山は低いほうが風情がある。動植物は豊富であり、地域ごとの風土も色濃く反映されるため、豊かさを深く感じ入るのである。筆者が全国各地の愛すべき里山を沢登りで登頂する、この営為をライフワークとすると勃然発起したのは年の頃24、こぬか雨の木曜日であった。ような、なかったような。
岩籠山は敦賀三山の一つで関西圏のハイカーにはとても人気の山だ。花崗岩の山であり、山頂付近には小さな山には珍しくボルダーが点在している。適当に登るボルダリングも気分が良いし、インディアン平原と称される台地からの展望も実に良い感じである。西面を流れる口無谷も多くの人に親しまれているようだ。フィックスロープが垂れていたり、炭焼き跡があったりして人臭いが、これもこの山が愛されている証左なので嬉しい。なんて書くと大目玉を喰らいそうだが、里山は「里」なので人臭いほうが価値があるのではないかと最近マジで考えている。なんか、ね、山は自然はあるがままが最高で有るべきって言うのも狭量な感じがするじゃん。そもそも、人間も自然だし。不法投棄とかはいかがなものかと思うけど、その山を知ろうとする人が多いほうが愛されている感じがあっていいけどね。登山者全員がフランス料理のコースを食べるテーブルマナーを覚えないといけない、ドレスコード有りですって規制するのも堅苦しいし、そんな主張をする人だって家でテレビ見ながらお茶漬けをズルズル食べるのも美味しいって感じるっしょ。まあ、時代と山に即した節度を登山者が意識することが重要てことですな。王道は中庸ってね、言うしね。
さて、口無谷は敦賀の沢の例に漏れず順層のホールド豊富な緩傾斜滝が多くあり楽しい。20m~30mクラスの滝が3つほど有るので、それなりのギアを準備すればクライミングも堪能できる。これらすべて巻く場合も容易だ。この沢は全体を通して不確定要素が少なく、沢慣れしていない人には最適な沢と言える。沢を下降路とする点も初級者にはいい経験となるはずだ。先述の通り眺めは抜群の山頂である。晴れた休日の山頂は大賑わいだ。妙齢の男女6人組が盛大な食事会を開催しており甘辛い鍋の良い匂いがした。その裏には独身のぽっちゃりした女性へ早よ嫁に行けという、おっちゃんとおばちゃんがいた。言われている女性は明るい人で、おっちゃんから魚肉ソーセージを貰って喜んでいた。その横には仲睦ましいカップルがいた。準備したお弁当をすこし遠慮がちに二人で食べていた。離れて写真を撮るお兄さんは、シャッターを押してもう一度景色をゆったりと眺めていた。みんな楽しそうだった。僕も楽しかった。賑わう里山はそれだけで微笑ましく、嬉しいのだ。
<アプローチ>
国道8号で敦賀まで行くのは信号が多くつらいものがある。高速利用ならば敦賀インターまでおよそ3時間、そこから20分程度で黒河川林道へ入る。林道は工事中のところもあり、どこまで入ることができるかは車種による。適当な場所に駐車して入渓。下降は適当な沢を降りる。筆者らは720.2m三角点(夕暮山)から少し西へ歩いて南側の沢へ下降した。特に悪い場所は無く快適におりた。
<装備>
沢慣れしていない人が居る場合は念のためロープ
<快適登攀可能季節>
寒くないとき。雪が降っていないとき。
<快適登攀可能季節>
寒くないとき。雪が降っていないとき。
<博物館など>
若狭三方縄文博物館:建物がモダンな設計である。そのため、全国各地にある縄文系博物館にありがちな寂れた感は全く無いのでそれだけで嬉しい。また、寂れた博物館に有りがちな「はい、並べました」的な展示では無い。美しくて解りやすくて楽しいのである。最近の縄文ブームで訪れる人が増えるかもしれない注目の博物館である。
気比の松原:スケールが有るわけではないが日本三大松原である。芭蕉翁も観た。虚子も観た。これだけで十分見物の理由になる。なお、あと二つは三保の松原と虹の松原となっている。
敦賀市博物館:旧大和田銀行の建物を利用した趣の有る外観と内装。港湾町として発達した敦賀の歴史を学べる。最大の見せ場は4等フレネルレンズの実物品が2点も展示されている所。精緻で奇妙なレンズが遠く海を照らすロマン。
柴田家庭園:有力農家であった柴田邸に造られた庭園。堀があるのだが工事中で水は無く今一つであった。近くで庭園を楽しむならば西福寺の方がよいだろう。
敦賀原子力館:門ヶ崎の直ぐ近くには高速増殖炉もんじゅがある。原発の利用は賛否が有るだろうが、その原理と工学的な機構は興味深い。冷媒にナトリウムやカリウムを使用する合理的で大胆な発想に感心した。漏れちゃったけど。
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