2023年5月9日火曜日

西方が岳 常宮川(仮称)







ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し

と詩ったのは萩原朔太郎である。そりゃそうだ。日本とフランスの間にはどでかい海があるもの。でもどっか行きたいなぁ。とおもって、彼が新しい背広でお出かけしたのが5月の早朝だったそうな。

ハワイに行ってみたいけどあまりに遠い。とおもったならば敦賀に行くのはどうだろう。ここには北陸のハワイの異名を欲しいままにする水島がある。初めて水島を見たとき、ハワイというよりパラオだと感じた。どっちも行ったことないけど。とはいえ白浜と樹木が織りなす光景が南国風なのは間違いない。時にはリゾート地でゆっくり観光しつつ過ごす休日も楽しい。

ハワイに行くのであれば山登りも楽しみたいと思うのが自然の流れ。ありますよ、敦賀にも良い山が。西方が岳は敦賀三山の一角をなす名山であり、個人的には三山の中で最も好きな山である。何と言っても岩と海が織りなす眺めが素晴らしい。海が見える山は沢から登りたい。何の下調べも無く常宮神社へと流れる沢から登ったが、敦賀の沢らしく小気味よい小滝が続く良渓であった。惜しむらくは谷の名称を確認し損ねたことである。山頂の展望も良いが少し先のカモシカ台まで是非足を延ばしてほしい。また、栄螺が岳までの道中森は美しくうきうきする。下山の登山道にも魅力がある。原子力発電所からの超高圧送電線が間近で数多く眺められるのだ。山々を跨ぐ超高圧送電線は圧巻である。圧倒的な碍子の数や鉄塔のデザインも面白く見ごたえがある。原発が稼働していたら送電音も楽しめたのだろう。

新緑と青い海そして白い砂浜。スモーキーな冬が明けて原色の春から初夏は旅がいい。

われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。

<アプローチ>
県道横の常宮神社駐車場に停めさせてもらうか、さらに上部の私道の路肩へ駐車する。下山は登山道を利用すると簡単。

<装備>
沢慣れしていない人が居る場合は念のためロープ

<快適登攀可能季節>
寒くないとき。雪が降っていないとき。

<博物館など>
若狭三方縄文博物館:建物がモダンな設計である。そのため、全国各地にある縄文系博物館にありがちな寂れた感は全く無いのでそれだけで嬉しい。また、寂れた博物館に有りがちな「はい、並べました」的な展示では無い。美しくて解りやすくて楽しいのである。最近の縄文ブームで訪れる人が増えるかもしれない注目の博物館である。

福井県年縞博物館:水月湖の湖底には7年を正確に測る物差しがある。それが年縞である。2018年に開館した新しい博物館で、年縞実物が45mに渡って展示され、この7万年間の日本列島で起こった出来事が詳細に解説されている。7万年の地球活動の解説7万年の旅が45mで可能ってすごい。北陸屈指のおもしろ博物館である。

気比の松原:スケールが有るわけではないが日本三大松原である。芭蕉翁も観た。虚子も観た。これだけで十分見物の理由になる。なお、あと二つは三保の松原と虹の松原となっている。

敦賀市博物館:旧大和田銀行の建物を利用した趣の有る外観と内装。港湾町として発達した敦賀の歴史を学べる。最大の見せ場は4等フレネルレンズの実物品が2点も展示されている所。精緻で奇妙なレンズが遠く海を照らすロマン。

柴田家庭園:有力農家であった柴田邸に造られた庭園。近くで庭園を楽しむならば西福寺の方がよいだろう。

敦賀原子力館:門ヶ崎の直ぐ近くには高速増殖炉もんじゅがある。原発の利用は賛否が有るだろうが、その原理と工学的な機構は興味深い。冷媒にナトリウムやカリウムを使用する合理的で大胆な発想に感心した。漏れちゃったけど。

立石岬灯台:日本海側で2番目に古い灯台である。敦賀は中露への玄関口で重要な港であったことが伺える。鉄道の整備も早かった。