2018年8月7日火曜日

木曽川支流 荻原沢 幕岩











山登りを長い間やっていると、「いいのあるよ」という麻薬密売人のような甘い言葉をかけてくれる仲間が多くなる。この言葉は何よりの福音であり、有り難いのだが、深刻な山登りジャンキーの筆者はその言葉を聴くと、たちまち垂涎白眼となり正気を逸することになるのである。

中央アルプスにある荻原沢は沢登りとしては知名度は高くないと思う。筆者も知らなかった。聞けば、その上流には幕岩、屏風岩、烏帽子岩などなど花崗岩の岩壁がずらりと立ち並んでいるという。標高も高いうえ北向きに岩壁が広がっていれば冬期登攀に良いのではないか?偵察がてら行ってみっか。という眉に唾塗ったくった、甘い気持ちで臨んだが、予想を超える岩壁群にぶったまげた。

幕岩はこの沢の岩壁群のなかで最も下流に位置する幅広い岩壁である。左には水量の少ない二本の大滝が水を落とし、右側にはスラブ状岩壁が広がっている。スラブ状岩壁は硬い一枚岩で節理の発達はあまりに乏しく、ボルト無しでの登攀は相当なソウルが要求される。この壁での白眉は最大の高距を誇る中央ルンゼ(仮称)である。水が流れているので敢えてジャンル分けするのであれば大滝登攀に該当するのだろう。一見すると優しそうに見えるのがこの滝の罠で、緩傾斜帯はスラブになっているので手がつけられない。クラックを求めれば脆い部分が多くて心もとない。一段上がった先に支点が取れるのかの確約は無い。ノンボルト、フリークライミングで登る事ができたが、弱点を突くライン取りは非常に複雑で、けっこう悪い。6P程度で上部スラブ帯まで抜けられるだろう。南向きで日当たり良好だが標高は高いので条件次第では冬期には氷瀑となる可能性も秘めている。

しかし、幕岩も含めこの地の岩壁は節理に乏しい。例えるならば下ノ黒ビンガに似た岩壁である。上部壁の冬は厳しいかな。






<アプローチ>
東野集落近く林道のカーブ地点に駐車し荻原沢を遡行する。遡行は下部に美しいスラブ滝や興味深いゴルジュがあるので結構面白い。上部は一転してガレ沢となるので幕営地は限られる。幕岩近くでは水が伏流するので注意したい。遡行終了後は独標から北東側のコルまで降りて沢から滑川へ下降すると早い。この場合車は二台必要となる。富山市からは安房トンネルから木祖方面へ。国道19号線に合流後、敬神の滝小屋前ゲートに駐車。あるいは、高山から国道361号線を利用して国道19号。後者は有料道路区間が無いのでお買い得。

<装備>
カム1.5~2セット、ナッツ少々、トライカム少々、ピトン厚めのもの多め、真剣に開拓するのであればボルトキットが必要だろう。ヌメリが酷いのでタビで登った。乾いていればクライミングシューズが快適だろう。なお、荻原沢も花崗岩の沢だがヌメリが強いのでフェルトがお勧め。

<快適登攀可能季節>
7月~10月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
妻籠宿:中仙道の宿場町を保存して観光地化してある。いかにもな観光地。おばちゃんの解説はさながら噺家であり職人技である。内容は非常に興味深い。そして歴史資料館も秀逸である。斜に構えて行かないのは損。

義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

寝覚ノ床:木曽川の流れと方状節理が生み出した景勝地。一見の価値あり。裏寝覚め~寝覚めまではボルダリングも可能。お勧めの課題は一斗の缶。

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