山登りをする人で雨が好きな人は多くないと思う。筆者もその一人である。山では眺望を楽しみたいし、濡れて不快な思いもしたくないし、歩きにくいのも嫌だ。だからお休みの日は晴れを願うことは有っても雨乞いするということは決してない。
南アルプスの前衛峰に雨乞岳という山がある。眺望が良さそうで機会が有ればハイキングで訪れたいと思っていた山だ。曲折がありすっきりしない空模様の週末に北杜市に居た。そして雨乞岳のことを勃然と思い出した。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登る。こりゃ諧謔性が有って良い。神宮川笹ノ沢から雨乞岳を目指すことにした。
笹ノ沢は出合いから素敵な大き目の滝が4つくらい出てくる。どれも快適に登れたり簡単に巻けたりするので問題ない。3つ目の滝は滝横のクラックを登って楽しい。興味深い点は猛烈に砂が堆積しているのに渓谷美を保っていることである。マサ化が激しい花崗岩で水深は浅いうえ大岩は無い。不思議と谷中に倒木は少なく何故か苔も繁茂し魚も住んでいる。森の雰囲気と白砂がマッチして特異な美を醸す。北陸ではお目に架かれない不思議な世界だ。マサはただ風化によって供給され、湧水の沢で水量が安定しているために落ち着いた渓相となるのかもしれない。美しい渓相と時折現れる小滝を楽しみながら進む。山頂を最短距離で目指すべく1340m付近で左岸支流へ入る。後から知ったが、多くの遡行者はこの支流ではなく次の谷を右に入るようだ。この支流の途中で結構渋いシャワークライミングの滝がありネイリングとガストンムーブが味わえる。それ以降は落ち着いたゴルジュライクな渓相に戻りロープレスで楽しめる。雨乞岳は通じる登山道に出ると森の雰囲気もよくいい道だ。山頂はやっぱり雨で眺望は無かった。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登り晴天を希う。これで念願成就である。次は晴天時に流川から登ってみたい。
笹ノ沢は関東ではポピュラーな沢のようだ。特異な渓相は一見の価値があるので富山から少し遠いが訪れてみると良いと思う。話は逸れるが富山県で雨の中のハイキングするなら樹高の高いブナの森を傘をさしながらぶらぶらのがいい。霧がかった森は一層幽玄となる。雨だれはブナの葉で柔らかになるので傘を閉じてゆっくり音を楽しむのも楽しい。雨音が新緑と深緑の時期で異なるのもまた面白い。大品山や縄が池からの高清水山&高落場山が最高だろう。関東の皆さん、雨の週末は富山県のブナの森へいらっしゃい。
<アプローチ>
神宮川と並走する林道のゲートまで車で入れる。幕営することはない行程だと思うが、しようと思えば快適な場所は割とある。登山道は歩きやすいし、登山道のない尾根も植生が乏しいため上り下りができる。山の管理道かは不明だがそこら中に道が有って迷う。
<装備>
カム少々(小さめ)ピトン、足回りはラバーの方が有利
<快適登攀可能季節>
5月~10月 (多分)
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