名山に名渓あり。目附谷は白山という山を深く味わうことのできる名渓である。もし、山が好きな友人に白山でお勧めの沢を教えてと言われたら目附谷から登る白山を挙げたい。それは目附谷が白山山塊を構成するほぼすべての岩体が現れて渓相が変化に富んでいること、白山山頂へ足を延ばすことが容易なこと、下降する加賀禅定道の道の高山植物が素晴らしいこと、これらが理由である。記録的な寡雪のシーズンに高山植物を愛でる旅として出立。
入渓して驚いたのは覚悟していたオロロが殆どいないことであった。残雪の心配よりもオロロの大群を気にしてたのでこれは僥倖だ。オロロの発生と残雪量はどのような関係があるのだろうか。快適に飛騨帯石灰質片麻岩のゴーロ川原歩きを楽しむ。白山にも飛騨帯は分布しており手取川右岸の各沢や荒谷は興味深い小粒沢である。石灰質片麻岩の量と質では雄谷が最大級の谷でゴルジュは見ごたえがある。片麻岩は英語でgneiss(ナイス)というので見かけたらフリークライミングの掛け声のように「ナイスです!」と声を掛け合おう。
取水堰堤の少し手前から手取層群の堆積岩に一変する。川原には嘘みたいにポップな模様の礫岩もあり気分が上がる。鳴谷を過ぎると紅滝が堂々とした姿を現す。面白いのは下部は砂岩泥岩の互層で脆そうだが、流水付近は固い砂岩になっている点である。容易に巻いて直ぐに二重滝である。これは一段目は登れても二段目は難しそうであるので軽く巻く。上流のカブト谷出合の泥岩でしばし化石探しに興じる。植物由来らしき化石は多数あったが足跡や貝殻といったキャッチーな品は探せなかった。
ゴリラ岩を過ぎると白山によく分布している流紋岩質の火山岩となる。白山の火山岩類に関しての調査文献が無いので謎火山岩(濃飛流紋岩とざっくり呼ばれている)と呼んでいるが、ゴリラ岩より少し上の岩は蛇谷上流域の岩と似ている。段々赤茶けてきて大畠谷のような雰囲気になってくるのがとても面白い。そして下部に丸い礫岩を取り込んでいるので、もしかしたら手取層の上に火山活動の溶岩が載っているのかも。源頭になると益々大畠谷の上部スラブに似た岩にってきてヌルヌル苔も発達してくる。確か殆どの滝をロープレスで直登したと思う。最後の標高差50mくらいまで水が途切れないので藪漕ぎは殆どなく七倉山へ登れた。
期待通りの花盛りでマイ・フェイバリット高山植物であるハクサンコザクラを筆頭にどれもこれも素晴らしい。白山御前峰まで足を延ばしお池巡りを楽しんだ。下山路とした禅定道では四塚山のチングルマ、ハクサンコザクラ、コバイケイソウの花畑を堪能し、天池ではキンコウカとニッコウキスゲが満開で思わず破顔する。口長倉から下部のブナ林は素晴らしく終始上機嫌な下山であった。
花の時期に目附谷を快適に登ることができるという奇跡に温暖化も悪くないと思ってしまった。沢登りはもちろん化石採集、お花めぐり、ピークハントと完璧な山登りができるのが目附谷である。遡行の難易度は高くないので門戸は広い。この行程を一泊二日で盛り込むこともできるが勿体ないだろう。白山という山を味わうには心に余裕を持った二泊三日で遊びたい。
<アプローチ>
いろいろアプローチは取れるが筆者らは加賀禅定道を下降することにしたので、檜倉手前の林道に駐車し少し登山道を歩いてから深谷の下流沢から下降して取りついた。目附谷内はそこそこ幕営できるところはあるが定番決定的な場所には欠けると思う。ゴリラ岩の少し手前の大体標高1450m付近の川原に泊ったが中々快適であった。
<装備>
沢慣れしていたらロープの出番はないかもしれない。河原歩きは面倒ではあるが上部がヌメルのでフェルトの方がいいかも。
<快適登攀可能季節>
8月~10月。オロロが酷い地域なので注意。
0 件のコメント:
コメントを投稿