新穂高右俣林道にある穂高連峰なんちゃら西尾根シリーズの中でもマイナー最右翼は南岳南西尾根ではないだろうか。出だしのものすごい急登と藪を見れば誰しも「これは今ではない」となるのも頷ける。その時がいつ来るのか、或いは来ないのかは人によるのだろう。
尾根末端はやっぱり凄い急登で怖気づく。ルンゼを少し登ってから緩い個所を目指して尾根に取りつく。取りついてみると傾斜は強いが単調な傾斜である。主たる藪は笹で許してあげてもいいぐらいの密度だ。下部樹林帯の尾根は細い個所に岩場が出てきて結構面白い。2400mくらいで下部樹林帯を抜ける。滝谷の雄姿を眺めながら気持ちの良い雪稜を登る。途中小ギャップがある地点は雪の状態次第で懸垂したほうが良いだろう。再び雪稜と雪面を登ると西尾根との合流点手前の岩場となる。岩質は槍ヶ岳小槍の岩とそっくりで穂高連峰の火山活動が偲ばれる。この岩場を直登しても良いが合理性が乏しい。右寄りが登り易く自然なので普通はこちらからを選択することになるのでは。慣れていればロープが要らない程度かもしれないが、念のため確保するほうが吉。あとはゆるっと南岳山頂へ。尾根が直接山頂へ至らず広い雪面となって尾根が消えるのがちょっと残念だが、尾根登りとしては変化に富んでいて面白い。
山登りはルールがないし、どこに行くか何をするのか選択しなければ始まらない。選択とは主体性が表出するもの、と思っていたがそうでもない気がする。ぶらぶら山登りを続けていると、勃然継続登攀のラインが開眼したり、かつては歯牙にもかけなかったラインが突如気になってきたりする。そしてこの意欲の惹起を言語化するのはなぜか困難である。登山は思念が行為として具現する裏に非言語の因果が無数にあるという大切なことを再確認する場でもある。ぼくらは粒子であり波のようだ。山のコンディションという初期条件を土台に、自らの中にある関数と相棒の関数が合成され思わぬ方向に写像が飛んで行く。次はどこに飛ばされるのか楽しみである。
<アプローチ>
藤木レリーフより少し上にあるルンゼから取りつく。厳冬期であれば傾斜の緩いところを選んで尾根に乗る。雪がしっかりついた残雪期であればルンゼをそのまま詰めあがることもできる。幕営箇所は下部樹林帯を抜ければ何か所かある。下山は雪が安定している場合南沢が最速。雪のコンディションや気分に応じて西尾根を下降したり、大切戸を超えてB沢から滝谷を下降するのも面白い。
<装備>
トライカム、ナッツ
<快適登攀可能季節>
12月~4月。出だしの急登や雪稜は雪がしっかりついていないと登りにくい。雪が多いシーズン後半のほうが快適だと思う。
<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。