2024年8月20日火曜日

高瀬川 北葛沢

    


















 北葛沢は本格的な沢登りが楽しめる好渓である。と、本格という紋切り型フレーズを用いたが沢登りの本格的というのは未だ一般化されていない概念なので、ここは一丁覚悟して定義を提案したい。1.水量が豊富であること、2.ゴルジュがあること、3.滝、ナメ、川原と渓相に変化があること、4.稜線に到達できて頂上に至れること。5.日帰りで登ることが困難で一般的には2日以上の時間を要すること、以上5点を満たすとき本格的(或いは本格派)と称していこうと決めた。今後、本格的を活用していこかと思う。

 さて、本格派の北葛沢は入渓して直ぐに豪快な花崗岩ゴルジュ帯が始まる。流石北アルプスを水源とする水は冷たく勢いがある。音と水勢に威圧感が良きスパイスだ。ゴルジュ帯が突破可能設計なのがこの沢の魅力。ゴルジュ内の小滝群を登ったり巻いたりしながら進む。登攀も巻きも簡単ではないのが面白い。ゴルジュの側壁を人工登攀を交えて灌木帯へ抜けた箇所もあった。とはいえ、あくまで突破仕様なので沢慣れした少人数パーティーならば比較的早く下部ゴルジュは突破できるだろう。少し癒し系の渓相を挟んで吊り橋跡を過ぎると上部ゴルジュが始まる。こちらは幾分開けており、巻きも登りも下部よりは易しくなる。七釜の連瀑を越えると谷は一気に開ける。いかにもアルプスらしい豪快な景色が嬉しいところだ。七釜以降は花崗岩ではなくなり谷の白さは無くなる。ふと沢の岩壁を見ると岩が黒い。安山岩質に見えるのだが実際はどうなのだろうか。黒々とした岩壁で冬に登ったら面白そうなのだが、如何せんクラックに乏しく脆い。もし、冬に登るのならばリッジ状を登るのがいいところだろう。絵にかいたようなガレをゆっくり慎重に上り詰める。北葛乗越からはアップダウンの多い稜線で疲れた体にはつらいかもしれない。北アルプスの稜線眺望を楽しみながら下山。

 スケールがあり誤魔化しの効かない沢である。沢慣れしているか否かで遡行所要時間は大きく変わるだろう。足並みの揃った少人数であれば一泊二日も十分可能だと思う。本格派遡行を志向するならば是非どうぞ。

<アプローチ>
北葛沢入口付近にある路側帯に駐車して入渓。幕営箇所で最も良いのは下部ゴルジュを抜けた1150m地点である。上部ゴルジュを抜けた1740m地点もまずまず。ゴルジュ内でも十分に幕営できる箇所があるものの、相応の増水には耐えかねる。晴れの日ならば問題ないと思う。下山は縦走登山道を使うのが一般的だろう。縦走路も相応に悪いので要注意。筆者らは針ノ木谷へ一度下降してから七倉岳を登る沢を詰めた。特に合理性は無いけども気分的に。

<装備>
カム一式、ピトン少々。フェルトでもこなせないことは無いが、ラバーソールの方が利がある沢だと思う。

<快適登攀可能季節>
8月~9月。残雪が多い時期だと上部は雪渓歩きになるはず。とはいえ、時期が遅いと寒い。

<博物館など>
大町山岳博物館:資料館が素晴らしい。剥製の展示も豊富で躍動感、物語性があり見入ってしまう。

塩の道ちょうじや:庄屋であった平林家を展示。千国街道から運ぶ塩は瀬戸内産だったそうな。北前船で糸魚川まで運ばれ、そこから大町まで運んだとか。にがり甕の知恵に感動。



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