2022年6月30日木曜日

安曇川 ヘク谷




 







比良の谷は割と開けているけど、急峻で滝があるというのが特徴。どこを登っても似ているが、水を浴びながらのクライミングが楽しめ大体面白い。巻きのリスクもそれほどないのでメンバーに合わせて楽しめるので取り付きやすいだろう。ヘク谷は近畿地方の沢登りの入門として良く登られているようだ。この谷で嬉しいのは詰め上げた先に小女郎ヶ池があること。薫風そよぐ初夏に訪れたが花と新緑が鮮やかで素晴らしかった。

小女郎ヶ池には蛇と不倫した妻の伝説がある。モラルを説いているのか、ただのSFなのか全然くみ取れないお話だと思った。民話や伝承話のナンセンスさは旅の風情を一層際立たせてくれる。意味があるんだかないんだか解らない物語をあーでもない、こーでもないと現代の価値感で論じるのは如何にも人間らしくていい。真偽も語られた時期も不明だが、語った人がいたのは確かであろう。人の熱を感じる山旅は滋味あるね。

<アプローチ>
国道8号で敦賀まで行くのは信号が多くつらいものがある。高速利用ならば敦賀インターまでおよそ2時間。国道367号線を経てヘク谷の駐車場へ。駐車場は国道から外れた広場。下山はサカ谷登山道を利用するが、下山では所々分かり難いので注意。思古渕の集落は標語とも名言ともつかぬ書が至る所に掲示してあり独特の雰囲気がある。面白いので町ブラしてみて。

<装備>
沢慣れしていれば何もいらない。

<快適登攀可能季節>
4月~11月 良く解らないけど残雪は少ないし暖かそう。ヒルが生息しているそうなので注意。

<博物館など>
若狭三方縄文博物館:建物がモダンな設計である。そのため、全国各地にある縄文系博物館にありがちな寂れた感は全く無いのでそれだけで嬉しい。また、寂れた博物館に有りがちな「はい、並べました」的な展示では無い。美しくて解りやすくて楽しいのである。最近の縄文ブームで訪れる人が増えるかもしれない注目の博物館である。

福井県年縞博物館:水月湖の湖底には7年を正確に測る物差しがある。それが年縞である。2018年に開館した新しい博物館で、年縞実物が45mに渡って展示され、この7万年間の日本列島で起こった出来事が詳細に解説されている。7万年の地球活動の解説7万年の旅が45mで可能ってすごい。この水月湖の成り立ちに鯖街道が実は深く関わっているのだ。

滋賀県立琵琶湖博物館:自然、人文いずれの展示も素晴らしい超絶スケールの博物館。琵琶湖固有種が数多く展示されている水族館だけでも感涙ものである。バイカルアザラシもここで初めて会った。富山とは離れるが一度は訪れたい。


2022年6月19日日曜日

飛騨川 橋谷













 登山には色んな登るがあるけれど、どれも面白くて全部楽しみたいし、いろんな人と登りたい。ボルダリングの隆盛は目覚ましく、どんどん新しいエリアが開拓されて登りたい課題は山のようにある。お隣岐阜県はその活動は目覚ましく、近年では下呂、白川、飛騨金山といった富山から訪れやすい41号線沿いのエリアが興味を惹く。ボルダリングは本当に楽しくて、それだけでも十分な週末なのだが、川が有って山があると併せて遊びたくなる。

 飛騨川と言えば飛水峡である。本流系大ゴルジュはライジャケ&足ひれのお気楽下降で遊ぶのが楽しい。飛水峡周辺の支流の地形図に目をやると谷の浸食は深くいい感じだ。
 橋谷はフリーで快適に登れる小滝が連続してとにかく快適&面白い沢。高山線の管理軌道を少し歩かせてもらう入渓方法からして面白い。最初の堰堤を越えると川原、ゴルジュ、小滝とバランスが良く配置されており沢登り入門にこれほど適した沢は無い。深い釜で泳ぎを楽しむことができるのもいい。終了まで直登可能な滝が続き、飽きないタイミングで林道へと出る。

ボルダリングを口実にして沢登りの世界へ誘導する、又は沢登りを口実にしてボルダリング。岐阜県白川町は異文化交流、遊び仲間を増やすには最適なエリアだね。

<アプローチ>
国道から最寄りの橋の袂へ駐車する。JRの管理軌道を歩いて入渓。下山は林道を歩いて途中から送電線巡視路を降りるといい。ただ、この巡視路の入り口が分かり難いので注意が必要。筆者らは橋谷西の谷を下降して途中から送電線巡視路を下降した。そして、送電線巡視路は途中から分かり難くなるが大体橋谷右岸尾根上を降りる。

<装備>
沢慣れしていれば登攀具なしですべての滝を直登できる。

<快適登攀可能季節>
4月~11月。標高は低いし長期間たのしめるのではないかと思う。

<博物館など>
日本最古の石博物館:地球岩石の成り立ちを学べる。怪しげな外観に反し、ちゃんとした科学館だ。レッキー君と地球の歴史を旅しよう!ただし、日本最古の石の称号は新たに発見された島根県の石に奪取されている・・


虫川 不動滝

 





糸魚川は世界に誇るジオパーク。ぎゅっと小さな場所に変わった地形や沢山の岩石が揃っており、登山の楽しみ方の幅もとても広い。例えば西から子不知付近では花崗岩、青海黒姫山は石灰岩、千丈峰は流紋岩質の凝灰岩(多分)といった具合に高々10㎞未満で信じられない程の多様な様相を見せる。

虫川不動滝はいずれ登りたいと思い続けていたが、これを喜んで登る仲間がいないまま幾星霜。遠方から友人の嬉しい来訪により積年の想いが叶った。

滝を目の前にして流水右側は20mくらいは登り易そうに見えたが、上部の緩傾斜スラブは非常に渋そうだ。大人しく右手のブッシュ帯から一段目を登り始める。出だしから思いのほか悪い草付きを登ってから滝の右のブッシュへ行く。そこから一段目落ち口手前へ水流を跨ぎ落ち口へ。カンテを跨ぐのがやや悪く思い切りがいる。プロテクションはまずまずなので一手勇気を出して。2段目は小さい滝であるものの、これも意外に悪く1段目落ち口から左側へトラバースしてちょっと岩の混じる灌木の急斜面。見た目は冴えないが、何故か岩の箇所では多彩なムーブを楽しめて面白い。3段目は取り付く島もない滑らかな美しい滝。2段目を登った左からそのまま上がり、落ち口目掛けてルンゼを跨ぎ右にトラバースする。最後は美しく落ち口へと出られる。3段目は難しいが1,2段目はもしかしたら水流付近を登れるかも知れない。クライミングに自信のある方は是非。お隣の糸滝と合わせて登るのもいい。

不動滝はスベスベで異様にフリクションが乏しい岩からなる。紀伊半島の岩に似ていると友人の談。確かに高圧変成していそうな雰囲気である。はて、頸城では珍しいなぁと感じて帰宅後に地質図を確認して驚愕。チャートおよび混在岩、ペルム紀の付加体とあるではないか!!あのスベスベ箇所はチャートに違いない。チャートの大滝は北陸では珍しいのではないか。奥美濃の冠山南壁もチャートだったけどあの辺にもあるのかしら。とまれ、不動滝は頸城の多様性と糸魚川ジオパークの滋味を存分に味わうことができる大滝なので是非登ってもらいたい。

<アプローチ>
青海から行くならば岡倉谷林道を利用する。千丈峰の大ギラ、小ギラ、中ギラのスラブを見物しながらの運転は楽しい。ただ、ちょっと運転距離が長くなるので虫川集落から行く方が合理的かも。登攀終了後は林道へ出て歩いて帰るのがいい。

<装備>
カム一式、ピトン数枚、クライミングシューズの必要性はラインによる。筆者はフェルトで登った。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
6月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。水を積極的に浴びなければ秋の紅葉と合わせてもいい。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

親不知 三段滝






富山県内で登山課題を探索するには動体視力は重要である。越中は雪国だ。国道、林道など山がちな地形を切り開いた道路の多くはスノーシェッドや隧道になっていて、外の景色は運一瞥することしか叶わない。その一瞬で壁はあるのか、滝はあるのか、エスケープできるのかといった情報を摂取せねばならない。

三段滝という名前は富山の山屋ならば薄っすらと記憶にあるはず。そう、国道8号線市振から最初の長いスノーシェッドの名前だ。三段滝という立派な名前を冠した谷はスノーシェッドの隙間にあり、普通運転をしていると一瞬しか見えない。見えない短い谷への食指は中々伸びない。ところが、昨年からスノーシェッドの改修工事のため、片側交互信号が敷設されその手前で駐車することになった!じっと観察する訳ではないのだが、目を合わせる時間が長くなっていく。しかし、そのお姿は葉に隠れている。うっすらと意識していただけだったのだが、いつも間にやら親しみの念が。

あれっ?水が無い。まあ、滝マークまで少し先だから出てくるやろ。楽観バイブスで小滝と堰堤を越えると植林の平坦地が・・・。早々の終息宣言発令である。以前はもっと水が有った印象だったのだがどうしたんだろうか。新幹線のトンネル工事で水が枯れちゃったとかかなぁ。次は雨の時にでも登ってみようか。

<アプローチ>
国道8号線の三段滝スノーシェッドを抜けた地点(標高31.4m地点)に駐車スペースがある。そこから少し歩いてスノーシェッドの合間から入渓。上部まで沢を詰めずに降りる場合は適当に右岸の斜面を下降し、スノーシェッドの上に降りる。スノーシェッドには階段があり安全に下降可能。

<装備>
悪い草付きがあるのでロープはあった方がいい。

<快適登攀可能季節>
4月~11月。標高が低いので長い時期楽しめるだろう。

<温泉>
境温泉:たから温泉と境鉱泉の2施設ある。境鉱泉は備え付けの石鹸類が無いので要準備。

<博物館など>
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。シャクナゲとツツジの時期が素晴らしい。謎の置物も気になる。

朝日町歴史公園:縄文時代の不動堂遺跡が再現されている他、江戸時代町屋であった旧川上家の家屋が当時の状態を保ったまま移設されている。ここでは朝日町名産のバタバタ茶を自分で点てて試飲できる。12月~3月は閉館するので注意。

朝日町立 ふるさと美術館:昨今の大正アートブームで再注目の竹下夢二の作品を所蔵している。江戸~大正期、朝日町の泊は宿場町で大いに栄えており、その盛り場に夢二が訪れていたようだ。妻たまきとの破局事件の舞台は宮崎海岸だ。この情事の続きは朝日町の図書館で。

百河豚美術館:野々村仁清の作品を数多く展示している。デフォルメされた鶏が描かれコップもあり、仁清のモダンな感性を感じる事ができる。他にも話題の伊藤若冲や、尾形光琳に酒井抱一といった琳派ビックネームの作品も展示。

下山芸術の森発電所美術館:きらりと光る興味深い展示をやっている。こちらも12月~3月の冬季は休館するので注意。

杉沢の沢杉:地口か回文のような名称だが素晴らしい場所。田園と防風林の中にポツリ広がる湿地杉林で、まるでもののけ姫の森のようである。近年、入善乙女キクザクラという桜の新種がここで発見されている。この原木は未だ杉沢の沢杉でしか発見されていない。北陸は菊咲きの桜の品種が多いらしい。

2022年6月15日水曜日

高原川 蓼之俣谷

 





川は共同体で沢は個人。みたいなイメージがある。そんで、大きな支流が集落で、各沢の中でも同じような渓相と生き物が生息する流域は家族だ。一番大きな支流を本家として、あそこと似通った渓相だけどちょっと違うって時は親戚として4親等。といった沢の分類はどうだろうか。難易度にすると隠れてしまう個性が少しだけ表現できる気がするのだが。

高原川左岸鼠餅~赤桶の区間は見どころのある沢が多い。面白い遡行が味わえるのはある程度水量があって浸食された谷と予想されるものの、水量の乏しい谷も調査してみた。蓼之俣谷とはその名の通り、奥飛騨温泉郷蓼之俣谷集落で高原川と合流する沢だ。林道入り口の看板から地元では別名で呼ばれているようである(名称忘れた)。谷の平均傾斜は緩いが、比較的急な地形なので予期せぬ遡行内容かもと期待し入渓。出合いから土砂が多く谷は荒れた印象である。土砂ばかりかと思いきや、白水谷系の赤ナメ渓相を呈する区間と土砂区間が交互に現れるという興味深い渓相だ。沢上谷の灰色ナメではないのが面白い。概ね土砂っぽいのだがシダと苔の美しさに癒される。時々小滝を挟みながら1150m二俣まで行くと水量は急激に少なくなる。少しだけ左俣の様子を伺ってから退却した。系統としては赤谷家だけれども3親等外という印象だった。

大地の成り立ちを鑑みると沢における家族制度は強固だ。そこではぐれ者の単身者に出会えたら凄く嬉しくなりそう。では、単身者に出会える場所はどのような場所なのだろうか。火山の谷は難しそうだ。堆積岩メランジュの各層の厚みが異なっていて、規模大き目の褶曲作用が生じているところなんかどうだろう。自然の遊びは勝手に定義して勝手に楽しむのがいいね。

<アプローチ>
蓼之俣集落の奥にある私林道のゲート前に停めさせてもらう。最終堰堤の至近まで林道が伸びている。その上から入渓する。下降は柏当谷が無難順当。

<装備>
多分沢靴以外特に何も要らない。

<快適登攀可能季節>
5月~10月 高原川にはアブはあんまりいない気がする。

<温泉>
割石温泉

2022年6月6日月曜日

海谷 不動川支流トウスル沢


 










 頸城の山は魔力がある。西の根知川から東の能生川までの区画の地形はバラエティに富んでおり、如何なる山遊びも楽しめることを予感させる。逆説的だがこの地域の自然を詳細に示した資料が乏しいことも、魅力を高めている。自分の眼でみて想像することの余白が十分に残されているのだ。

 海川最大の支流である不動川の両岸の地形に目を向けよう。右岸と左岸には緩傾斜帯があるが、雰囲気が異なっている。トウスル沢と谷根川の水源となっている右岸側の上部は凹凸が複雑になっており一体水がどのように流れているのか判別できない。ふと思った。これはかつて海の底で活動した火山の溶岩が北西側へと流れた跡なのではないかと。そしてこの溶岩流は千丈ヶ岳南西壁よりも遅い時代のものではないかと。訪れてそんな想像の真偽を確かめられる訳は無いが、訪れなければ何も判らない。

 不動川と合流する直前の箇所から入渓したが、当地では意外なことに美しい苔が発達していた。上部の台地上にブナ林が有れば水量が安定して苔の発達するのであろう。集水面積が小さいことも影響しているはずだ。沢登り的には容易で興味は薄いが悪くない。低圧形成した堆積岩なのか側壁や岩が容易に崩壊して面白い。標高400~480mは巨大ボルダーが転がる海谷らしい雰囲気。このボルダーは一体どこから来たの?シャワークライミングメインで泥だらけ巻きを交えて登っていく。
 傾斜が緩んでくるとボルダーは無くなりちょっとV字渓となってナメ状の小滝が続く。渓相は美しく遡行も楽しい。ただ、直登できない滝は泥巻きとなり慣れていないと怖いかもしれない。この谷の白眉は高差40mのナメ滝で間違いない。ゆるい傾斜をあくまで優美に流れる様は貴婦人そのもの。さらに進むと一層傾斜が無くなる。ここから不動川に似た浸食を示す岩も現れる。水量が豊富であれば深いゴルジュとなっていたことだろう。登りはヨイヨイで上機嫌なところだ。
 標高740m付近に到着すると水の流れは迷走するかのように蛇行し始める。水流を辿ると結構距離を歩くのだが台地に上がり横切ると一瞬で到着、みたいなところが沢山ある。大岩は少ないが魚影は割合多い。平坦地では大水で流出することが無く定着率が高いのだろう。探索した結果、トウスル沢の主流は931mピークに起因すると結論づけた。ただし、地形図現れていない小さな支流がいくつも分かれていて主流というのが特定しづらかったことを付記しておく。台地上は美しいブナ林となっており癒された。如何せん蛇行が酷く遡行も退屈だったので最後まで遡行せず同ルートを下降した。

 今回の探索は興味深い発見と沢登り的面白さがマッチして良き山行となった。谷根川、ニゴリ川、前千丈沢といった周辺の谷も面白そうなので時期を図って取り付きたいものだ。

<アプローチ>
粟倉集落内の林道は国土地理院の1/25000地形図に記載された状況と実際は異なっている。記載された林道を奥まで進むと上流でトウスル沢を横断する箇所がある。これより下部は沢登り的には興味が薄いので、この横断する付近に駐車する。なお、この横断点は釜沢用水の取水堰堤となっており、この用水にはバイカモが自生している。地域では大切にされているようだ。下降で最も安易なのは同ルート。谷根川を下降するという手もあるが車の回収が大変。

<装備>
スリングだけでOKだと思う。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、ナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
6月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。地形的に雪崩は少なく残雪は比較的少ないと考えられる。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。