弥太蔵谷の地図を見ているといつも不思議な気分になる。流程が長く本流然としている瀬々薙谷の源頭は負釣山で標高は高くない。他方、瀬々薙谷と分かれた後の右俣は直ぐに3つの同水量の支流に分かれて本流という感じはない。次に本流候補であるのは分水嶺となっている境界尾根の最高峰を流れる沢だろう。朝日町、黒部市、白馬村の境界が決定していないので「境界尾根とはどこなのだ」という問題があるが、ここでは弥太蔵谷水系の水源である朝日町と黒部市の県境となる二等三角点朴ノ木~猪頭山~森石山を境界尾根ということにする。この境界尾根の最高峰は無名の1,397m峰である。このピークに突き上げる沢の流程は短く沢の名前もはっきりと解らない。境界が不明だったり、本流がはっきりしなかったりと不思議な地域である。何はともあれ高い所を登るのはいい運動になるのでこの450m左岸支流を登ることにする。
弥太蔵谷と分かれると谷の水量は明らかにこちらが少なく本流感はない。集水面積が小さいからであろう。訪れた日の前の週に宇奈月では7月観測史上最大の一時間雨量を記録した。この爪痕なのか増水跡と多くの土砂倒木が谷を埋めていた。猪頭山へ向かう支流を分けるまでは2つほど大きな滝が出てきたが上手いこと高巻くことができる。1,397mへ向かう沢に入ると登れる滝が連続するボーナスステージとなる。リズムよく登れる小滝から20mクラスのシャワークライミング滝まで出てきて頗る楽しい。谷が浸食されていて釜も有ったりするのがいい。この区間だけ駐車場から近くにあったら大盛況の沢となっているだろう。岩は概ね硬いので快適に登れるが落ちるとヤバい所もあるので慎重に。最高峰へ向かってもすんなりと帰れないので北側へ向かい尾根を乗越し弥太蔵谷へと戻る。下降した谷は途中大水量の湧水が合流して水温が低い沢であった。下降する上若狭谷へ向かうために弥太蔵谷を登って行く。750m地点では意外なゴルジュ滝が現れて右岸をクライミングした。分水嶺の境界尾根はブナの森で美しい。上若狭谷の上部では懸垂の連続となったが概ね容易な範囲であった。上若狭谷の方が増水の爪痕が大きく被害が大きいようであった。
450m左岸支流の左俣は楽しく登れる好渓である。ただ瀬々薙谷へと繋げるラインと比較したときにはやはり劣る。弥太蔵谷を深く楽しむ地元民向けの沢であろう。次は猪頭山を目指す支流を登ってみたいものだ。ところで、沢の上部でカワネズミを見かけた。彼はあの大雨をどのようにやり過ごしたのだろう。大雨で川虫やイワナが減って心配ではあるが、まずは無事の確認が取れてよかった。昨年に比べて魚影は随分減った気がするが土砂に埋まった沢に泳ぐイワナもいる。彼らの強かさが気候の変動にも対応してくれるように願ってやまない。
<アプローチ>
弥太蔵谷出合いから少し進んだ路肩に駐車して入渓。下山路をどこに取るか次第で車を二台で行った方がいい。筆者らは小川温泉へ下降したので一台そちらに回した。筆者らは弥太蔵谷上部の790m付近の左岸台地を造成して幕場とした。多少の雨ならば耐えられるが増水跡の範囲であった。大雨の後で地形が安定しない状態だったので快適な幕場については言及しがたい。下降した上若狭谷は上部は滝が連続して懸垂が多いが地形図で水線が示されている箇所からは容易となる。
<装備>
カム0.3~1.0、ピトン各種。足回りはラバーでもフェルトでもいいかも。泥壁草付きが多いのでハンマーはピックが長いほうが有利。
<快適登攀可能季節>
7月~10月 残雪、寒さ、害虫など各種事情を鑑み判断されたし
<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。
<温泉>
とちの湯:宇奈月温泉総湯は駐車場も無いし、露天風呂もない。山屋のみなさまはこちらへどうぞ。
<博物館など>
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。
うなづき友学館:黒部市立図書館の分館と歴史民俗資料館が併設している。何と言っても1/2愛本刎橋が見ものの博物館である。30年おきにかけ替える刎橋だが、当時のオーソドックスな橋脚がある木造橋の架け替え頻度ってどのくらいだったんだろうか。もっと深く橋の構造比較をしてくれればありがたいと思う。このほか、稚児舞や七夕といった地域の祭事展示も興味深い。
シーラカンス毛利武士郎記念館:晩年を富山で過ごした沈黙の彫刻家、毛利武士郎のアトリエを改装して作られたアートギャラリー。代表作である哭Mr.阿の誕生や工作機械を用いて作られた謎の金属造形が常設展示されている。
<グルメ>
よか楼:昨今話題の町中華的定食屋。コスパという卑しい概念を持ち出さなくても味で選べる良店。ジビエ料理も時折そろえる。