2022年9月12日月曜日

尾上郷川 カラスノ谷

 













尾上郷川にはカラス谷とカラスノ谷という紛らわしい名前の沢がある。登山大系、新北陸の名山いずれもこの紛らわしい2つの沢が白山を代表する名渓と称されている。カラス谷は一度行ったことあるので次はカラスノ谷へ

カラスノ谷に入るまでの道のりは長い。尾上郷川の林道ゲートが閉まっているので石徹白側から入山するのが普通だろう。沢から継続するにせよ登山道を使うにせよカラスノ谷に入るまで相応の時間がかかる。そして実はカラスノ谷、滝を登るなり巻くなりするといった沢登りとしての魅力があるのは1400m~1662mまでの区間でしかない。それでもこの充実感は何故だろうか。

ブナコヤ谷を下降して別山谷に降りると素晴らしい川原で嬉しい。これを小一時間登るとカラスノ谷に入る。以降ちょっとした滝とスラブが現れ始める。1450mからは雪国の典型的なV字ゴルジュとなるが南向きかつ、ブッシュの彩りもあるので前向きなバイブスで行ける。特に序盤は丸々とした礫岩を含む岩がポップな雰囲気の演出にも一役買っている。遡行だが、全く記録を読まずに来たので大きな滝が沢山出てきてびっくり。大きい滝の巻きのライン読みは簡単な部類で川床への下降もフレンドリーな気がする。小滝は概ね快適だったがゴルジュ内の連瀑小滝への入り口は分かり難いかも。1662から難場は無く一気に標高を上げて大平壁へと向かう。草付き交じりをノーロープで適当にいい感じで進む。傾斜は無くて難しくは無いが一発アウトと思うときゃん玉がぎゅんぎゅん。支点が取れないのでノーロープで行くしかない。別山の山頂はいつも賑わっているのが不思議。銚子ヶ峰までは南部白山らしい笹原の楽しい縦走路である。秋真っ盛りが快適で楽しいのだろう。神鳩避難小屋からの登山道はブナ林がとても気持ちがいいし、最後の大杉で締めるという素晴らしさよ。

カラスノ谷の良さはその山登り計画の中に有ると感じた。沢登りらしい箇所は僅かではあるが谷の下降、縦走、スラブ登りと厭が応でも山域余すことなく楽しめるのが嬉しい。遡行突破重視派には物足りないかもしれないが、山全体を楽しめる方には是非ともお勧め。

<アプローチ>
尾上郷川から入山すると車の回収が大問題となるので石徹白方面から入山するのが無難。登山道を利用、倉谷や母御石谷を遡行するなどお好みの方法で稜線に上がる。別山谷へはブナコヤ谷を下降することになる。避難小屋から母御石方面へ向かったコルから下降開始した。雪崩による倒木の多さは閉口するが谷の終盤にゴルジュが出てきて下降に頭を使うのが楽しい。後で先行していた方に聞いたら右岸に使い勝手のよい獣道があり、ゴルジュを高巻いて別山谷へ降りられたとのこと。進捗に叶った幕営適地が丁度良い場所にないのがつらい谷である。1450mからゴルジュ帯が始まるが、この手前の左岸に平らな草付きが有ったので泊とした。上部は薪に乏しくなるがここは問題なかった。

ところで白山中居神社は美濃馬場~白山中宮長滝と繋がる白山禅定道の基地として天長9年(西暦832年)から有るらしい。白山信仰が泰澄によって体系化されたのが西暦717年頃だそう。木曽義仲も参拝したそうな。

<装備>
スリング、カム・ピトン少々。慣れていればロープを必要とする箇所は少ない。アプローチとスラブを考慮するとラバーソールの方がいい。ただし、ブナゴヤ谷はぬめる。

<快適登攀可能季節>
9月~10月 夏は登山道が猛烈に暑いと思うのでやめた方がいい。

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