児童レベルから脱することが出来ない。周囲の同世代は子供の保険が云々、住宅ローンの金利が云々と、人生の巨大な壁に立ち向かうようなカッコいい会話を平然としている。小生にとって、そのような事柄は光さえも脱することが出来ない暗黒空間内の存在で、事象ホライズン外側である。宇宙と生き物は百歩譲って赦して貰うとして、後者はそろそろ卒業したいと願うばかりである。

ところが、翌日生のウドを食べすぎで少し緑がかった軟便が出た事を早速話題にしてしまったのだ。すかさず、マイナス金利政策の功罪について論じたので事なきを得たが、次の週末も沢に行くのでもうだめだと思う。

<アプローチ>
公民館の横から急に上がる林道に入りゲート前に駐車。遡行時は北側に詰め上がり、小豆沢集落に下降した。下降しやすい沢で、懸垂は一度もしなかった。林道が出てきたらそれを下るとまんが王国に繋がっていて容易に帰ることができる。富山大学から入渓点までおよそ50分。

<装備>
滝を巻くのであればロープの必要は感じないかもしれない。流心は岩はしっかりしているのでカム、ピトンが有効。

<快適登攀可能季節>
6月~7月中旬。 9月~11月。

<温泉>
楽今日館、奥飛騨まんが王国

<博物館など>
まんが王国は公営のまんが喫茶。舐めて掛かるとスケールの大きさにびっくりする。

2016年5月22日日曜日

青海の岩場


北陸で石灰岩のフリークライミングが楽しめる大変貴重な場所。取り付まで、アプローチ徒歩15歩という雑穀谷を凌ぐ驚異的な利便性である。不肖者でフリークライミングのルートの良し悪しを語れるほど登りこんではいないが、楽しい岩場だと思う。

石灰岩地帯の土壌および河川のpHは塩基性に傾いている。土壌のpH平衡は凄く複雑だろうが、炭酸カルシウムが雨水と二酸化炭素によって
CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
と反応し、さらにCa(HCO3)2が電離してCa(OH)2となって塩基性に傾いていると勝手に理解している。

加えてカルシウムイオンは他の陽イオンより陰イオンと結合しやすいので、土壌は植物体に必要なリン、鉄などの元素が少なくなりがち。そのような環境下で生育可能な植物のみ生き残るので、石灰岩地帯の植物は一風変わっている。直ぐ横の黒姫山はドリーネ地形を擁しており植物観察にはもってこいの山である。

さらに忘れてならないのはマイマイ類である。蝸牛の殻は主として炭酸カルシウムで構成され、その原料が豊富な石灰岩地帯には多くの種が生息している。そして日本の石灰岩地帯は分断されているので、生物の移動が極端に制限される。それゆえ石灰岩地帯では地域ごとの固有種が多い。

ポケットホールドが豊富なルートのキーポケットに蝸牛が鎮座していた。優しく手に取り、あっさりテンションして観察。フィボナッチ数の潜む螺旋は息を呑む美しさで震えた。ロープなんかぶった切って、指を鳴らし、腰をくゆらし、タップを踏んで、シャウトしながら大地を賛美をしたい苛烈な激情に襲われるが、堪えた。この岩場は人の往来が激しいので注意が必要である。

<快適登攀可能季節>
3月~5月、9月~11月。午前中は日が当り暑い。午後は風も抜けて涼しい。

<グルメ>
糸魚川では近頃ブラック焼きそばなるB級グルメの普及に勤めている。初めて食べたが、イカ墨パスタのようで美味しかった。

<博物館>
翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

2016年5月17日火曜日

雑穀谷の岩場







岩資源に乏しい北陸のクライマーにはおなじみの場所で、休日はとても賑わう。常連が多いのでさながらサロン。コンパクトに纏まった岩場ながら多彩なルートが楽しめる。アプローチ0分、ロケーション最高なので、ただのんびりしに行くにも良いし、家族連れもお勧めできる。紅葉の時期は本当に素晴らしい。昨年から堰堤工事の計画が持ち上がっていて、この貴重な岩場がいつ埋まってしまうか解らない状況である。自由登攀人の存在を主張するために、是非県外・遠方の方も訪れて頂きたい。

<装備>
ボルトルートだが節理が豊富なので多くのルートがカムやナッツで登れるルートが多い。

<快適登攀可能季節>
4月中旬~11月。暑くても登れないことは無いが、オロロが出没する時期はお勧めしない。

<温泉>
ホテル森の風立山、吉峰グリーンパーク

<博物館>
立山博物館:別館まんだら遊園の異空間を一度は味わってほしい。
カルデラ砂防博物館:僕の好きな、治水の恩人ヨハネスデレーケの展示もある。

2016年5月16日月曜日

笹川 黒菱山山頂直登沢










朝日町の黒菱山は日本海の眺望が素晴らしい山で地元のハイカーに親しまれている。その北面の地質は主に太美山層群と呼ばれる酸性岩類で成る為、沢筋の岩は固い。そのため連続する滝はカチ、スローパー、エッジと絶妙なホールドを提供している。支点状況も良好で登っていて非常に楽しい。難しい滝の巻きも容易なので幅広い遡行者に楽しめる沢だ。山頂に突上げるラインも美しい。

残雪の少ない5月中旬、初夏を感じる陽気の中遡行した。山頂ではギフチョウが乱舞し、山肌は藤、桐、谷空木の花が満開であった。花の芳香が風に運ばれ時おり鼻をくすぐる。山全体が紫色と薄紅色に揺れていた。その様子は志茂田景樹に少し似ていた。

<アプローチ>
笹川林道終点に黒菱山登山道駐車場がある。国土地理院の地形図と実際の林道終点位置が異なっているので注意。歩き始めから標高400mくらいまでは溶結凝灰岩で入渓すると、デイサイト~流紋岩に変わる。ここで言う直登沢とは標高500mから山頂に突上げる沢で、登山道入り口の右手の沢である。山頂を踏んでからは登山道利用。

<装備>
滝を巻くのであればスリングで十分。積極的に登るのであれば、カム、ナッツ、ピトン各種。ぬめるのでたわしが有効。

<快適登攀可能季節>
5月~11月。残雪の量によってシーズンインは変わる。

<温泉>
宝温泉、地中海、境鉱泉など越中宮崎周辺は塩泉が多い。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。ドライブイン入善の定食も味、量ともになかなか。

<博物館など>
下山芸術の森発電所美術館:時おり興味深い展示をやっている。冬季は休館するので注意。
魚津埋没林博物館:でっかい木が沈んでいるだけなのだが、なぜか趣がある。
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。謎の置物も気になる。

帰りには生地の道の駅で新鮮な魚を買って帰るのもいい。

2016年5月12日木曜日

養老山地 笙ヶ岳大洞谷







岐阜県と三重県に跨る養老山地は小さい山脈だ。しかし、北部の笙ヶ岳西面には気になる沢筋地形がちらほら。中でも大洞谷は名前、ゴルジュマーク、ロケーションと最も目を引く沢である。遡行は殆ど歩きだが、部分的にチャートの硬い岩体部によって門状ゴルジュを作っている。その雰囲気は南紀黒蔵谷に似ていた。核心部は多段の滝。遡行時意外に水量が多く、確保がないと怖く巻いてしまったが登ると痺れそうだ。キビタキのさえずりを聴きながら満開の藤と躑躅を堪能する下山は誠にもって僥倖。

<アプローチ>
富山からだと北陸自動車道で名古屋まで、名古屋から大垣インターで降りる。高速道路を総て利用すると思ったより早く到着するだろう。

<装備>
カム少々、ピトン

<快適登攀可能季節>
5月~11月。標高が低いので長い期間楽しめそう。

<博物館など>
養老天命反転地:鬼才、荒川修作の作品。公園ともテーマパークとも美術館とも分類不能な異空間。一人で行ってもあまり盛り上がらないので仲間といった方がよい。

2016年5月11日水曜日

愛知川 渋川







ほのぼのとしたキャンプ場の横に流れる川。そのちょっと奥に立派なゴルジュがある。その側壁は大きな節理やバルジが豊富で、モコモコとした景色が可愛いらしい。早速、激しく水を落とす岩肌に優しく撫愛を試みるが、情け容赦なく吹き飛ばされた。新緑の時期の水温は低く、その後ガタガタと震えながらの遡行であった。やはり、早急かつ迂闊に手を出すのはよろしくない。もう少し暖かく水量が落ち着いたときに全力で触れ合ったほうがより深く交わることのできる場所のようだ。

<アプローチ>
あいきょうの森駐車場に駐車し、林道終点まで歩いて入渓。面白いところは最初に林道の橋が合流する所までらしい。下山は林道で30分くらい歩く。気軽に入渓できて内容も良い。初心者同行がお勧め。国道8号線だと福井あたりの信号連続帯で辟易する。高速利用で彦根あたりまで行くと速い。4時間くらいで着くと思う。

<装備>
カム少々。

<快適登攀可能季節>
5月~10月。暑い時期にシャワークライム水遊びが最も楽しそう。

<博物館など>
鎌掛谷ホンシャクナゲ群落:国指定天然記念物。寂れた場所かと思いきや意外に人気スポット。訪れた際、見ごろは過ぎてしまっていたが満開のときは良いお散歩になると思う。

正法寺:樹齢何百年だったか忘れたが、立派な藤棚があるお寺。



日野ダリア園:春には牡丹と芍薬を栽培している。いずれも華美絢爛な花で長時間観賞していると胃もたれ、ならぬ目もたれしてくる。


2016年5月9日月曜日

宇賀渓 蛇谷








明るく登って楽しい滝が続き、健康的な沢登りを楽しめる。上り詰めた竜ヶ岳は鹿害のせいだろうか、開けた山で気持ちがよい。どの滝も簡単に巻くことが出来るので沢慣れしていない人にもお勧めできる。篤志家は総て水流シャワーに臨むも由。

下部の沢筋は貫入した花崗岩、標高650m付近から接触変成岩が見られ初め、上部は種類豊富な堆積岩帯となる。ちっぽけな流域に多くの岩石が見つかる。火山の山もいいが、付加体の山もいい。

<アプローチ>
宇賀渓の有料駐車場は避けて下の無料駐車場に止める。暫く林道を歩き、ホタガ谷出合いから本流を歩く。蛇谷出合いは本流の顕著な滝との合流点である。竜ヶ岳からはいくつか有る登山道のどれかを利用する。
富山からだと北陸自動車道で名古屋まで、名古屋から東名阪自動車道を使い桑名インターまで。高速道路を総て利用すると思ったより早く到着する。オール高速道路利用で富山大学からおよそ4時間半くらい。滋賀からは国道421号線を利用。綺麗な国道である。

<装備>
攻めなければ、特にいらない。ロープとパッシブを適当に。

<快適登攀可能季節>
5月~11月。

<博物館など>
藤原岳自然科学館:いなべ市が運営する科学館。規模は小さいが、鈴鹿山脈の自然がコンパクトに纏まっており楽しい。入館料は無料。

<温泉>
阿下喜温泉 あじさいの里:綺麗な日帰り温泉で食堂も併設。泉質は塩基性単純泉でぬめる。鈴鹿は断層隆起の山である。水が破断面の負電荷帯を移動しH+が固定されて塩基性に傾いたのだろうか。