国土地理院発行の地図に記載されている地名は実のところ少ない。地図上で名前が記載されていない谷は幾つもある。だが集落が近くに有る場合、調べれば必ず名称は存在する。それは山が生活の場であり、資源そのものだったため命名し区分を明確に把握する必要があったためだろう。大長谷は飛越国境争いが長く続いた場所である。飛越を結ぶ二ツ屋街道が拓かれ交通の要衝となり、炭焼きや鉱山開発が行われていた。木材の運搬には谷の水を堰き止め流したそうだ。つまり谷は生活上めっちゃ重要だったのである。
そんなこんなで、国土地理院の地図に名称記載がない喜右衛門谷である。大長谷川の標高700m付近から小白木峰へ詰め上げ、出合から直ぐに堰堤記号が2つある谷だ。おそらく「喜右衛門」という人物がかつて存在し、名を拝借したのであろう。「喜」という文字が入っていて縁起が良い印象のする谷である。遡行の内容は概ね淡々としているが、所々で喜びが注入される。標高1100m二俣までは岩は硬くて快適かつ苔と森が美しい。それ以降はやや土砂が多くなるが、快適に標高を上げることができる。詰めで弱点を突いていけば一切藪漕ぎ無しで登山道へ抜けることができる。富山からは意外と登られない小白木峰へ合理的に登る事が可能な沢だ。訪れたのは初夏、ススタケの収穫が何よりの喜びなのであった。
<アプローチ>
国道が開通している場合は谷の出合近くに小さな駐車スペースが有るのでそこに停める。未開通の場合はゲート前に留めて歩く。遡行はあっという間に終わるだろう。下降は登山道でも良いし、近くの谷を下降しても面白いだろう。
<装備>
登るだけならば何もいらない。
<快適登攀可能季節>
6月~10月。谷が浅いので残雪は少ない。
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