2021年6月7日月曜日

庄川 十八谷右俣

 












 十八谷の地形はとても不思議である。庄川に注ぎ込む直前に左俣と右俣が分かれているが、左俣と右俣では標高の上げ方が対照的だ。左俣は序盤は緩いのだが、突如谷の向きが反転するかの勢いで向きが変わる。終盤の傾斜の上げ方はきつく登れない大滝に手焼く。右俣は全く逆で、序盤は流れが直線的で傾斜が強く後半は部分的に急ではあるが平均傾斜は緩い。まるで子供の落書き線のように衝動的に流れる水の線。この谷の地形図を眺めていると、世界がなぜこのように存在しているのか、という宇宙規模の疑問がじんわり湧いている。

 十八谷の出合いに立って「右俣やな!」という意気込みに駆られる人は幾人いるのだろう。左俣に比して圧倒的に少ない水量と二段堰堤を見て左俣へ吸い込まれる人がほとんどだろう。在りし日の筆者もその一人であった。だが、寄る年波に負けず圧倒的連勝記録を続ける好奇心に押され、疑いながら訪れた右俣は素晴らしかった。
 出会いからの急傾斜帯はどうせ土砂だらけだろうと思ったら、意外と許容範囲内で小滝が快適に続く。谷が狭まるところはゴルジュだが快調そのもの。一か所滝を巻く箇所があったが特段の悪さは無い。谷が西向きに向きを変えも大人しくはならず、最後の最後まで小滝とミニゴルジュ時々ナメと楽しませてくれる。水流の多い方を忠実に進むと988m北のコルに出る。ヤブコギは無いまま、嘆息が出るほど美しい森へ出る。

杉尾峠から扇山までの稜線は隠れた沢登り好適地なのではないかと思い始める今日この頃。ちょっとした支流や小さな沢筋でも手軽に楽しめるので、まだまだ探検したいところだ。

<アプローチ>
国道156号で祖山まで。入渓点前の広いスペースに駐車する。杉尾峠から送電線巡視路を利用して祖山橋の方へ降りると楽。稜線上のそこらじゅうに送電線巡視路があるので地図をしっかり読んで現在地を把握したい。

<装備>
ピトン少々

<快適登攀可能季節>
6月~11月。早い時期だと残雪が残っている。

<温泉>
大牧温泉:舟で対岸に向うという、火曜サスペンス劇場的なロケーション。もちろん行った事は無いが一度行ってみたい。

2 件のコメント:

  1. 初めまして。いつも拝見しています。
    庄川水系は遡行したことがありませんが、この記事に魅せられました。
    地理院地図を見ながら、「ここかな?いえ、ここかな?」と思案しています。
    そもそも十八谷とはどこ?地図には記載されていません・・・。
    すみませんが、もうすこし教えていただけませんか?よろしくお願いします<(_ _)>

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  2. 祖山ダム下流にある196m表記がある谷が十八谷です。庄川水系という多段蒔絵重箱の隅にある米粒8つくらいの谷ですが、ふらりと気軽に楽しめる良さがあります。小生なにぶん、ダボハゼ登山者ですので、「なんじゃこりゃ!」となっても寛大な御気持ちでご容赦。

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