2017年3月21日火曜日

笠ヶ岳 穴毛谷第一尾根末端壁~第一尾根














 新穂高から穴毛谷方面を眺めると猛烈な岩壁と雪稜がすぐ近くに見える。その中でも目を引くのが距離的に近い第一尾根の壁だろう。こんなに近くに有るのに殆ど登られる事のない壁である。その末端壁から尾根に上がりキノコ雪稜を攀じれば多彩な内容と困難さで北アルプスでも屈指のルートとなる。

 第一尾根末端壁はニノ沢出合いからズドンと薙ぎ落ちている岩壁だ。冒頭の写真は寡雪であった時の写真であり実際は雪の付着が著しい壁である。登ったラインは赤線の沿いだと思う。直接突上げるルンゼは垂直の草付きでちょっと登れそうには見えなかったので右に迂回した。この壁の上部には第一尾根側壁が一ノ沢側に広がっており、末端壁を終了したリッジを少し登りトラバースして移動する事ができる。

 登攀はルンゼ状の氷から始まる。日当たりの良い東面、しかも低標高の氷とくれば勿論氷質は悪い。シャンデリア氷なのか雪なのか、はたまた草付きなのか良く分からない氷である。そこを抜けると傾斜の強い岩を登り右の雪壁に入る。傾斜が強くハングしたキノコ雪を崩しながら3Pほど伸ばすと末端壁は終了する。取り付きから計5P程である。
 
 末端壁が終わっても全く気が抜けない。リッジ上は危うげなキノコ雪が林立しているので左側に大きくトラバースして第一尾根側壁の上部に入る。ここは登る事の出来るラインは限られると思う。側壁上部に入り、ルンゼと雪壁を3P程登るとやっと第一尾根主稜線に上がる。
 
 主稜に出ても2050mの台地まではまだまだ遠い。キノコ雪を崩したり、避けたり、雪のチムニーを掘削したり仕事に追われる。台地に着いたと思ったら先に望む尾根がまだ厄介そうでぐったりするだろう。2130mからの岩場は凹状を正面突破するしかない。3Pで容易なリッジとなり、ここからコンテを含めて2P程で漸くロープを解くことができる。あとはクリヤの頭までワカンラッセルだ。

<アプローチ>
積雪期の穴毛谷に入るには雪の状態を把握して入山したい。夜中に入谷し末端壁下部の氷のセクションを気温が上がる前に終わらせた方が無難である。尾根上に幕営適地は要所にある。エスケープルートは谷に下降する。下部では一尾根側壁側ルンゼへ、上部では二ノ沢側が逃げやすい。しかし降雪時には逃げられない。末端壁から登る場合は2泊3日が標準ではないか。第一尾根側壁から登る場合は1泊2日で可能と考えられる。登攀終了後はヒロサコ尾根の途中からクリヤ谷へ下降。笠ヶ岳まで登る事が出来れば素晴らしい。新穂高まで富山市内からおよそ1時間40分。

<装備>
岩壁部分が存外に難しいので、ひん曲がったアックスと縦爪のアイゼンが有効。スコップも重要登攀具なのでバックアップを取って頭上で振り回せるようしておこう。ダブルアックス&シングルスコップがベスト。カム一式、ピトン。

<快適登攀可能季節>
1月~3月中旬。なにより穴毛谷に入ることが可能なコンディションのとき。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

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