高瀬川の左岸沢は高瀬ダムに邪魔されているので登りに行くには一寸した意志が必要だ。そして、西沢は登山大系でどえらい沢のように記載されている。そうはいっても、昭和の話でしょう。突破できないかしらんとフルギアで臨んだ。しかし、ゴルジュ入り口の滝をようやっと登った(右壁を登ったがひどい崩壊壁でめちゃ怖い)後、あれよあれよと追い上げられてしまう。スラブ大滝が続くのを確認すると、降りる事に踏ん切りがつかなくなり左岸を延々とトラバースする破目になった。このトラバース中に4つほどルンゼを跨ぐことになり中々大変である。ゴルジュを抜けても容易に直登させてもらえるような滝は少ないが、東向きの明るい渓相で気分は上々だ。1942mの二俣から先は荒れた渓相となるが谷は開放感があり嫌な気がしない。筆者らは真夏に遡行したためコマクサの群落に癒された。西沢は巻きが中心となるので、クライミング的な鋭さより沢屋的な嗅覚が問われる難渓だと思う。
ところで、高瀬川の流域は岩がヌメるのでラバーソールは適さない。花崗岩の谷といえばどこもラバーソールばち効きという訳ではない点に自然の奥深さを感じる。高瀬ダム建設時には詳細な環境アセスメントがされている。その中で高瀬川流域の付着性藻類に関する報告(高瀬川流域自然総合調査報告1976年)がこのヌメリ問題についての示唆を与えている。調査によると、高瀬川本谷や支流の付着性藻類の絶対数は他河川と比べて種数と量いずれも少なかった。そして上流域での優占種はGenus SP.黄色鞭毛類(Chrysophyta)であったという。このChrysophyta類は冷水を好むそうだ。この事実を沢登りのヌメリ問題に応用すると花崗岩は表面に凹凸が多く付着しやすいため、遊走性を失ったパルメラ状態となりシーズンを通してヌメリを感じるのかもしれない。では、なぜ高瀬川流域にChrysophyta類が多いのか。これはとても興味深い問題である。植生の違いによる菌類・細菌類を含めた土壌成分の違いなのだろうか。各所のサンプリングポイントで水温、pHには他の河川と大きな違いは無いことは示されている。山の謎はゴルジュや岩壁の中だけではない。僕らは足元の岩がなぜ滑るのかについても良く解っていないのだ。高瀬川だって2019年の今、Chrysophyta類が優占種であるかの確証もないし、すべての山域のヌメリが同じ由来ではないだろう。そう、やっぱり山登りはおもしろいのである。
<アプローチ>
高瀬ダムのバックウォーターから湖岸を泳ぎを交えながらへつって沢の入り口まで。水量にもよると思うが1時間くらいで入渓できた。ゴルジュ内に良い泊まり場があるのかは不明。我々はゴルジュを完全には抜けきらない1750mくらいの川から少しだけ離れた藪の中で泊まった。下山は竹村新道を利用するのが楽だが、五郎沢を下降するのも面白いと思う。ただ、竹村新道からは硫黄岳の大迫力が楽しめて嬉しい。
<装備>
岩のギアはカム1個しか使わなかった。懸垂用に50mロープ二本有れば便利。スリングは多目に。足回りはフェルトがいい。
<快適登攀可能季節>
7月~10月上旬
<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。
塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。
大町市立図書館:高瀬ダム建設時に行われた環境アセスメント報告書(高瀬川流域自然総合調査報告書)が非常に興味深い。追加報告書の最終発行日が昭和56年であった。10年おき位で良いので更新して貰えると良いのに。
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。
塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。
大町市立図書館:高瀬ダム建設時に行われた環境アセスメント報告書(高瀬川流域自然総合調査報告書)が非常に興味深い。追加報告書の最終発行日が昭和56年であった。10年おき位で良いので更新して貰えると良いのに。
<温泉>
上原の湯:500円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。600円。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。600円。
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