2025年3月3日月曜日

スバリ岳西尾根P1フランケ




 スバリ岳の岩場は1950年代から細々と登られているが岩場の概念も曖昧で呼称が定まっていない。そんな中でも唯一名前と場所を同定できたのが、スバリ岳西尾根P1フランケである。山と渓谷の1960年代に発刊された号に「スバリ岳周辺の岩場」という企画があり、ちょろっとだけ記載がったのだ。
 スバリ岳西南岩稜の取りつきから西尾根方面へとトラバースすると幅広の岩場が西尾根までに広がる。これがP1フランケである。左側にルーフ上ハングがある壁の右から取りつく。出だしから微妙なフッキングと生命力皆無でやる気のない草付き、そして凍っていない砂利が嫌らしい。一段超えて少し傾斜が緩くなってから小ハング帯となる。ここは残置ピトンが2枚あり、スバリ岳周辺の岩場の記載とも合致するので間違いないだろう。かなり面白いクライミングで抜けるとリッジ上に出て広いビレイ点となる。あとは山頂まで容易な歩きとなり終了。スバリ岳西南岩稜よりも岩は固めで楽しめるだろう。実質1ピッチで終了するので西南岩稜と1日セットで登るのがちょうどいい。

<アプローチ>
屏風尾根をアプローチとして屛風の頭にベースを張るのが良い。スバリ岳山頂から100~150m程度南へ進んで下降できそうなルンゼが現れたらそれを降りて西尾根方向へトラバースする。マヤクボのコルから下降して大トラバースして取りつくことも可能。

<装備>
カム一式、ボールナッツの小さいの、ナッツ、トライカム、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
12月~3月 岩が脆いので寒い時期のほうがよい。しかし、ルンゼを下降するので雪は安定していてほしいので悩ましいところだ。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。

スバリ岳 西南岩稜











 スバリ岳小スバリ沢側の岩場は謎に満ちている。スバリ岳大スバリ沢側の岩場は中尾根と西尾根の岩場は屏風尾根の頭から全容が把握できる。翻って小スバリ沢はというと、ルンゼと尾根が方角を変えながら複雑に入り込んでいるため、どこに岩場があるのか、かろうじて見えている岩場が地図上のどこにあるのか理解することが難しい。そんなこんなで、小スバリ沢側の岩場を登ったという記録は具体的にどの辺を指しているのか明確に記されていない。下部の岩場となると、稜線から取りつくのも労力を要することから登られたという記録も見つけられない。遡行して取りつけば?と思うかもしれないが遡行は滝を秘めており難しく黒部湖を渡るという地理的な面倒さが障壁となる。

 積雪期における小スバリ沢の全容解明という任務を遂行すべくマヤクボのコルから小スバリ沢へ下降開始。前途洋々スキップ下降を始めたものの2450m付近で岩壁帯を分ける大滝が現れる。行くのか、行かないのか?自然はいつも残酷な判断を迫る。ま、ま、初探査だし上部の岩場の概念把握からだよね。2450m付近から西尾根までトラバースして岩場を探る。傾斜が最も強いのはスバリ岳山頂へと延びる西南岩稜の末端壁であった。西南岩稜の末端壁はぐるりと岩場となっており、ラインの自由度は割と高い。友人が登った大ジェードル左隣の浅い凹状からスタートすることにする。ポキポキ折れて使い物にならない藪まではプロテクションの効きが今一つで、ぼろい岩を慎重に抑えながら登る。凹状は右上しているが形登りにくいので左フェースへ乗り移る。このムーブは非常に面白い。左の傾斜がゆるそうな箇所へ逃げたが、結局傾斜が強いうえ時折崩壊する岩があるので慎重な登りを要求される。しかし、かたい部分でカムが良く効くので死の香りが無いのが絶妙である。クライミングの内容は濃い。ピナクルでビレイすると一旦傾斜が緩み60mをコンテで進む。4mくらいコーナーを登るとあとは山頂まで歩くだけ。

 実質クライミングは短いものの赤沢岳にある各岩場のルートよりも技術的には難しい。歩く距離も長いのでより多くの運動量とクライミング体操を求める人はスバリ岳方面もお勧め。

 <アプローチ>
屏風尾根をアプローチとして屛風の頭にベースを張るのが良い。スバリ岳山頂から100~150m程度南へ進んで下降できそうなルンゼが現れたらそれを降りて、岩場が見えたら西尾根方向へトラバースする。マヤクボのコルから下降して大トラバースして取りつくことも可能。1/25000地図上の場所としてはスバリ岳表記字のリと岳の東側にある岩場マーク付近となる。

<装備>
カム一式、ボールナッツの小さいの、ナッツ、トライカム、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
12月~3月 岩が脆いので寒い時期のほうがよい。しかし、ルンゼを下降するので雪は安定していてほしいので悩ましいところだ。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。