2020年2月27日木曜日

宝剣岳 天狗尾根






天狗なんちゃらといった地名は山に実に多い。一体どのような存在なのかよくわかっていないが、飄々と山を舞う姿を想像すると羨ましい。

宝剣岳の天狗尾根を飄々と登るのは難しかった。尾根と名を冠されているが、尾根とは言い難くちょっとした岩峰である。1P目は凹角から登り始め、スラブ状の興味深いトラバース後、がちゃがちゃした凹角を登る。雪稜を70m程度登って最後の岩峰へ取り付く。傾斜の強いチムニーだが、氷でクラックが埋められていると往生する。尾根登りはなくクライミングだけでアッちゅうまに終わってしまう。初日アプローチの後1本、或いはおかわりとしてふらりと登るスタイルが丁度いいかも。

<アプローチ>
上松尾根を利用する事をお勧めする。厳冬期なら場所柄くそラッセルになることは少ないと考えられる。前日深夜に出発すれば入山日に一本登ることも可能。幕営場所は玉ノ窪小屋陰にテントを張ることが出来る。風当たりは強め。ただし、2月以降は埋まってしまって幕営適地は無い。ロープウェイを使うと登山の趣も無いし、お金は掛かるし、時間を気にしないといけないし、体力は低下する。などなど善くない事が多い。標高は自分の脚で上げよう。
天狗尾根は図でみるより短い印象を受けるであろう。え、これだけ?ていう感じでA沢ルンゼを下降して凹角状から取り付く。あとは登れそうなところを繋ぐといい。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々

<快適登攀可能季節>
11月下旬~5月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
妻籠宿:中仙道の宿場町を保存して観光地化してある。いかにもな観光地。おばちゃんの解説はさながら噺家であり職人技である。内容は非常に興味深い。そして歴史資料館も秀逸である。斜に構えて行かないのは損。

義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

寝覚ノ床:木曽川の流れと方状節理が生み出した景勝地。一見の価値あり。裏寝覚め~寝覚めまではボルダリングも可能。お勧めの課題は一斗の缶。

2020年2月12日水曜日

北岳バットレス 下部フランケ~第四尾根











冬型なのに風も弱いし晴れとる!

冬、越の国から甲斐の国までの道のりは遠い。これは実距離もさることながら心の距離の問題である。雪や雨の降る幾多の峠と隧道を越えるには空は余りに鈍色で、長時間ドライブ遂行のドライビングフォースを滅尽させるのである。つまり、自らの心の弱さにより、隣県近場での登山を選択してきた。駄目だ、而立を越えたというのに甘えていてはならぬ。とにかく行こう、北岳へ。

なんつって目の前に広がる北岳バットレスの高差は350mと中々でかい。ものの本に書かれている通り継続登攀にはうってつけの壁構成である。筆者らは第四尾根の下部フランケから第四尾根主稜へと継続した。下部フランケは3Pほどのスケール。凹状になっているので支点は取りやすいもののスラブ状の岩は侮れない。全体を通しての核心は間違いなく1P目だ。小ハングをフィンガークラックにアックスを打ち込み捻じ込み超える。Ⅴ級ではあるが支点は取り易いので思い切って突入できる。登攀時の積雪量は少なく、第四尾根主稜はスラブに雪が付いた雪稜だったので部分的にスラブに張った氷登った。下部を登れたならば城塞ハングは楽しく登れるはず。以降は距離にして200mくらい雪壁を登り雪庇を崩して稜線に上がった。山頂から廻りを見渡すと富士山が圧倒的な存在感を放っていた。登っているときは気づかなかった。

下部フランケ1ピッチ目は固い凝灰岩っぽかったのだが、2P目では粘板岩も見られた。粘板岩地帯はボロいので注意を要したが、北アルプスでは見かけない岩だったのでニヤニヤである。バットレスでも部分的には石灰岩も見られるようである。林道では真っ黒な泥岩も見受けられる。ダイナミックな時の積層、付加体メランジュを3000mスケールで楽しめるのが日本唯一北岳バットレスの長所である。思い切って行ってしまえば、あとは青空クライミング。日本の風土を楽しむならば、近場だけではなくいろんな山登らないとね。冬の南アルプスは新鮮な驚きばかりでしたとさ。

<アプローチ>
厳冬期は夜叉神のゲートから池山吊尾根を登りアプローチする。林道を歩いたり、下ったり登ったりと中々の長丁場である。八本歯のコル付近から小さな支尾根を下降して大樺沢へと降り立つ。ここからdルンゼを登って下部フランケ取り付きまで。幕営点はボーコン沢の頭手前の最後の樹林帯がお勧め。春は広河原から大樺沢を詰めて取り付けるそうだ。富山市内から夜叉神のゲートまで松本~韮崎間を高速を利用しても4時間30分くらいかかる。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々。

<快適登攀可能季節>
年中登れるだろうけど、岩が脆いので冬の方が楽しいのでは。

<博物館など>
南アルプス芦安山岳館:芦安の暮らしと南アルプスの自然がコンパクトに纏まった博物館。写真に写ったあしやす娘の歩荷力には目を見張る。さらにここでは「南アルプス 白峰三山の自然」など好資料が販売されており、財布のつい紐が緩む。ただし、早まることなかれ。南アルプスの資料は「南アルプス学概論」、「南アルプス学総論」という素晴らしい資料が無料PDFでダウンロードできる。富山県、長野県、岐阜県も協力し北アルプスについてまとめた文書の作成と公開を切に願う。

2020年2月8日土曜日

大熊山





富山県の県木である立山杉。根っこに近いところの幹は非常に太いが、地面から比較的近いところから枝分かれする樹木が多い。これは若木のときに北陸特有の重い湿雪と強風に叩かれて枝が折れながらも生長したからなんじゃないかと推察するところである。富山の気象と地質が育んだ特異な森の景観だ。その中でも上市川、片貝川、称名川流域に自生する立山杉に際立った巨木が多いような気がしている。片貝川上流には洞杉と呼ばれる岩を抱えた立山杉が自生しているが、これがまた素晴らしいビジュアルなので一度は訪れもらいたい。

大熊山の良さは立山杉の巨木とブナの美しい森林にある。1264mまでは立山杉が多い。はっとするような樹形の巨木も幾つかあり、急登も苦にならない。1200m付近からはブナ林に変わる。かなりの急激な変化なので面白い。ここからは、だらりとした地形が山頂まで続く。積雪期はルート取りに注意が必要だ。筆者が訪れた際はど吹雪だったので、何も見えなかったが展望が素晴らしいと聞く。木々達の声をゆっくりと聞きながらまた訪れるとしよう。

<アプローチ>
小木曽谷右岸の尾根に2010年ころに拓かれた登山道が付いている。赤布も豊富にあるので迷うことは無いと思う。小又川の大きな橋から林道に入って、大きくカーブするところから小道へ入り尾根に入る。冬はここまで伊折のゲートから徒歩。

<装備>
冬~春はワカンなど冬山装備

<快適登攀可能季節>
通年。

<温泉>
アルプスの湯、ゆのみこ温泉

<博物館など>
滑川市立博物館:上市町のイメージが強い早月川だが、人の住んでいる殆どの流域は滑川市を流れている。流域の自然と人の営みをバランスよく知る事ができる。手の込んだジオラマも学習の一助となる。

西田美術館:ロシアイコンや曼荼羅が展示されている。そして剱岳の資料が豊富。魚津岳友会の会報が熱い。

大岩山:行基菩薩の石仏は大迫力。夏はそうめんが名物で多くの観光客が訪れる。

富山県薬用植物指導センター:5月中旬に芍薬の花が満開になるとても綺麗。五月の連休より少し後が見頃になる。芍薬は生薬として用いられるので栽培されている。有効成分はペオニフロリン。有名なのは甘草との組み合わせたもので芍薬甘草湯。グリチルレチン酸との組み合わせである。