2020年1月27日月曜日

霞沢岳西尾根






普通の尾根である。と、霞沢岳西尾根は一言で片づけることが出来るのだが、何事も普通を普通にこなせることが第一歩。雪山を初めて間もない人にお勧めしたい尾根である。

ルートの大半が樹林帯なので環境としては厳しくない。吹き溜まりは多少ラッセルになるものの、急傾斜帯は強い西風によって雪がついてない事も多い。こういう場所では氷化した土に固い氷が付着している。そのような場所ではアイゼンの足運びを訓練できるだろう。頂上のちょっと手前で尾根が一旦細くなり簡単な岩稜が現れる。技術的には大したこと無いが(無いために)油断しないようにしたい。最後は広くなった山稜を気持ちよく歩いて山頂へ。穂高岳沢側の眺望がすばらしい。

雪山要素を十分に含んでいながら、あくが無くさっぱりとした味わい。キャラ濃い目が揃った北アルプスの中では、勝手のいい雛壇芸人的立ち位置だ。

<アプローチ>
国土交通省の砂防事務所付近から北側へと尾根に取り付く。上高地へ下降する調子のいい尾根が無いので同ルート下降が無難。ちなみに、六百山北尾根は岩稜交じりの藪尾根で下降は意外と手ごわい。日帰りで楽しめる尾根だが幕営の練習を兼ねて泊まるのもまたよし。抜群の場所は無いが、そこそこの場所ならば随所にある。

<装備>
念のためロープとスリング少々。

<快適登攀可能季節>
12月~3月 厳冬期だと尾根上を吹き抜ける強い西風により着雪が少ない事も多い。藪が五月蠅い箇所もあるが、踏みあとはしっかりしている。 

<博物館など>
穂高岳周辺の地質は原山智・山本明著『「槍・穂高」名峰誕生のミステリー』に詳しい。ぱっと見、前穂東壁は花崗岩ではなさそうなのだが果たして。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

2020年1月15日水曜日

明神岳2263m峰 西壁大洞穴左












西壁S字ルンゼのゴルジュに入ると右側にスラブ凹角がなかなかのスケールで広がっている。その上部を観察すると立派な洞穴が見える。この凹角から取り付いてあとは適当に登るというのが、西壁第二フェースの粋な冬壁スタイル。洞穴手前から右へ行っても草付きブッ差しクライミングが楽しいし、洞穴左を直上して左面(S字ルンゼ側)を登れば草付きと岩のミックス壁、洞穴左を直上後に右に入ると大ハングを持つ威圧的な岩場がある。いずれのルートも洞穴までは大体同じライン取りになると思う。上部の派生ラインを登りこみたくても出だしから2P目となる脆くて支点が取りにくい岩場が非常に嫌らしいので、「忘れたころ」に上部の派生ラインを登ろうという気分になる。

洞穴左の弱点を突いていった場合、小リッジをトラバースして草付きの窪みを辿る。そののち、灌木が疎らに生えた岩場を登り尾根へトップアウトする。洞穴以降は明神にしては比較的支点が取り易い。

下降の難しさも明神の魅力。S字ルンゼを下降するか、同ライン中に目星をつけた藪で懸垂するかの判断が肝要。加えてS字ルンゼは雪崩頻発ルンゼなので天候判断も重要となる。錫杖前衛フェースとは違った、登山している感を深く味わえるよき岩場なり。

<アプローチ>
S字ルンゼの入り口は樹林帯の何でもない所で非常にわかりにくい。初めての場合、遠目で眺めて取り付くとよいと思う。下降はS字ルンゼのコルまで行くか、同ルート下降。同ルート下降の場合ロープは60mでないと難しくなる。

<装備>
イボ数本、ピトン薄刃~ロストアローサイズ。カムはあまり有効でないが0.2~1.0は使える場所がある。潅木で支点を取るのでスリングは多目に。

<快適登攀可能季節>
12月~3月上旬くらいか。西面は南面、東面と比べると遅くまで楽しめそう。

<博物館など>
福地温泉で日本最古の化石が発見されている。年代は古生代オルドビス期~デボン紀。即ち5億年~3億6000年前である。残念ながら冬期登攀後は観察できない。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

2020年1月6日月曜日

滝谷 第二尾根P1フランケ








滝谷の第二尾根といえばP2周辺芝工大、早大、ジェードルルートなどが威圧的な雰囲気を持っていてメジャーである。P1フランケはそれに比べると傾斜が緩く短いので地味な印象は否めない。しかし、気象条件に恵まれない冬季は短時間でも登ることが可能という点で利用価値があるともいえる。

1P目出だしから岩が脆い凹角で結構手ごわい。支点が取りにくいのでベルグラが発達していない条件では注意が必要だ。少し広いバンドに出てから左の凹角に移り高度を稼いでいく。全体の傾斜は緩いが部分的に強傾斜の場所は緊張する。4Pで北山稜最上部へと抜ける。手で持てるホールドが乏しいのでフッキングを楽しみながら登りたい。

<アプローチ>
厳冬期は涸沢西尾根をアプローチする。3月~4月は雪の安定したときを狙って滝谷を遡行するとよい。条件次第では厳冬期も滝谷遡行から取り付ける可能性はあると思う。取り付きはB沢のコルからB沢を標高差150mくらい?下降したところ(ぼろいフィックスが垂れている)から10m程度登ってから右へトラバースしてクラック尾根を乗り越す。この右トラバースは岩が脆く悪いので注意が必要。さらに右へトラバースし第一尾根も過ぎてP1へ向かうルンゼに入る。ルンゼどん詰まり左の凹状から登攀スタートである。氷雪が発達している3月では、B沢下部のP1へ通じるルンゼ入り口から取り付くことができるようだ。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン各種

<快適登攀可能季節>
12月~4月。当然夏も登れると思うが、岩がぼろいので冬の方が快適だと思う。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。