富山から車で3時間の鹿島槍は微妙な距離間である。標高の高い山の壁である荒沢奥壁、北壁ともに3月が最適期となる。この時期ならば、地元の剱岳や近場の新穂高周辺にも課題がまだまだ有ってどうしてもそちらに足が向いてしまう。
そのような理由で訪れるのが遅れてしまったが、鹿島槍はやはり素晴らしい場所だった。広大なカクネ里から急激に詰めあがる壁は、北米の辺境といった雰囲気である。そしてルンゼには氷が張り、尾根の側壁は岩壁となって薙ぎ落ち、尾根上にはキノコ雪を連ねる。まことに美しい。
さて、3月の主稜は殆どのパーティーが下部は稜を登らず左側の氷を登っている。漢ならば真っ向勝負。と忠実に尾根を辿ることを試みた。強傾斜の壁と不安定な雪を4P堪能し、あと少しで尾根に乗れる所で、絶望的なキノコに遮られ敗退。どうやら雪の少ない厳冬期は忠実に尾根を辿れるが、3月では相当に難しいか無理のようだ。
ルートを検証するために後日、ルンゼから稜にあがった。下部は氷瀑を快適に登り、雪面を登るルートで、「稜」という名には相応しくないと思う。上部の尾根は少し藪っぽく難しくは無い。ルンゼから登る場合の主稜はとにかく快適。雪質次第ではスピーディーな登攀が可能だ。登攀日は大谷原~主稜登攀~北俣本谷下山の行程を13時間で終了した。休日が1日でも一本登って温泉に浸かって帰ってくることが可能だ。剱岳でも穂高でも後立山でも殆どの壁は状態次第で日帰りで登ることが出来る。仕事やら家庭やら言い訳するのは辞めて、自身が一週間どれだけ山登りの為に時間を割いたか一度考えてみることを勧める。
問題は黒部川沿いに有る岩場である。ビンガ、ガビン、剣沢大滝周辺、大屏風岩、丸山東壁、奥鐘山、坊主山北壁など課題は豊富だ。丸東はアプローチを含めて3日間で登れるだろうが、その他の課題を登る方法は模索せねばならない。
<アプローチ>
大谷原駐車場から林道を歩く。荒沢を少し登り傾斜の緩いところから天狗尾根に上がる。天狗尾根はブナの綺麗な尾根で、登り下りともに多少の緊張感がある。天狗の鼻は風当たりが強い場所。壁の構成が複雑なので、前日に偵察をしておいた方が良さそう。一泊二日で登りに行くと大概残業になると思う。日帰りで登りに行くならば北俣本谷を降りれば早いし美しい。大谷原を12時くらいに出ればよさそう。
大谷原駐車場まで富山大学から国道8号~148号で3時間と少々。
<装備>
小さめのカム、ピトン各種、トライカム少々。スノーバーも有ったら使うかも。左の氷を登るならばスクリュー4本くらい。
<快適登攀可能季節>
1月~3月 一般的には3月ではないか。
<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。
塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。
<温泉>
上原の湯:410円で石鹸&シャンプーが付いている温泉。
薬師の湯:温泉博物館と酒の博物館が近くにある。酒の博物館は2016年3月現在休館中だった。
みみずくの湯:白馬にある日本有数の強アルカリ泉。入って損は無し。
<グルメ>
昭和軒:大町駅近くにあるカツ丼の店。大盛りはプラス100円で凄い量が食べられる。