2018年11月13日火曜日

医王山 浅野川 菱池谷











「寒くなってきた事だし、沢登りシーズンももう終わりだな。来週からは毎週乾いた快適な岩ね」と言いながら、大体1箇月半は沢へ赴くのが山登り開始以来通例化しており、本当に乾いた快適な岩を欲しているのか、本当に寒さを不快に思っているのか、怪しいものだと疑い始めている。バリバリに乾いた岩をスポーティーに攀じるのも魅力的なのだが、葉を落とした木々の中を縫う水を遡る晩秋の山も抗えない楽しみがあるはずだ。

菱池谷は奥医王山北面を源として小菱池町へと流れ浅野川となる。川床の岩は流紋岩質の凝灰岩が優位なのだろうか、他の医王山の沢より固い印象である。そのため、沢中に土砂は少なく苔が発達し美しい渓相を呈している。苔の緑に落ちたばかりの鮮やかな黄色の落ち葉が重なると、はっとするような、どきりとするような、寂しいような、艶々なようでざらりとした思いが立ち込める。滝も数多くあり、どれもそれなりに登り応えがある。特に小ゴルジュ中に現われるCS滝は泳いでから滝裏に回りこみ、シャワークライムと爽快な突破が楽しめる。その後も地味に渋い登りを強いられる滝が幾つかあるので油断ならない。風情を演出していた落ち葉達が、猛烈スリッピーなので、登る際には丹念に除けねばならない。さっきまで、深く感じ入っていたものを疎ましく思うとは因果で滑稽で笑える。正味、登り終ってから事実一人でそこそこ笑った。爆笑と嘲笑が3:7くらいに混じった単独登山時にしか出せない笑いなのだが、最も近いものとして、路上で一人ウンコを踏んだときの笑いである。見渡せばサワグルミの木は丸裸で、沢には頼りなげな日が差す。ははは。上部も小さな支流が幾つもあるが、ここは山頂へ最短の沢を選びたい。奥医王山にはきっと人が集まり憩っている。里山の山頂でする世間話はこれまた楽しい。景観、変化に富んだ遡行内容いずれも素晴らしい沢である。

<アプローチ>
医王山小原道への登山道の途中、魚帰にある橋の袂に駐車して堰堤をやり過ごして入渓する。小原道を下山して少し車道を歩けば容易に駐車場へ戻れる。市内からだと、医王ダム経由が最短で大体1時間と少々で入渓点に着く。

<装備>
ロープとスリング。

<快適登攀可能季節>
5月下旬~11月。勿論秋だけではなく早春の山菜取り楽しいと思う。

<温泉>
ぬく森の郷:施設も綺麗で眺めがよい露天風呂がある温泉。交通量が少ない山間にある施設でアウトドア派には最高の立地だが、採算が取れているのか謎である。最寄で最適な温泉。
湯楽:温泉でありながら大衆浴場で入浴料は400円以下と格安。
銭がめ:入ったこと無いが、古民家風の温泉。きっとお風呂も雰囲気が良いのだろう。食事も可能のようだ。

<博物館など>
縄ヶ池:五月連休あたりに水芭蕉が満開になる。駐車場から砺波平野の散居村を一望できるのも魅力。5月ならば田植えの時期、水田の水面に反射する夕日を眺めたい。10月ならば実りの時期、赤く染まった揺れる稲穂を堪能したい。

福光美術館:福光は棟方志功が6年ほど疎開していた土地である。そのため作品が多くの作品が残されている。企画展も渋く見逃せない。別館の愛染苑も訪れたい場所である。厠にまで絵を描く棟方志功の自由な人柄が感じられる家だ。

南砺バットミュージアム:日本プロ野球の往年の名選手のバットが触れる。メジャーリーガーのバットもある。タイカッブとベーブルースが使用したバットを触って大興奮!

井波彫刻総合会館:井波彫刻は県外にそれほど認知されていないように思う。豪快かつ繊細な技術に感動する。瑞泉寺も是非訪れたい。

2018年11月6日火曜日

海老嵓西壁第二フェース ダイレクトルート






海老嵓西壁第二フェースの幾つかあるラインの中ではダイレクトルートは最も快適なルートといえる。控えめな傾斜に、ほどほどなホールドが繋がって気分は爽快。上部は心岳会と合流するので実質2.5ピッチがオリジナルなラインである。核心の2ピッチ目は何故かしっかりとしたハンガーボルトが幾つも埋設されており、これを使えば恐怖感を感じる事はないはず。無視する場合には渋いピトンワークとランナウトによる自己統制感を楽しめるだろう。それより何より、登るにつれ展開する海谷渓谷の景色が素晴らしい。筆者らは秋の盛りに登ったのだが、眼下には赤や黄色の紅葉が広がり、遠く焼山には冠雪の白が真っ青な空に映えていた。登攀を終え、キノコを探しながらベースに戻る道すがらもまた楽しい。海谷の開けた空と秋の夜長は天体観測にも最適だ。焚き火の横でまどろみながら星空を眺める贅沢な時間。四季折々、外遊びの楽しみが濃縮されている海谷渓谷はやはり素晴らしい山なのだ。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。ここからは本流を遡行してエビクラ西壁へ。第二フェース正面の顕著なL型ハングを目指して適当な所から取り付く。支点を取れそうなところを繋げていけば自然とラインは繋がる。下降は尾根に出てから1ルンゼ側斜面へ歩いて下降し、最後は懸垂1回で1ルンゼへ降りる。

<装備>
カム少々。大きいクラックは剥離するのでカムの使用は要注意。ピトンをナイフブレードからロストアローを幾つか。2ピッチ目はハンガーボルトが多いのでクイックドローを持っていくと使える。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
5月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。残雪が残る新緑と山菜、燃えるような紅葉とキノコ。どちらとも楽しむには相性は良い壁ではないかと思う。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。