2021年2月15日月曜日

戸隠 九頭龍山 ドーム稜
















尾根が乱立する九頭龍山の中で、ある程度長さを持った尾根は右稜、ドーム稜、左稜の3つだと思っている。その中でも取り分け目立つ岩峰を抱えているのがドーム稜である。ぱっと見「これ登れるん?」という外観なのだが取り付いてみれば、あら不思議。ラインは繋がっているのである。

取り付きは非常に解りにくい。左稜の隣の尾根なのだが、下部は谷と尾根の高差が無いために無理やり尾根に出ない限りは自然と谷側へ導かれてしまうことになる。尾根左側の谷は1550mの岩場マークが始まるあたりで小さなコルとなって収束する。一方、右側の谷はさらにルンゼ状が続くが、これ以上谷を詰めてしまうと尾根を登る区間が余りに短くなる。拘りが無い限り1550mあたりから尾根登りを楽しむのがいいかも知れない。

筆者らが登ったタイミングではキノコ雪の発達は少なく登攀の困難は無かった。岩峰はすべて弱点があり、概ねダブルアックスで高度を上げることになる。イメージとしては左稜の内容に近い。中盤は尾根の独立性が高まり内容も申し分なく非常に楽しい。終盤は再び谷と尾根の高差が少なくなり独立性は薄くなり、ややムードが下がる。左右は絶壁なんだ!と思いこむことで対応しておこう。稜線へ出れば地形は一気に優しくなり安心できる。

所要日数は状態次第で大きく変わるだろう。状態が良ければ日帰りで抜ける事も十分可能だが、びっしりと雪が付いていれば2日以上かかることも有り得る。この難易度の差が雪稜の面白みであり、再登する価値でもある。篤志家向けの尾根であることは間違いないが、気が向いたらいかがでしょうか。


 <アプローチ>

戸隠キャンプ場に駐車。スノーシューハイキングも盛んな場所なので意外に車で一杯になる。注意しよう。下降路は雪の状態次第で左稜とドーム稜間のルンゼを下降すると早い。雪が多い場合は1857mピークから大洞沢へ下りる尾根を利用することになる。幕営場所は要所のコルや段差となっている箇所など意外と得られる。懸垂下降で安全圏に下りるのは難しくは無い。修行の場としては最高である。

<装備>
スコップは登攀具として必須。キノコ崩しはもちろん、段差を乗り越す時にはピッケルよりも安定感がある。不安定な場所で振り回すので要バックアップである。藪が発達しているので支点はスリングのみでよい。ダブルアックスで登る箇所も多いのでアックスは小指が引っ掛かるタイプがいい。

<快適登攀可能季節>
2月~3月上旬。岩峰が発達していて昇温による雪の脱落は早い。適期は2月中と考えた方がいいかも。

2021年2月7日日曜日

爺ヶ岳東尾根

 








冬のクライミングパラダイス後立山だが、爺ヶ岳の名が挙がることは少ない。「西俣奥壁いいよ~!」と言っている方に会ったことが無いのであんまり登られていないのだろう。かく言う筆者も爺ヶ岳を登攀対象として顧慮していなかったので、厳冬の姿を知らない。一気に攻めては惜しいので、徐々に距離を縮めるべく東尾根から赤岩尾根を周遊してみることにした。

東尾根1767m角点付近から主稜と北稜の眺めが素晴らしい。いずれの尾根も山頂へすっきりと伸びていて美しいラインだ。3月上旬に素早く登れば楽しそうである。西沢奥壁側を眺めるには赤岩尾根を下降するのがいい。右稜、左稜、中央稜、奥ノ稜とびっしり雪の付いた姿は圧巻。こちらも登るのであれば3月が合理的なのだろうが、真っ白けっけな2月に登ったら痺れるだろう。うむ、とってもいい山じゃないか爺ちゃん。今後とも末永くよろしくです。

東尾根自身は登行距離は長いが技術的に困難な箇所や危険な箇所は無い。唯一注意するとすれば風が強く森林限界が低い点だろうか。週末2日間で、東尾根から爺ヶ岳だけだとちょっと物足りないので、鹿島槍のピストンも組み合わせると充実するのでおすすめ。ところで、後立山東面では風の強い尾根と弱い尾根の差がやたら激しいのはなんでだろう。全体と局所、どちらの風の流れも考察しつつ登ることとしよう。

<アプローチ>
鹿島山荘近くの県道脇のスペースに駐車する。暗いと分かり難いので注意が必要。鹿島山荘左手の林道から谷の横の斜面を上がり始めるが、特段弱点は無いので尾根に上がるまで適当に登るしかない。尾根に上がると傾斜が一気に緩み登り易くなる。風が強いので幕営するならば2000m付近がいいかも知れない。

<装備>
東尾根そのものであれば登攀具は要らない。全体を通して傾斜が緩いので、スノーシューが有利。

<快適登攀可能季節>
1月~4月 登山道が付いていないのでがっちり雪の付いたシーズンが快適。土日で東尾根だけだと物足りないので、冷池まで縦走して鹿島槍をピストンで踏んでくると結構いい感じに疲れると思う。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

<温泉>
上原の湯:410円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
みみずくの湯:白馬にある日本有数の強アルカリ泉。入って損は無し。