白山山系犀川上流を訪れる登山者は多くない。国土地理院発行の地形図に支沢の名称が示されていないので、縁遠くなるのも頷けるところである。現在犀川ダムへの林道が封鎖されていることも相まってとても山深い存在となっている。広大な山域中には岩場マークが点在しているし、いくつかのゴルジュと大滝の存在を示唆するような表現には惹きつけられるものがある。登山記録は多くないが、古くから志篤き人々によって拓かれてきた。
筆者と弁慶岩との邂逅は古く、大町山岳博物館で読んだ「さわわらし」か「野良犬通信」にあった犀川流域記述中のたった一文だったと思う。当時はどえらいとこに存在する岩場で別の世界のお話だと思ったが、いつの間にやらマイワールドの一部になっていることが恐ろしい。久しぶりに思い出して誰か登っているかと検索してみたら、何と近年めっこ山岳会の方が訪れていた!さすが地元山岳会である。
俄かに熱を帯びる気配がある弁慶岩。あ、そもそも場所が判る人は殆どいないね。倉谷川の374m地点の支流の次に出合う左岸支流がコシアゲ谷であり、その540m付近の左岸に展開するのが弁慶岩である。地形図では岩崖マークが付けられているので間違うことは無いはず。目の前にする弁慶岩の傾斜は緩くロープが必要となるか悩ましい傾斜である。我々はフリーソロで高差にして5/6くらい登って最後だけ3ピッチロープを出した。全然難しくないので、自然の造形美に酔いしれながらグングン高度を上げるのは爽快。登り切った先の尾根には登山道は無いので沢の下降が必須となる。951m地点から倉谷川へと下降する沢(クワ谷)は概ね下降しやすいが、倉谷川出合い付近は連瀑なので油断できない。
これだけを目的に登るのはちょっと勿体ない。二又川支流を登り降りしつつ、高三郎山を登り、コシアゲ谷を下降。そこから弁慶岩を登ってから倉谷川を遡行するなんてどうだろうか。広大な山域を巡るなか、ワンポイントの岩要素が良いアクセントとなるだろう。そして初夏の岩魚、秋の紅葉とキノコどちらも涎だらだら計画である。
<アプローチ>
遠回りになる犀川ダムから入山するよりも刀利ダムから山越えをして入山する方が良いように思う。刀利ダムから小矢部川上流部へ車で入り、標高375mの橋がある場所に駐車する。ここは瀬戸の長瀞の入山口でもある。そこから、小矢部川本流ではない沢(沢の名前は枝谷)の林道を歩いたのち、沢を登り赤堂山の南北いずれかのコルから倉谷川へ下降する。どちらの沢も下降は難しくない。帰りもこの沢を使用すると早い。なお、この山域における各支沢の名称は長崎幸雄著「わが白山連邦~ふるさとの山々と渓谷」に詳しい。
<装備>
たぶんスリングだけでOK。ピトンも使えるところはあるが、基本全然取れない。
<快適登攀可能季節>
6月初旬~11月 早い時期だと残雪が残っているはず。ゴルジュ内に残っていた場合は処理に難儀するだろう。7月末から8月末まではオロロが発生するので避けた方が良い。
<温泉>
福光温泉:刀利ダムから降りるとすぐにある温泉。さっぱりとした天然温泉で毎日は入れる地元民の憩いの場。
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