ルート名に良く解らない名前が付いていると行きたくなる。意味が分からないので、解釈の余地があり、人それぞれの想いをもってルートに望めるのがいい。グラードという名詞は良く行く北アルプス周辺でこのルート以外ない気がする。ここはご機嫌に音が似ている英語の「嬉しい」という意味に定義して、Skipi james のI’m So Gladをテーマソングにクライムオン。
登山大系通り、南面のルンゼを積雪期に詰めるのはコンディションを選ぶ。多くの場合は尾根末端から取り付くこととなるのではないか。尾根の取り付きは大スバリ沢と窓ノ沢出合い1950m付近からとなる。尾根末端は灌木が密生した壁のような草付きとなっており、黒部別山を想起させる。スリリングな藪岩稜をロープを付けて登っていくと、顕著なチムニーを有するP4の岩峰が立ちはだかる。入り口正面のチムニーをそのまま登れるより、左の草付きから少し巻いてからチムニー本流へ入るのが容易だ。ずっとチムニーを回避することはできず、抜け口8mくらいはチムニーを登ることになる。ここがこの尾根の核心でⅣ+くらいで荷物の処理を考えねば苦労するだろう。あとは簡単な草付きを登ればP4を終える。
P3の取り付きはやや広い雪面となっている。壁左側のクラックが走ったスラブを登るのが夏のルートだと思うが、積雪期は右の岩交じり草付き凹状が快適に登れる。そこから右の雪面を繋いでいくと上手く登っていける。あとの登行は登れそうなところを適当にこなしていくと困難は無い。尾根上の少し右を登って行ったところ、P2とP1がどこか解らなかった。西尾根二峰に出ると左に北西壁、右に大スバリ沢。氷雪を纏った壁はヨーロッパアルプスのようで圧倒される。少し登ると北西壁へのアプローチとなるコルに到達する。2泊の日程が有るのであれば、荷物を持ったまま北西壁へ継続してみよう。物凄い充実感があるだろうし、海外登山のいいトレーニングにもなるはずだ。
ほどよいクライミングが連続する山頂まで高差700mの岩稜って日本にどれくらいあるのだろうか。荷物を背負って岩と雪のミックスした尾根を週末に登れるのは大変ありがたい。雪のコンディションの読み、ルートファインディング要素も大きいので総合力が問われる点も特筆したい。南面のぽかぽか雰囲気だからSkipi jamesバージョンではなくcream版のリズムに載って絶唱しながら登ろう。アイムソーグラード!!
<アプローチ>
屏風の頭から稜線に上がって直ぐの谷を下降する。ルートをよく見て下降しようとすると、赤沢岳側に寄りすぎてB沢に入り込んでしまい、滝を懸垂下降することになる。右岩壁が観察できるので悪くは無いが取り付きまで時間がかかる。尾根末端から取り付いたが、登山大系表記のP4まで傾斜の強い草付き、ナイフリッジ、トラバースを交えた岩稜登行にロープの使用を強いられ、時間がかかる。尾根末端から登る場合、週末2日間で屏風の頭からアタック形式をとるのは登り切れないだろう。ビバークする程度の幕営場所はP4前後であれば随所にある。筆者らはP4核心チムニーの手前にあるテラスで泊まった。P3付近テントが張れる広い安定地があった。西尾根に出てから山頂までもそれなりに時間がかかるので油断ならない。
<装備>
カム一式
<快適登攀可能季節>
2月~3月 南面であるため、余りに時期が遅いと雪が腐って面白くないかも。
<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。ボルダリング壁も一回100円で一日利用可。
塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。
<温泉>
上原の湯:地域に親しまれている温泉でリーズナブル。
<グルメ>
昭和軒:大町駅近くにあるカツ丼の店。大盛りはプラス100円で凄い量が食べられる。