2017年7月26日水曜日

笹生川 中ノ水谷~東ノ水谷









笹生川の中ノ水谷はお楽しみ渓としてお勧めだ。地質図では付加体となっているが、実際は流紋岩~デイサイト質の硬い岩で谷が構成されており、谷中では美しい景観が楽しめる。水量の多い下部は積極的に泳ぎを味わいたい。中ノ水谷に入ればサワグルミ、トチ、ブナの綺麗な森の中を水が柔らかく撫愛する。ここは太公望には堪らない場所である。750m付近からは滝が2、3続くが巻きも登りも容易だ。屏風山へどの沢を詰めるかは遡行者の好みが出るところだ。筆者らは840m付近から北東へ続く沢を詰めた。この沢は硬い岩盤の連瀑とスラブが続き登り応えがあった。慣れた人間同士ならば確保の必要は感じないだろうが、沢慣れしていない人が居る場合は注意した方が良さそうである。藪漕ぎは多少あるものの、他の詰め上がる沢と比べれば少ないと思う。しかし、多種多様な樹木に覆われているので手強い藪だ。藪を踏みつけ、掻き分け進めば奥美濃の名山、かどうかは知らない屏風山の山頂に到着する。三角点の周囲は綺麗に刈り払われている。東ノ水谷は下降しやすい沢である。中盤で土砂崩れのため、流れが突然伏流している箇所が印象深い。中ノ水谷と合流してからもジャブジャブと同ルート下降が早い。

泳ぎも小滝の登攀も釣りも楽しみながら、登山道のない山頂に行ける良い沢である。遡行そのものは難しくないので、沢経験が少ない人同士でも充実するラインである。筆者らが遡行した際に幕営地では蛍が舞い、沢旅の風情を一段と感じた。せこせこせずに、山そのものを味わうには最適な場所である。

<アプローチ>
最安値を狙うならば国道359号から国道157号で勝山経由に行く。この場合、富山からおよそ3時間。国道41号~国道360号で高山まで行き、高速を利用して白鳥まで。油坂峠から入山すると早い。この場合2時間と少々。車は入渓点付近の路肩に駐車する。

<装備>
念のためロープ。筆者らは下降も含めてロープは使用しなかった。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。イワナのシーズンも良いが、紅葉を楽しむのも良さそう。

<博物館など>
白山平泉寺:白山信仰の越前側の馬場である。鎌倉~室町時代にかけては一大宗教都市であったそうだ。美濃の長滝寺、加賀の白山比咩神社も含めて訪れたい場所である。杉の並木と苔が美しい。


勝山城博物館:勝山城と越前大仏は異様なデカさで周囲の景観に全くなじんでいない。どちらも相互タクシーの創業者である多田清氏が私財を投じて建てらたそうだ。甲冑などの武具や中国の刺繍が展示されているが、うーん。有り体に述べると外観負けした博物館である。

白山恐竜パーク白峰:福井の恐竜館より鄙びていて風情がある。展示は普通。公園が併設されていて子供は楽しい。川の対岸に手取層の化石帯が露出しており観察可能。博物館のイベントで採集もしている。

2017年7月20日木曜日

黒瀬谷











黒瀬谷は激シャワーに人工登攀にフリークライミングとゴルジュの醍醐味が濃縮されている。その突破はどれも歯ごたえは有るが、危険度は低めでエスケープも容易な事から総合的に観て入門的なゴルジュといえる。残念ながら筆者らは一部で残置を利用した人工登攀で抜けた。水量が少ないタイミングならば、水線フリー突破の可能性も感じた。後半には滝横でピリリとしたフリークライミングも楽しめる。ゴルジュの終了点は古びた堰堤が目印だ。下劣な落ちという意見もあるかもしれないが、個人的には苔むした趣の有る良い堰堤だと思う。里山には里山の姿があってよい。

ゴルジュだ、大滝だ、水線フリー突破だ。などといきり立った文言を書き連ねていると、沢登りがいかにもワイルドなガテン系スポーツのように思われるかもしれない。

沢登りの良さは四季折々の花の香りを楽しみ、日差しの移りを感じ、木々の輝きとそれに宿る野鳥の声にひととき住み居る点にある。風土と花鳥風月を慈しむ風雅な遊びなのだ。自然の中での心の挙動を肉体を持って体現するのが沢登りだ。一方、言葉を持って表現するのが俳句や短歌である。表現の枝葉は違うが、感じる根は同じといえる。即ち本質から言って沢登りは純文学系行為といえる。仲間との遡行は歌会や句会を催すようなものだ。

楽しき歌会を終えて、風流人気取りで商店で買い物をしながら談笑し風呂へ向かう。脱衣場でズボンのファスナーを下ろそうとしたら既に全開であった。このときの下着は両内太もものあたりが磨耗によりズタボロになっていて通気性が非常に良いタイプだったので、数百歩かに一回は愚息がチラついていた事が予想される。風流人危機一髪である。「襤褸を着てても心は束帯」にも限度があるので、新たな下着の購入を決意した。沢登りは下着の更新時期まで教えてくれる素晴らしい遊びなのだ。

<アプローチ>
国道169号の白川大橋を渡る手前に駐車する。白川大橋を渡り、左に作業道が続いているのでそれを利用して黒瀬谷出合いまで歩く。堰堤が現れたらゴルジュ帯は終了である。最後まで詰め上がらないのであれば、左岸斜面を登るとすぐに入渓した作業道の続きに合流する。これを戻ればすぐに車に戻ることが可能。
富山からは大阪周り、名古屋周りどちらも遠い。紀伊自動車道が出来て名古屋周りのほうが早いかもしれない。富山からおよそ6時間位だったかしら。帰りの時間は四日市と一宮ジャンクションの渋滞が予想されるので、北陸道を利用するほうが良さそう。

<装備>
カム一式、ピトン各種、ナッツ少々。クライミングシューズは無くても登れる。

<快適登攀可能季節>
5月~10月。この土地の季節勘がないので良く知らないけど。

<温泉>
きなりの湯:下北山スポーツ公園にある温泉。入湯料600円。広い休憩所を備え食堂も併設しており賑わっている。

<食事・買出し>
ヤマザキショップとJAショップがある。生鮮食品もここで買出し可能。どちらも9:00~19:00までの営業時間なので残業する場合は注意である。JAショップ横にある花川という食堂も美味しい。

深瀬大滝






池原は沢屋にとって廻り目平のようなものだ。そこかしこに日帰りで楽しい大滝とゴルジュがあって、どれも入下山のアプローチは楽勝。温泉は近くに有るし、買出しも容易なので、山登りというよりフリークライミングをしている感覚に近い。

国道からアプローチ10分の深瀬大滝もその筆頭である。しかしながらその登攀はとても面白い。水量にもよるが、1Pから積極的なシャワーフリークライミングを味わえる、上部は水線沿いを抜けるもよし、右岸のクラックを楽しむのもよしといった所である。全般に支点の効きは良好でラインさえ選べば登攀自体もさほどシビアではない。到着してからの軽く一本、帰る日の一本とライトな楽しみ方が可能な大滝だ。

<アプローチ>
国道169号の深瀬トンネル手前に駐車し即入渓。あっという間に大滝が現れる。大滝の上も美しい沢なので、詰め上がるのも面白いと思う。
富山からは大阪周り、名古屋周りどちらも遠い。紀伊自動車道が出来て名古屋周りのほうが早いかもしれない。富山からおよそ6時間位だったかしら。帰りの時間は四日市と一宮ジャンクションの渋滞が予想されるので、北陸道を利用するほうが良さそう。

<装備>
カム一式半(キャメ#0.4-1が二つあると心強い)、ピトン各種、ナッツ少々。クライミングシューズで登ると良い。

<快適登攀可能季節>
4月~11月。この土地の季節勘がないので良く知らないけど。

<温泉>
きなりの湯:下北山スポーツ公園にある温泉。入湯料600円。広い休憩所を備え食堂も併設しており賑わっている。

<食事・買出し>
ヤマザキショップとJAショップがある。生鮮食品もここで買出し可能。どちらも9:00~19:00までの営業時間なので残業する場合は注意である。JAショップ横にある花川という食堂も美味しい。

2017年7月19日水曜日

備後川支流 大谷











備後川大谷ほど、沢登りの魅力が短く詰まっている谷を他に知らない。序盤では泳ぎを楽しみながらシャワークライミングを満喫し、左俣へ入れば豪快な大滝と連瀑に圧倒される。この連瀑は殆どが快適に登る事が出来るのが嬉しい。最後には美しいナメ床と釜を持った美瀑が柔らかに迎えてくれる。下山は藪漕ぎは殆ど無いまま作業道へ抜ける。ここから林道入り口への下山は驚くほど早くて楽だ。これほど安易で楽しい沢登りを沢経験の初期で覚えてしまっては、忍耐を要求される北陸の沢へは入れなくなってしまうだろう。富山周辺の沢を登りこんでから訪れる事を推奨する。

<アプローチ>
国道425号から備後川林道へ。車で大谷出合いまで問題なく入れる。美味しいところだけ楽しむならば、標高720m付近で遡行を切り上げ、884.9m三角点から南西に下降する仕事道を利用して下山する。足並みが揃っていれば、朝に出れば昼過ぎに十分下山可能だ。
富山からは大阪周り、名古屋周りどちらも遠い。紀伊自動車道が出来て名古屋周りのほうが早いかもしれない。富山からおよそ6時間位だったかしら。

<装備>
念のためカムとピトン少々。それなりの装備を持って行けば流芯を攻める事は可能と考えられる。

<快適登攀可能季節>
5月~10月。この土地の季節勘がないので良く知らないけど。

<温泉>
きなりの湯:下北山スポーツ公園にある温泉。入湯料600円。広い休憩所を備え食堂も併設しており賑わっている。

<食事・買出し>
ヤマザキショップとJAショップがある。生鮮食品もここで買出し可能。どちらも9:00~19:00までの営業時間なので残業する場合は注意である。JAショップ横にある花川という食堂も美味しい。


2017年7月12日水曜日

荒島谷川 鳴ザコ谷









鳴ザコ谷は荒島谷川の標高660mから派生する谷で、明るく開放的な沢で小滝が連続する。土砂が溜まりがちな北陸の中級山岳では珍しい沢である。奥越の赤木沢と称したら少し褒め過ぎだろうか。出合いは登攀が非常に難しいであろうのゴルジュ滝となっているので巻いた。巻き道は割としっかりしているので問題ない。あとは水を浴びながら楽しい登りである。一箇所10m程度の滝の左岸ルンゼを登る所がやや緊張するが、これもよきアクセントである。山頂への稜線では笹薮の熱烈な歓迎を受ける。この花道を逆水平ハイタッチの連続で標高200m程掻き分ければ、荒島岳山頂に飛び出す。やはり沢登りのフィナーレはこの高村光太郎の道程的な藪漕ぎが有ってこそといえる。Yabu Cogito ergo sum(藪漕ぐゆえ我有り)といっても過言ではない。

さて、荒島岳といえば深田久弥選定の百名山である。百名山といえば猫も杓子も目指す大人気の山ばかり。山頂には婦女子達が群れを成していることが予想される。これはチャンスである。颯爽と登山道外から登攀具を身に纏い登場すれば、その逞しい姿に女子はイチコロに違いない。三角点へは我々へ群がる女子を掻き分ける所謂「女子漕ぎ」となるのは必定である。来るべき時に備え一張羅を着用し遡行した。といっても、ワークマンからユニクロという軽微変更しか為し得ない悲しい性である。

しかし、この日は異常に熱かった。笹藪漕ぎで山頂に着く前には汗だくとなっていた。これでは一張羅も台無しである。ドブ川の如き悪臭を漂わせてしまっては、女子漕ぎどころか、モーセが紅海を二つに割ったように人々は割れるように避けていくだろう。私は着替えを持ってこなかったことを心から悔やんだ。一張羅は着替えで良かったのだ。何ならスーツと革靴でも持って遡行すればよかった。己の愚を恥じ呪った。ぐちぐちしていても仕方ないので腹をくくり山頂へ向かう。しかし、山頂には婦女子どころか人っ子一人見当たらない。時期が悪かったのであろうか。複雑な気分であるが、これはこれで静かな山頂を満喫した。いや、百名山における沢登りのフィナーレは高村光太郎の道程的な女子漕ぎが有ってこそ。今回は外してしまったが、来るべき時に備え、アークテリクスの服でも購入し、温存しようかと思案した次第である。

<アプローチ>
最安値を狙うならば国道8号から国道157号で勝山経由に行く。この場合、富山からおよそ3時間。国道41号~国道360号で高山まで行き、高速を利用して白鳥まで。油坂峠から入山すると早い。この場合2時間と少し。荒島谷川には地図に載っていない林道があるのでこれを歩いて入渓。下山は登山道を利用し越前下山へ。この登山道は地形図には記載が無いので注意が必要。なお、まぼろしの大垂から荒島岳への登山道は廃道となっている。

<装備>
念のためピトンが少しあればよさそう。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。残雪とオロロのシーズンはお勧めしない。

<温泉>
九頭竜温泉平成の湯:比較的新しい温泉施設。入湯600円也。レストランも併設されている。

<博物館など>
白山恐竜パーク白峰:福井の恐竜館より鄙びていて風情がある。展示は普通。公園が併設されていて子供は楽しい。川の対岸に手取層の化石帯が露出しており観察可能。博物館のイベントで採集もしているようだ。

2017年7月11日火曜日

石徹白川 俵谷











 俵谷は白山中居神社がある石徹白集落から離れており、石徹白川支流のメイン域からは離れた存在である。ただでさえ、目立たないこの流域の端だが遡行内容は結構いけてる。
入渓は横に林道があるので、面倒な堰堤の巻きはカットする事が可能である。なお、この林道は車高の高い四駆であれば通行可能と考えられる。遡行そのものは770m付近から開始する事となる。標高870mを左俣へ入ると岩質が変わり、いきなり遡行が面白くなる。発達した赤い岩盤にスラブ状小滝を連ねる。少しだけ渋い登りもあり、なかなか楽しい。20mと30m程の滝2つは巻くが、良い藪があるのでそれほど悪くは無い。筆者らが遡行した際には適当な場所で打ち切り同ルート下降とした。1609.2m三角点を踏んで三面谷を下降するのが自然で美しいと思う。

<アプローチ>
富山からだと高鷲インターで降りて石徹白へ向う。この場合東海北陸道利用で富山市内からおよそ2時間。高山まで国道41号線と360号線を利用して、高山から高速を利用する折衷案であれば、そこそこ安くて早い。2時間半くらいだと思う。同ルート下降の場合は適宜懸垂下降する。足並みの揃ったパーティーであれば殆どクライムダウンで降りられる。

<装備>
ロープと念のためピトンとカム少々。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。秋の紅葉の時期が最適だと思う。イワナは乏しい。この谷で何故かアマゴが生息していた。以前に放流されたものだろうか。

<温泉>
満天の湯:ウィングヒルズに併設している温泉施設。一番近いが入湯料が800円とお高め。
湯の平温泉:こちらは高鷲町の中にある綺麗な温泉施設。600円也。

<博物館など>
日本土鈴館:土鈴(どれい)とは土で出来た鈴である。優しい音色と暖かい感触が売りのアイテムだが、有っても無くても生活に支障は無い。そんな代物をとことん集めた白鳥にある博物館である。全国各地から集めた量は圧倒的だ。土鈴だけではなく河童や観光提灯、郷土玩具を展示してるが時おりエロもコソっと。その辺りとってもチャーミング。

石徹白の大杉:立ち枯れながら、なお屹立する姿に涙腺が緩む。登山の終わりに必ず訪れてほしい。