2017年7月12日水曜日

荒島谷川 鳴ザコ谷









鳴ザコ谷は荒島谷川の標高660mから派生する谷で、明るく開放的な沢で小滝が連続する。土砂が溜まりがちな北陸の中級山岳では珍しい沢である。奥越の赤木沢と称したら少し褒め過ぎだろうか。出合いは登攀が非常に難しいであろうのゴルジュ滝となっているので巻いた。巻き道は割としっかりしているので問題ない。あとは水を浴びながら楽しい登りである。一箇所10m程度の滝の左岸ルンゼを登る所がやや緊張するが、これもよきアクセントである。山頂への稜線では笹薮の熱烈な歓迎を受ける。この花道を逆水平ハイタッチの連続で標高200m程掻き分ければ、荒島岳山頂に飛び出す。やはり沢登りのフィナーレはこの高村光太郎の道程的な藪漕ぎが有ってこそといえる。Yabu Cogito ergo sum(藪漕ぐゆえ我有り)といっても過言ではない。

さて、荒島岳といえば深田久弥選定の百名山である。百名山といえば猫も杓子も目指す大人気の山ばかり。山頂には婦女子達が群れを成していることが予想される。これはチャンスである。颯爽と登山道外から登攀具を身に纏い登場すれば、その逞しい姿に女子はイチコロに違いない。三角点へは我々へ群がる女子を掻き分ける所謂「女子漕ぎ」となるのは必定である。来るべき時に備え一張羅を着用し遡行した。といっても、ワークマンからユニクロという軽微変更しか為し得ない悲しい性である。

しかし、この日は異常に熱かった。笹藪漕ぎで山頂に着く前には汗だくとなっていた。これでは一張羅も台無しである。ドブ川の如き悪臭を漂わせてしまっては、女子漕ぎどころか、モーセが紅海を二つに割ったように人々は割れるように避けていくだろう。私は着替えを持ってこなかったことを心から悔やんだ。一張羅は着替えで良かったのだ。何ならスーツと革靴でも持って遡行すればよかった。己の愚を恥じ呪った。ぐちぐちしていても仕方ないので腹をくくり山頂へ向かう。しかし、山頂には婦女子どころか人っ子一人見当たらない。時期が悪かったのであろうか。複雑な気分であるが、これはこれで静かな山頂を満喫した。いや、百名山における沢登りのフィナーレは高村光太郎の道程的な女子漕ぎが有ってこそ。今回は外してしまったが、来るべき時に備え、アークテリクスの服でも購入し、温存しようかと思案した次第である。

<アプローチ>
最安値を狙うならば国道8号から国道157号で勝山経由に行く。この場合、富山からおよそ3時間。国道41号~国道360号で高山まで行き、高速を利用して白鳥まで。油坂峠から入山すると早い。この場合2時間と少し。荒島谷川には地図に載っていない林道があるのでこれを歩いて入渓。下山は登山道を利用し越前下山へ。この登山道は地形図には記載が無いので注意が必要。なお、まぼろしの大垂から荒島岳への登山道は廃道となっている。

<装備>
念のためピトンが少しあればよさそう。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。残雪とオロロのシーズンはお勧めしない。

<温泉>
九頭竜温泉平成の湯:比較的新しい温泉施設。入湯600円也。レストランも併設されている。

<博物館など>
白山恐竜パーク白峰:福井の恐竜館より鄙びていて風情がある。展示は普通。公園が併設されていて子供は楽しい。川の対岸に手取層の化石帯が露出しており観察可能。博物館のイベントで採集もしているようだ。

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