2020年9月23日水曜日

加須良川 連瀑沢











飛騨と越中の国境には面白い逸話が幾つかあるが、加須良と桂の関りも興味深い。字面は異なるものの殆ど同じ読みをする両村は古くから支え合って暮らしてきた。しかしながら、境川が飛越国境である。困難な自然の中を生き抜く両村間の不法な行き来が公然の秘密として黙認されていたようである。国境管理が途絶えた後の昭和中期に桂集落はダムの底に沈み、加須良集落は離散した。何百年と支え合ってきた人の営みも時代の流れによって瞬く間に消えていく。時の移ろいは儚いものであるが、そこで営まれた文化は記録して残していきたいものである。文化は後世の想像力を掻き立て、よりよい日々の指針となる。といっても、一介の沢屋ができることは多くない。とりあえず境川と加須良川を繋げたトリビュートクライムを捧げることとした。

加須良川の支流に滝マークが3連続する珍しい沢がある。古い記録ではこれに連瀑沢という名称を与えているが、加須良の歴史を調べればこの沢にも、れっきとした名前があるのであろう。入渓して幾つかの小滝をやり過ごすと豪快な30m滝が現れる。この滝は右壁を爽快なクライミングで登れる。この滝までは花崗岩で以降は安山岩質の溶岩と流紋岩質の凝灰岩っぽい岩が中心となる。950mの二俣は記録未見の左俣へ入る。1150mに弱点に乏しい圧倒的な岩壁帯が現れる。この岩壁は左壁のスラブからリッジへ登るしかない。スラブ側壁にはクラックがあるので支点は困らないだろう。以降は困難もなく1434.2m三角点南西のコルへ抜ける。登攀的な沢ではあるが時折見せるナメも良い演出で隅に置けない沢だ。950mを右俣に向かったらどうなるのか、こちらも楽しそうである。

加須良川にはこのほかにも気がかりな支流が多い。谷が険しいだけに蛇谷側の加賀との交流は無かったかもしれないが、蛇谷との抱き合わせでも楽しんでみたい。

<アプローチ>
桂湖の駐車場に駐車し林道を歩いて加須良川方面へ向かう(林道は車両通行止め)。近年加須良川に小水力発電所が建設された。これにより取水堰堤で川が湛水している。



これを右岸側から高巻いて入渓する。連瀑沢中に幕営適地は少ない。950mの二俣は比較的泊まり易いと思う。連瀑沢を登った後はボージョ谷を下降するのが自然だ。初日にボージョ谷へ下降すると良い幕営地が得られる。

<装備>
カム#1までワンセット、ピトン各種

<快適登攀可能季節>
8月~10月。白山はなんといっても秋がいい。

<温泉>
くろば温泉:国道沿いに有るのでわかり易い。600円也
五箇山荘:高速のインターを少し過ぎたところにある綺麗な温泉。500円也

<博物館>
世界遺産の五箇山集落に古民家があり歴史を学べる。平家の落ち武者によって拓村された。そして、囚人を幽閉する場所でもあった。古い流刑小屋もあるので立ち寄ろう。江戸時代には、加賀藩の火薬庫で塩硝を製造していたそうだ。ブナオ峠から火薬を運搬していたのだろうか。そんな思いを馳せながら山を楽しもう。


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