夏の黒部川上流はバラエティに富んだ朗らかな登山計画を組める山域である。縦走、沢登り、岩登り、釣り。どれも明るくて爽やかで壮大なスケールが魅力だ。その岩登りパートの重要な位置を占めるのが上ノ黒ビンガである。ハングだらけで弱点の無い下ノ黒ビンガに対し、上ノ黒ビンガは6ピッチ程度のフリークライミングが楽しめる今風の壁である。下部2ピッチはスラブクライミングだ。特に2ピッチ目はすっきりとした緊張感の有るスラブで(5.8~5.9?)興味深い。ここはスモールカムとボールナッツが有効である。その後ちょっと草付きっぽいところから気持ちの良いハンドクラックを4m登り、ハング帯の下、外傾大テラスへ至る。ここは右へトラバースし顕著なフレークのあるルンゼに入り、藪っぽいところを越えて、大チムニーのあるテラスに出た。この見た目恐ろしい大チムニーは実は簡単で面白い。後日調べたら、だいたい正面壁オリジナルルート付近を登ったようであった。適当にフリーで弱点を突いていくと似たようなライン取りになるのだろう。現代のクライミング感覚から言えば難しくないので(脆い岩の処理、支点構築の技術は要する)もっと登られてもよい壁だと思う。何せ富山市内の壁だしね。
この壁を登る事そのものより、どこから来てどこへ繋げるかを考えるのが面白い。周辺には素晴らしい頂上の数々の他、高層湿原に温泉、カール地形と興味深い場所が沢山ある。黒部五郎カール内でボルダリングするのも気持ちが良い。これらを一筆書きにすることで、ひとつひとつの心象は一層鮮やかに刻まれる。そんなわけで、登山計画のアクセントとして上ノ黒ビンガ周辺の岩場を取り入れてみてはいかがだろうか。
<アプローチ>
上の廊下を遡行するか、下降して取り付くのが簡単である。スゴ二ノ谷を遡行してからスゴ沢を下降するのも面白いアプローチである。登攀終了後は同ルート下降が安牌。下部スラブ帯はピトンかナッツを使って下降する。左岩壁側を歩いて下降する事も可能だと思う。中ノタル沢付近が幕営適地と言える。天候が良ければ壁の近くで泊まる事もできるだろう。
<装備>
カム1.5セット、ナッツ少々、トライカム少々、ピトン数枚、ボールナッツの小さいサイズが有効。キャメロット#4~5は必要ない(あったら使えるけど)。
カム1.5セット、ナッツ少々、トライカム少々、ピトン数枚、ボールナッツの小さいサイズが有効。キャメロット#4~5は必要ない(あったら使えるけど)。
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