2017年10月2日月曜日

小芦倉谷










大は小を兼ねるという金言がある。幼少の頃は「うんこをする時にはおしっこも出る」が転じて生じた「おしっこをする際にもうんこをする時のように座ってすれば便器を汚さない」という意の教育訓かと思っていた。登山を始めて「最初にザックを購入するならマカルー80Lを選択すればよし」という真意を知り目から鱗がぼとぼと落ちた思い出がある。

先の金言を墨守適用し、大芦倉谷に行けば、小芦倉谷に行く必要は無い。とは言えないのが人生の妙といえる。この両谷は隣接するものの全く異なった味わいがあるのだ。

庄川との出合いは暗いゴルジュ地形から始まる。小さな小滝があるものの問題にはならない。長い流程のためか水量は多めである。標高470m付近には40mはあるだろう直瀑大滝が轟音とともに落ちている。この滝は左岸から巻いたが、泥と脆い岩に手を焼くことになるだろう。570m付近で谷は急激に狭まりゴルジュの抜け口には捩れ滝が待ち構えている。遡行時は水量が多く水芯突破が出来ずに、右岸側壁を人工交じりで登った。ここの上部は岩が猛烈に脆いので硬い表面が露出するまで丹念に岩を剥がさねばならなかった。このゴルジュ帯と大滝の巻きは相当に危ないので気合が必要なところだ。
778mまでは広い川原を歩く。ここまでが花崗岩地帯で土砂の堆積が激しい地帯だ。一本南側の支流である釿谷と似通った岩である。これより上部は熊野川流域のような固めの岩質となり森林も発達してくる。落ち込みには岩魚も数多く泳ぐようになり、穏やかな心持にさせてくれる。詰め上がるまで遡行内容は凡庸だが、下部とのギャップが面白いところだ。利賀村最高峰である三ヶ辻山と人形山を往復すれば充実するだろう。

大芦倉谷の安定した岩と異なる渓質は大変興味深い。同じ流域の沢を一つずつ調べる事でその地域の自然が深く理解できる。大きな河川では右岸と左岸に分けて調査すると何らかの相関性が推し量られる事も多い。なお、同山域における他の沢では木滝谷、野ノ俣が特に遡行が楽しい沢だ。纏めると「うんこにはうんこの、おしっこにはおしっこの楽しみがある」のである。どうもお粗末。

<アプローチ>
一泊二日では人形山登山道下山になるだろう。車2台とするか、自転車を準備すると良い。二泊三日の日程ならば、大芦倉谷を下降するのも興味深い。

国道156号は九十九折で時間が掛かる。城端から国道304号線、あるいは五箇山ICまで高速利用がお勧め。人形山登山道までの道はダートもあり車高の低い車は注意。小芦倉谷入り口にある発電所施設前に駐車する。ダムの放水時には庄川は濁流と化すため渡る事はできない。早朝であれば大方渡れるはずである。

<装備>
カム#1-3を良く使う。ピトン少々。大滝の巻きとゴルジュ帯以外でギアの出番はないと思う。

<快適登攀可能季節>
9月上旬~10月中旬。紅葉の時期に行きたい。梅雨明け直後だと残雪があるし、真夏ではオロロに発狂すると思う。

<温泉>
くろば温泉:国道横にある温泉。立地が良くいつも混雑している。600円也
五箇山荘:国民宿舎のこちらは静かで綺麗な温泉。500円也。

<グルメ>
高千代という猟師の店が有る。熊、猪、鹿は当然。なんとハクビシンも味わえる。
春には山菜、秋にはきのこと折々の味を楽しめる。お勧め。

<博物館など>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していた。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。

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