北条・新村ルートというのは前穂東壁にもある。チンネと前穂というアルプスの主要岩壁に名を遺す両氏の存在感は物凄いものがある。北アルプスのルートしか知らないけれども、初登者のルート名が併記されているルートというのは多く無いんじゃないかと思う。北条さんと新村さんはどんな関係だったのだろうか。肩を組み歌うたうような仲だったのだろうか。それとも、ビジネスライクなクライミングパートナーだったのだろうか。当時の岩壁登攀の危険度は現在とは比較にならないほど高い訳で、そんなことを一緒にゴリゴリやるのだから極めて濃厚な関係であったことは想像に難くない。両氏がくれたプレゼントを味わい、その人となりに想いを馳せる旅に出る。
取り付きは中央チムニーよりちょっと下のはっきりとしない凹状から。段々とはっきりとした凹状地形をなしているのが目印となる。1ピッチ目は55mくらいなのだが、内容は多彩で非常に面白い。氷雪の付着の影響を受けやすい凹状フェースからチムニーと続く。筆者らは雪の少なく氷が発達していない状態の3月に登ったのでドライだったが、シーズンによってはベルグラが期待できると思う。ロープを伸ばしていくと1ピッチで核心手前に到着する。Ⅳ+A1なのでフリーで行けるのでは、と臨むもののガタガタした白い脆い岩と想像より強い傾斜で敢え無く断念。ハングを越えてからのダブルクラックはさながら槍西稜のようでむちゃんこ面白い。ここも45mくらい伸ばすと中央バンドまで到達する。中央バンドまで来たら適当にgチムニーでもaバンドでもお好きなラインを登ればいい。
前穂東壁の北条・新村と同じく傾斜は強く攻撃的なラインである。しかし、攻撃的でありながらクラックを上手く辿っており、現代においても合理性を有する永遠のモダン。お二人のさん、どうもありがとう。
<アプローチ>
12月~4月15日までは早月尾根から山頂経由か西仙人谷から稜線に上がり三ノ窓まで行く。復路も同じルートを辿る。アプローチは長時間行動になるので水分と栄養をしっかり定期的に摂取するのが大事である。栄養の軽量化は敗退する要因なので避けたい。4月15日以降であれば池ノ谷左俣を詰めてもいい。ただし、白萩川の埋まり具合や池ノ谷ゴルジュの状況に依る。チンネの頭からはルンゼを40m下降して25mの懸垂下降で池ノ谷ガリーへ降りられる。
<装備>
カム#3までをワンセット、トライカム少々、ピトンは不要でボールナッツが有効。フリーで臨むならば0.4~2.0までを2セットあるといいと思う。ロープは1本でいい。
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