2026年9月28日月曜日

滑川 奥三ノ沢














 都市圏地域の友人と一緒だったり、天気のいい場所をさがしたりすると南進しがちになる。そんなとき中央アルプスは何かと便利なのでよく行くことになる。快晴の山を楽しむべく木曽を代表する谷と名高い奥三ノ沢へ。

 林道歩きと川原歩きをこなしてたどり着いた出合は日が当たらず寒い。F1は登れそうだがどうみても巻きが容易なのでさらりと巻いた。次も大きな滝が出てくるが、こちらは登るのが難しそう。登るなら右壁からだろうが、これも容易に高巻けるのでさっさと進む。川原は殆どないのでナメ滝と小滝を快調に登ったり、小さく巻いたりして進む。F5は雄滝と雌滝と呼ばれる二俣となっている。本流は雄滝であるが、直登が難しいのでロープを出して登る。雄滝側の凹状を登ったが岩が脆く崩壊している箇所もあるので、雌滝側を登って高巻いた方が快適だと思う。ぼろぼろの草付きコンタクト箇所で1点人工登攀した。以降はロープの出番んは無く快適な滝登りと小さい巻きを繰り返していく。巻きが余りに簡単な地形なので滝を登るのであれば「登る!」という堅い意思がいるだろう。陽が当たり始めると解放感も感じることができて大変気持ちがいい。2500mくらいで水が涸れてあとは淡々と登る。三ノ沢岳では期待通りの快晴で抜群の眺望であった。稜線が気持ちいいので予定を変更、縦走して上松Aコースから戻った。上松Aコースは地面が土で身体に優しいうえ、富山では馴染みのないキノコが生えており楽しい。3000m級の山を登って身体すっきり爽やか登山であった。

 奥三ノ沢は幕営適地が少ない。奥三ノ沢だけで考えたら日帰りでサクサク登ったほうが楽しい気がする。もちろん、下部から滝登りを時間を掛けて楽しむのもよし。テントを持って行って稜線で幕営し宝剣岳の岩場と抱き合わせで登るのも魅力的だ。大混雑の伊那川にはない静かさがあるのもいい。あ、冬に奥三ノ沢から宝剣へ継続登攀したら面白そうだ!

<アプローチ>
堰堤のある砂防公園に駐車して滑川上流へ向かう。敬神の滝小屋から上流方面へは林道跡が続いておりしばらくはそれを歩ける。川原に出てからが見ての通り長いが特に何も出てこない。奥三ノ沢は特徴的な二条滝で出合っているので間違うことは無い。幕営できる箇所は少ないが、2350m付近の二俣手前右岸に幕営できる平坦地がある。ただし、ルンゼの押出付近なので自然落石や雨の時は多少リスクはある。三ノ沢岳に出たら沢を降りるもよし、縦走して上松Aから帰るもよし。

<装備>
カム少々。割合ぬめるがラバーでもフェルトでも可能。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

尾上郷川 ワサビ谷






















 白山はでかい。そして白山の沢もまたでかい。尾上郷川は流域としては決して大きくないが集水面積は広く、岩質も火山岩、変成岩、堆積岩と豊富である。急峻な地形が多くないので滝を登ったりして楽しむ沢登りの対象が多くないのが実情ではあるが、自然に親しみのんびり過ごすのには良いエリアではないかと思う。安全で容易なアプローチの林道があるので登山を目的としない愛好家にもお勧めしたい山域である。では、滝を登ったりする対象としたときに面白いのはどこだろうかとなると、2箇所なんではないかと予想される。花崗岩と火山岩が分布しているカラス谷までの下流域と急峻で開析された別山付近である。一方、綺麗なナメがありそうなのは比較的新しい火山活動で硬い岩がありそうな大日ヶ岳~丸山の上流域ではないかと思っている。滝を登るにせよ、ナメを楽しむにせよ土砂の堆積量や植生との勝負なので行ってみないと分からないのが面白い。

 750m左岸支流であるワサビ谷は御母衣ダムのバックウォーターに閉ざされる期間が長いため、行きにくい谷である。滝登り楽しい系として気になっていたが、やはりその通り楽しい谷であった。下部の大滝を巻くと美しい森が広がる。ここはこの辺に多い白亜紀の花崗岩だが比較的安定しており、苔が美しいしっとり渓。時折現れる滝は不思議と二段滝が多く美的ポイントが高い。1100m付近からは白山ではおなじみの硬い火山岩となり、滝登りとナメが楽しめる。白山の火山岩は赤色と青色があるがここは赤系。上流の登り楽しいゾーンはロープを出さずに登れて爽快そのもの。上手く流水溝をついていけば濃密な笹薮は回避できる。日照岳には最近登山道が拓かれた。いつなくなるかわからない道はレアなので歩いた方がいい。植生が変化する面白い道で秋山の恵みもいただくことができた。眺望もいい尾根なので大切に歩かれてほしい道である。

 ワサビ谷は日帰り渓としては良質な谷でクライミングに心得があれば沢慣れしていない人でも存分に楽しめる。初心者に沢登りの楽しさを味わってもらうにはぴったり。秋限定なのでキノコや紅葉と併せてぜひどうぞ。

<アプローチ>
 尾上郷川の林道を歩いてワサビ谷出合手前まで歩く。出合まで歩くと下降しずらそうである。バックウォーターが少ない時期を選んで渡渉して取りつく。日照岳は登山道が拓かれていなかったが、2024年に開拓された。筆者らは新道を堪能したが、保谷を下降するのも一興。

<装備>
出だしの15m滝の右岸でロープを出したほかは出さなかった。スリングのみでOK。ヌメリがあるのでフェルトの方がいいかも

<快適登攀可能季節>
バックウォーターが無い時期。

<温泉>
大白川温泉:硫黄泉ーナトリウムー塩化物泉。洗い場は無いので石鹸をもって行こう。道の駅にも温泉が併設されているがこちらはあっさりとした泉質。

<博物館>
白川郷の古民家には生活の知恵が詰まっている。一度は行っておくと良いでしょう。世界遺産だし。自然に溶け込んで非常に理にかなった建物である。

2026年9月25日金曜日

海川 鉢沢








 海谷支流の沢は短く急な沢が多い。スケールは小さいけど岩壁に囲まれた海谷というロケーションの只中でのミニゴルジュと小滝登りは結構楽しい。鉢沢は登山体系に記載がある大きな滝があるということ、それ以外の情報を得ることは難しい。

 出合は渇水時には枯れてしまうほど貧弱だ。少し登ると水流は復活するので安心して進んでほしい。ゴルジュ状の二段瀑を超えると側壁は一層立ってきてのっぴきならない雰囲気となる。記載通り35mくらいの大滝が姿を現す。直登はできそうだが支点を取るのは苦労しそうだ。少し手前に絶妙な獣道が続いていたのでそれを利用して高巻いた。そこから先は水量が少ないものの美しい小滝が現れる。登るのに怖い滝もあるので油断せずロープを出したり無理せず巻いたりした方がよさそう。この沢は安山岩の岩のようである。海川上流の泥岩や砂岩と違って硬くホールドもあるので比較的登り易い。小滝ゾーンが終わるとボサっとした沢になるので、1273mの方に登った。開けた場所から観察すると左俣の最上部は岩壁に吸収されており阿弥陀山南峰へと続いている。後ろ髪を引かれつつ右俣へ下降した。右俣は地形図で何かありそうな雰囲気であったが、ゴルジュは土砂で埋まって困難は無かった。

 左俣を楽しいところまで登って右俣を下降するのであれば門戸が広い行程である。左俣を詰め上げて阿弥陀沢右俣を下降すると、総合力を要求される登山となるだろう。
 ところで、9月に海谷に行くとドロノキらしき綿毛の舞う光景で出会うことができる。本当に視界一面綿が待っており、自然の意外性と美しさに嘆息が漏れる。ドロノキは陽樹であるため、開けた海谷高地に多く自生できるのだろう。海谷はその地形的特性から二十四節気が正しく刻まれている気がする。そして海が近い山地であるため朝と夕にも別の顔を示す。登山をどうこう言わなくとも、そこにいるだけで価値を感じてしまう面白い山だ。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。そこからほどなく阿弥陀沢が出合となり、次に鉢沢が出合う。左俣を登って右俣を下降するほか、左俣を最後まで詰めて岩壁沿いに登り、阿弥陀沢右俣を下降するという手もある。阿弥陀沢右俣はどうやら強烈なゴルジュっぽいので下降の時間は注意。

<装備>
カム、ピトン少々。フェルトでもラバーソールでも可ではないか。下部の大滝はクライミングシューズが有ったら安心して登れるはず。

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。

海川 富夫沢















 富夫沢は鬼ヶ面山北峰と南峰のコルに突き上げる沢である。不気味なスラブやゴルジュは発達していないので、気楽に山頂へ立てるだろうとの思いで出発。

 鬼ヶ面を過ぎてすぐに出合うが、入口からボサっとしており先が不安になる。入っても実際藪っぽいが、急な沢のために小滝登りが続きそこまで気にならない。取り立てて難しい小滝は無いし、小さく巻くことも簡単なので遡行速度は速い。やっていることは結構楽しいのに藪っぽさで気が散ってしまうのがちょっと残念。上部では二俣で地形が曖昧になることがあり、コルを目指すには注意がいる。コルが近くなるにつれて傾斜が強くなるので藪漕ぎは殆どない。が、泥と灌木を掴む際どいモンキークライムが待っている。鬼ヶ面山は長めのとてもいい山で山頂からの眺望をぜひ堪能してほしい。三峡パークへの登山道の悪さは折り紙つきである。遡行終了してからが本番と思って油断せずに歩こう。

 富夫沢を目的として沢登りをすることは無くても、ほかの沢やエビクラの岩壁を登って三峡パークへ戻るついでに登るには丁度いい。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。そこからほどなく阿弥陀沢が出合となり、次に鉢沢が出合う。左俣を登って右俣を下降するほか、左俣を最後まで詰めて岩壁沿いに登り、阿弥陀沢右俣を下降するという手もある。阿弥陀沢右俣はどうやら強烈なゴルジュっぽいので下降の時間は注意。

<装備>
カム、ピトン少々。フェルトでもラバーソールでも可ではないか。下部の大滝はクライミングシューズが有ったら安心

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。

2026年8月30日日曜日

鹿島川 大川沢大沢

 















 後立山では一般的に沢登りの楽しめる谷が多くないようで、遡行したという話は聞かない。鹿島槍を麓を流れる大川沢の地質図を眺めると黒部川花崗岩と同じ年代の花崗岩が分布していることになっている。鹿島槍の谷は積雪期にしか登ったことが無く、谷の様相は伺い知れない。地形図では面白そうな沢があるので探索に行くことにした。

 アラ沢までは積雪期と同じように本流を歩くが、雪に覆われていないと荒れた谷であることが一層伝わる。そして地質図にある黒部の岩というのが恐らく間違いで、高瀬川流域に広がっている岩に非常に似ていることが判る。どうやら有明花崗岩に近いグループのようだ。アラ沢の一本上流にあるゴルジュ状を呈した右岸支流の遡行を試みる。出合から上流からの土石流の爪痕が凄まじい。そして側壁の崩壊も進行している。少し遡ると連瀑帯となる。滝側面の岩は大変脆く水流付近はピカピカのスラブ。高瀬川の支流にそっくりな様相だ。簡単に高巻けるかと思いきやそんなことは無い。だんだん側壁の崩壊が恐ろしくなりったので本流に戻る。カクネ里まで歩き左岸側の支沢を観察するが、どれも急傾斜で滝を連ねて脆さとスラブが際立つ。加えて側壁からの崩壊も携えている。迂闊に入ると大変にことになりそうだ。比較的安定していそうな大沢へと入る。

 大沢も同じ系統ではあるが側壁の崩壊が無いので気楽である。予想通り直登できる滝は殆どないものの、変わった形の滝が多いので面白い。登れると取りついた滝もホールドはスローパーで裏切られるので難しい。恐らく花崗岩の結晶が荒く風化しやすいこと、水流で浸食されるところは極端に滑らかになるのであろう。途中で安山岩の貫入岩が現れて遡行内容が変わるかと期待したが小さな岩体で直ぐに花崗岩に戻った。時折ゴルジュ地形になるので、その度にこれまでか!と緊張するが息詰まることなく小遠見のコルまでたどり着けた。下降は1355m左岸支流を選択したが、スラブと滝が続くので下降は難しい。土砂が絶え間なく流れるためか、大岩や倒木が安定しておらず懸垂支点として使えないのだ。脆い岩のブッシュは根を張っていない物もあるのでチェックは欠かせない。登るのと同じくらい時間がかかると思った方がいい。15~20mクラスの滝もいくつか出てくるのでクライムダウンと組み合わせての懸垂となる。出合に戻ると安堵で破顔と相成る。

 美しさはなく悪さが際立つ大川沢での沢登りは決して快適ではない。しかし遡下降を終えると充実感で満たされた。荒れる裸の山を登った達成感だろうか。はたまた逃げ切った安堵感だろうか。崩壊が少し落ち着くようであれば今回登ることができなかった支沢も登ってみたいものだ。

 <アプローチ>
大谷原の駐車場から歩いて大川沢へ。大川沢本谷は土石流の影響で荒れており下部から渡渉を繰り返す。大沢を登った後は遠見尾根へ出るので好きな沢を下降する。1355m左岸支流を降りたが、支点を探しての懸垂が続き中々面白い。遡行と同じくらいの時間を見込んでおいた方がいい。ベースとするならばニゴリ沢を過ぎた後のゴルジュを抜けた先がちょうどいい。側壁も崩壊している箇所が多いので幕営場所も注意。

<装備>
カム少々、ピトン少々。足回りはラバーソール。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。