2017年12月25日月曜日

錫杖岳 P4チムニー右








P4チムニールート右は取り付きはパッとしないが登ると結構面白い。P4より東側にある小岩峰のフェース状リッジを登るラインである。ブッシュはやや大目だが露出感があって気持ちが良い。取り付きから凹状を登るが傾斜も強く見た目より悪い。下から眺めると怖そうだが支点は岩から取れる。ここは左側のブッシュへ逃げる事も可能である。簡単なスラブを抜けると小さな垂壁~ヘッドウォールへ突入。ここから岩は登るにつれて脆くなるので慎重にこなしたい。ヘッドウォールから頂上を直接目指したが、ヘッドウォールの岩は脆い上に傾斜が強く登攀を断念した。最終テラスから頑張って右上すればへどウォール側から登れるかもしれない。なお、最終テラスの手前から左へ小ルンゼを跨ぐようにトラバースしたのち、岩峰頂上へと続くリッジを登ればヘッドウォールを巻いてだが岩峰上へと至ることができる。このラインは4P程度だが十分に楽しめる。

<アプローチ>
槍見から登山道。槍見まで富山市内からおよそ1時間40分。

<装備>
キャメロット#0.3-#4を1セット。他ナッツ、トライカム少々。

<快適登攀可能季節>
12月~3月。降雪の影響を受けにくいので悪天時のラインとして利用できる。なお、この岩峰の登頂は北東壁側からであれば比較的容易である。

<温泉>
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2017年12月19日火曜日

錫杖岳 1ルンゼ左







1ルンゼ左は冬期登攀における岩登りの要素がみっちり詰まった好ルート。全体に傾斜は強いもののホールド、支点状況は概ねフレンドリーである。見た目より悪い左上凹角から登り始める。凹角を登りきったら、左側にある1ルンゼ左の本筋へ入る。ここからぐっと傾斜が強くなり手強い。ルンゼから続くベルグラの張るフェースを登る。ここは日当たりが良いので好天が続くとあっという間にドライになるだろう。さらにスラブ状フェースからチムニーに入り込んでいく。このチムニーはトルキング、ジャミング、ワイド登りと多彩な技術を要求され奮闘的だ。もう1ピッチ草付き混じりの岩を登ると1ルンゼへ合流する。

<アプローチ>
槍見から登山道。槍見まで富山市内からおよそ1時間40分。

<装備>
キャメロット#0.3-#3を2セットあれば安心。他ナッツ、トライカム少々。

<快適登攀可能季節>
1月~12月。年中登れる。冬期登攀の場合、上部に雪田が無いので降雪直後でも登攀可能と思われる。日当たりが良いため、晴れると壁が濡れてくるかもしれない。

<温泉>
栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2017年12月13日水曜日

明神岳東稜









巷ではインスタ映えなる言葉が流行である。インスタグラムというSNSに投稿する際に見栄えがする写真、或いは場所という意味だそうだ。インスタ映えを求めて、ある決まった場所に人が大勢詰め掛け、その場所でのマナーが問題となっていると聞く。色々な意見があるとは思うが、ホモサピエンスにとって何かを表現し、伝えるために趣向を凝らすというのは意義深い活動だと思う。そのきっかけがSNSでもいいんじゃないかなと思う。

しかし、一様に同じところへ詰め掛けている所をみると「映え」の主体はあくまでも写真であり場であると推察される。送り手の個性が際立ち写真ではなく発信者そのものが「インスタ映え」していれば面白い。そのためには撮影技術もさることながら全体の構成が大事であろう。例えば、「竹下通りでクレープ食べました」といったステレオタイプゆるふわ投稿の後、「へら絞りで室内灯をつくりました」とか「柳川鍋の泥鰌をウチダザリガニに変えて調理しました」のような投稿をすれば、その人の創造性と趣向の振れ幅が興味を引き、いいね!が増大するのではないだろうか。

インスタ映えという点において、明神岳東稜は非常に優れている。どのシーンも絵になる上、登山ルートとしても色々な要素のある名クラシックである。前半は岩壁を前に上宮川谷を詰める。スケールが大きく感じられ興味深い景観である。もちろん雪の状態次第では尾根から取り付いたほうがよいだろう。ひょうたん池からは見通しの良い尾根になる。雪は東南面のためか、重かったり、底抜けすることが多い。思わぬ転倒も有りうるので慎重にこなしたい。左には登攀意欲を掻き立てるⅣ峰東北稜があり、右には前穂高の岩場がある。振り返れば霞沢岳と乗鞍岳が美しい。山頂のほぼ直下にあるバットレスは完全に名前負けで小さく傾斜も緩い。雪面を登り、山頂へ出ると奥穂高を中心とする均整のとれた稜線美に感動するはず。下降の明神主稜も侮れない。雪が乗ったⅡ峰の登りは意外に悪く緊張した。Ⅲ峰への下りはクライムダウン可能だが、状態次第で懸垂した方がよさそうだ。Ⅴ峰まで岩稜登行を堪能し少し雪の吹き溜まった前明神沢を下降した。

この度の明神東稜では誰にも会わなかった。登山の世界には、まだ映えを求める人種はやってきていないようだ。鉄工所、ウチダザリガニ、山。この三つ巴の争いの末にどの業界がインスタグラムを制するのか。今後の動向に眼が離せない。

<アプローチ>
上宮川谷を詰めて取り付くか、上宮川谷左岸尾根末端から取り付くのが妥当。Ⅴ峰から西面の前明神沢を下降したが、意外に雪は吹き溜まっており安定しにくいと感じた。降雪直後は尾根を忠実に下降するほうが無難かもしれない。幕営はひょうたん池が最適。ラクダのコルも張れるがやや風が強いかもしれない。

<装備>
トライカム少々、ナッツ。歩く箇所はどこもかしこも残置だらけである。

<快適登攀可能季節>
12月~5月。しっかり雪が付いていた方が楽しそう。

<博物館など>
穂高岳周辺の地質は原山智・山本明著『「槍・穂高」名峰誕生のミステリー』に詳しい。熟読してから登れば穂高周辺の登山が六百倍楽しくなるはず。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

2017年12月4日月曜日

不帰西面 Ⅲ峰西尾根






不帰Ⅲ峰西尾根。はて、どこかしらと怪訝な顔をされるかもしれない。Ⅲ峰西尾根なんてルートは登山大系などのガイドには載っていない。それもそのはず、筆者が勝手に名づけた尾根名称なので誰も知る由はない(と思う)。

岩場の末端はフェースになっていて取り付きにくいので、南側の凹角から登り始める。出だしは被り気味で少々思い切りが要る。そこからはベルグラを使った岩登り。支点は良好で冬壁の楽しさが詰まった核心ピッチだ。1P目の終了点からは少々歩いて次の岩場へ。岩尾根の末端は風化の激しい花崗岩だったので側壁のルンゼから登る。被り部分は藪にアックスをブッ刺して乗り越す。あとは快適にロープを伸ばし小テラスまで。続く凹角状の岩場を登れば、Ⅲ峰へ続く雪稜となる。振り返れば剱岳と富山湾の青。最高のロケーションだ。

Ⅱ峰西壁への取り付きを間違えて取り付いた尾根だったが、岩の質は上々で素敵な偶然であった。アプローチの間違いは福音である。周囲を見渡して岩場はないか、ピークに繋がる尾根はないか。真剣に登る対象を探すそのとき、登山の滋味を掬するのである。

<アプローチ>
Ⅲ峰から北に向かって直ぐのルンゼを下降する。周辺に顕著な岩壁が少ないので取り付きは解りやすい。2500m付近の岩場マークが西尾根の岩壁部分に該当する。八方まで富山大学から下道で3時間と少々。

<装備>
カム、トライカム少々。ピトンは使わなかった。

<快適登攀可能季節>
12月~3月。西面なので雪が締まっている事が多いはず。八方尾根のアプローチも良いので厳冬期でも割と登り易いと思う。短くて気軽に取り付けるので初冬の足慣らし、雪稜と組み合わせての継続登攀など良いかも。

<温泉>
みみずくの湯:日本有数の強アルカリ泉です。周辺の温泉は有名。入って損は無し。
倉下の湯:みみずくの湯を含む白馬八方温泉とは源泉が異なり、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉。価格も同じ600円なので気分応じて入り分けられる。

<グルメ>
グリンデルというレストランのベーコンステーキが秀逸。小洒落た雰囲気だが、汚い山ヤが居ても違和感無く食事が出来るのは白馬ならでは。白馬駅近くのおおしもはカレーライスの量が凄かった!ききょう屋という寿司屋の焼魚定食もおいしい。

<博物館>
富山への帰りしな、糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)