尾根が乱立する九頭龍山の中で、ある程度長さを持った尾根は右稜、ドーム稜、左稜の3つだと思っている。その中でも取り分け目立つ岩峰を抱えているのがドーム稜である。ぱっと見「これ登れるん?」という外観なのだが取り付いてみれば、あら不思議。ラインは繋がっているのである。
取り付きは非常に解りにくい。左稜の隣の尾根なのだが、下部は谷と尾根の高差が無いために無理やり尾根に出ない限りは自然と谷側へ導かれてしまうことになる。尾根左側の谷は1550mの岩場マークが始まるあたりで小さなコルとなって収束する。一方、右側の谷はさらにルンゼ状が続くが、これ以上谷を詰めてしまうと尾根を登る区間が余りに短くなる。拘りが無い限り1550mあたりから尾根登りを楽しむのがいいかも知れない。
筆者らが登ったタイミングではキノコ雪の発達は少なく登攀の困難は無かった。岩峰はすべて弱点があり、概ねダブルアックスで高度を上げることになる。イメージとしては左稜の内容に近い。中盤は尾根の独立性が高まり内容も申し分なく非常に楽しい。終盤は再び谷と尾根の高差が少なくなり独立性は薄くなり、ややムードが下がる。左右は絶壁なんだ!と思いこむことで対応しておこう。稜線へ出れば地形は一気に優しくなり安心できる。
所要日数は状態次第で大きく変わるだろう。状態が良ければ日帰りで抜ける事も十分可能だが、びっしりと雪が付いていれば2日以上かかることも有り得る。この難易度の差が雪稜の面白みであり、再登する価値でもある。篤志家向けの尾根であることは間違いないが、気が向いたらいかがでしょうか。
<アプローチ>
戸隠キャンプ場に駐車。スノーシューハイキングも盛んな場所なので意外に車で一杯になる。注意しよう。下降路は雪の状態次第で左稜とドーム稜間のルンゼを下降すると早い。雪が多い場合は1857mピークから大洞沢へ下りる尾根を利用することになる。幕営場所は要所のコルや段差となっている箇所など意外と得られる。懸垂下降で安全圏に下りるのは難しくは無い。修行の場としては最高である。