2016年8月1日月曜日

大長谷川 西ノ瀬戸谷











下流は釜を持つ美しい滝と大滝に魅せられる。積極的に水に入り楽しみたいところだ。中流のゴーロ帯をこなし、1310m二俣を右に入ると連瀑帯が始まる。入り口の豪快なガンダム滝(勝手に命名)から始まりチムニー状の滝、意外に難しい斜瀑と相当に面白い。ミニゴルジュの雰囲気もオツである。詰めのヤブコギはそれ程でもないが、ススタケ林なのでフェルトが滑る。短い沢なので、下流部で釣りを楽しみながら金剛堂山へ登るのが楽しい。

それにしても、オロロ(イヨシロオビアブ)の襲撃は凄まじかった。竿を振る指に、屈んで出た腰周りに、用を足そうとして、僅かな地肌も見逃さずに噛み付いてくるのである。実はそんな事は百も承知で入渓しているのだ。それは何故か。彼等と戯れたかったからに他ならない。

皆さんは足の匂いを嗅いだ事は有るだろうか。一度目に臭いと解っても、5秒程経過したらまた嗅いで同じリアクションを取ってしまうあれである。このように不快に思ったことを幾度か繰り返してしまうのは何故か。私見ではあるが2つの理由が考えられる。1つ目は自分(或いは他人)の匂いを嗅ぐ事で、その存在の一端を確認するというワンちゃん的衝動行動である。五感によって一度に得る事が出来る情報は少なく、はっきりとは解らないものだ。やはり、存在の謎を解き明かすには幾度か確認せねばならない。2つ目は自己の許容限界確認およびリスク判断基準の確立だと思う。生命体にとって快、不快の境界を決定する事は命に直結するため非常に重要である。そのため、安全だと思われる範囲で場数を踏む事で、「これ以上は駄目だ」という更に先のポイントを予想しているのである。

先述の足の匂いの例と同じように、筆者は周期的に普段忌み嫌うアブの群れの中へ身を置きたくなるのである。しかし、あんな恐ろしい思いは5秒後には味わいたくない。振り返ってみると凡そ4年のサイクルで、奇しくも夏季オリンピックと同じ周期であった。そのためか、筆者のオリンピックの思い出はアブの暴力的な旋回音と掻き崩した傷跡ともに有る。北京大会ボルトの衝撃は初めてのアブ体験である宮川小豆沢と共に有り、ロンドン大会陸上日本のバトンリレーは野積川真川谷と島道川滝ノ内沢と共に有る。オリンピックがスポーツの祭典ならば、雪国のアブは大自然の祭典だ。あちらが熱狂ならば、こちらは狂乱だ。生態系の一部に組み込まれ、ぎゃーぎゃーと大声を上げ喚くのも珠には悪くない。

さて、2020年大会は我が国東京で開催が予定されている。自国開催となればその熱狂ぶりは並大抵のものではないだろう。となれば、こちらも対抗せねばならない。やはりアブの聖地である白山か。二又川、倉谷川、目附谷辺りを2泊3日で釣りをするというのはどうだろう。一向に上がらない標高と長い流程には物凄い狂乱が予想される。サッカースタジアムと違い山の懐で暴徒化したところで誰も取り押さえてはくれないし、強制送還もされない。入ったら最期、自分の意思をもって歩かないと登りきることも、帰る事もできないのである。これは冬期黒部横断新ラインに勝るとも劣らない堅い決意が求められる計画だ。ということで本日より、東京のオリンピック開催地辞退を星に願う日々である。

<アプローチ>
大長谷第四発電所に駐車。そこまで富山大学からおよそ1時間。堰堤が続くので林道を利用して出来る限りカットする。途切れたところから4つ堰堤を越えて沢登り開始。下降は金剛堂山北東に流れる支流を利用するか登山道を降りる。

<装備>
滝を直登するのであれば、カム、ナッツ、ピトン。巻きメインならばスリングだけで良さそう。合理的なラインを選択する場合、沢慣れしたパーティーであればロープの必要性は感じないかもしれない。

<快適登攀可能季節>
6月~11月。北面なので残雪は多いと考えられる。虫が多い時期は鬱陶しい。

<温泉>
大長谷温泉:小さいけどアットホームな良いお風呂。露天風呂はいつもぬるい。

<博物館など>
白木峰:隆起準平原の美しい山頂。最寄の駐車場から30分ほどで山頂とお手軽である。小屋は無人で開放されているので利用可能。6月下旬~7月下旬はニッコウキスゲが素晴らしい。



高熊カキ貝化石床:仁歩川と野積川の合流点にカキ貝の化石と珪化木を観察することが出来る。この地はその昔温暖な海だったのだ。マングローブ林が広がっていたらしい。

<グルメ>
県道7号線沿いのグリル高野のカツ丼はボリュームも味も文句なし。7号線から少し離れるが田村農園のきみソフトクリームは300円ながら絶品。一度ご賞味あれ。

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