2017年2月22日水曜日

錫杖岳 注文の多い料理店









錫杖のトポを見るとJimi Hendrix、Bob Dylan、太田裕美、宮沢賢治、沢木耕太郎ら文化人を連想させられるルート名が並んでおり、他の山の壁と比べると幾分華やかな印象を受ける。彼らの中で個人的親しみ度合は宮沢賢治がジミヘンを僅かにリードしトップ。よだかの星、めくらぶどうと虹、フランドン農学校の豚なんかは昔から好きだし、春山で谷を詰める時には「はぎしり燃えてゆききする、俺はひとりの修羅なのだ!」と叫びたくなる。記する通り賢治には割と親しんできたのだが、東に病気の子供があっても、西に疲れた母が有っても、外へ遊びに行くようなものとなったのは何故だろう。

さて、北沢フェースに拓かれた「注文の多い料理店」は賢治の作品に由来とすると思われる。無雪期は人気なようで紅葉の時期なんか大層混むと聞く。そんな注文は冬に登れば繊細さと豪快さを感じさせるテクニカルなルートである。出だしは支点の取りにくいジリジリ系。中盤からはレイバックなど大きなムーブを要するダイナミック系。ラインとしては冬に登る合理性はあんまり感じないが、楽しいのは間違いない。ただ、ハング越えのピッチで除雪作業を理由に支点にぶら下ってしまったのが残念であった。壁の中でバランスをとりながらの掘削作業は大変な労力で、その疲労と恐怖に負けてしまったのである。キノコ雪なんぞ一喝で木っ端微塵にする気合が無ければならないのだろう。どちらかと言えば、そういうものにわたしはなりたい。

<アプローチ>
槍見から登山道。槍見まで富山市内からおよそ1時間40分。

<装備>
キャメロット#0.3-#5をワンセット、#0.75-#4までをもうワンセットあれば万全。ナッツ一式、1ピッチ目用にイボイボ、肉厚のピトン。

<快適登攀可能季節>
1月~12月。年中登れる。冬期登攀の場合、晴れると北沢フェースは融雪による濡れが酷いので高曇りの日を狙いたい。取り付きである北沢からの雪崩も怖い。厳冬期積雪の多い時はテラス、抜け口にキノコ雪が発達し除雪作業が必要になることもあるようだ。左方カンテに合流するように登らず、左手のクラックが走ったコーナーを登りブッシュ帯へ抜けるのが合理的。ここから更に注文の左の上部へと継続することが可能である。

<温泉>
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2017年2月19日日曜日

三方崩山




ラッセルと雪洞生活は北陸の山では必修課題。どちらも楽しく習得して長期山行に臨みたい。では何処で実践すれば良いかといわれると意外と難しい。ラッセルテクニックを磨くには標高の違い、方位の違いを感じれる場所がよい。もちろん雪洞を掘れるほどの雪が有る場所でないとだめ。そこで、三方崩山はピッタリの場所だと思う。登山道がある尾根は藪も刈られ、難しい尾根ではないので歩く事に集中する事ができる。取り付いた尾根とは別の尾根を下降すれば読図も面白い。雪まみれになって静かなブナ林を喘ぎ登り、雄大な白山を眺めれば気分最高。シンプルで楽しい雪山登山だ。

<アプローチ>
国道156号は九十九折で時間が掛かる。富山市内からは城端廻り国道304号線のほうが除雪と融雪装置がしっかりしており早い。雪がしっかり付いた時期であれば、平瀬の道の駅に駐車し発電所のほうへ歩いて尾根末端から取り付くのが無難。駐車するときには山に行っている旨を車内の見える所に張っておこう。

<装備>
基本雪山装備。スノーシューの方が良いかもしれない。

<快適登攀可能季節>
1月~12月。登山道があるので年中登れる。新緑、花、紅葉と四季折々素晴らしい山。
弓ヶ洞谷、大ノマ谷には何本か面白い雪稜があるようだ。3月辺りが適期だと思う。いつの日か訪れてみたい。

<温泉>
大白川温泉:硫黄泉ーナトリウムー塩化物泉。道の駅近くに日帰り温泉がある。無雪期にはダムサイトの露天風呂へ行くのも良い。

<博物館>
白川郷の古民家には生活の知恵が詰まっている。自然に溶け込んで非常に理にかなった建物である。秋にはどぶろく祭りが開催される。左党諸兄は秋の紅葉と御酒が良いと思う。でも年中物凄い人なので訪れるには覚悟がいる。

2017年2月7日火曜日

明神岳2263m峰 西壁大洞穴凹角右








2263m峰は正確な概念図もトポも無いので登った場所を正確に述べる事ができないのがいい。何せモヤッとした情報からその場で適当に判断して登っていくのが面白い。その点で冬期登攀にはゴルジュ突破、大滝登攀と似た楽しみがある。
西壁S字ルンゼのゴルジュに入ると右側にスラブ凹角が結構なスケールで広がっている。その上部を観察すると立派な洞穴が見える。凹角から取り付き、その洞穴の右側から稜線に上がるラインを登った。1P~2P目を傾斜の強いところを選んで登ると中々痺れる。以降は安定したブッシュで支点が取れるのでぐいぐい登る事が出来る。稜上までは4P~5Pである。

<装備>
イボ数本、ピトン薄刃~ロストアローサイズ。カムは殆ど使えない。潅木で支点を取るのでスリングは多目に。下降は同ルートが早い。

<快適登攀可能季節>
12月~3月上旬くらいか。西面は南面、東面と比べると遅くまで楽しめそう。

<博物館など>
福地温泉で日本最古の化石が発見されている。年代は古生代オルドビス期~デボン紀。即ち5億年~3億6000年前である。残念ながら冬期登攀後は観察できない。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉