2026年5月31日日曜日

笠谷右俣B沢


 













 笠谷は山深いようで近い不思議な谷である。距離は長いけども林道を歩けばアプローチは速く済む。どの谷も難しくないため遡行速度もそれなりに出るので早朝出発で日帰りできる谷が多い。しかし入渓すると稜線まで深山幽谷の妙味がある。

 笠谷右俣B沢は錫杖岳へと通じる沢である。水平距離が長く感じるが富山からならば余裕をもって日帰りができる良渓だ。左俣と分かれると俄かに両岸が立ち始め大きな美瀑が続く。どれも困難はないが危険性を孕んでいるので油断せずロープを出した方がいい。A沢との出合はB沢とも立派な滝で出合っており興味深い地形となっている。B沢に入ってもナメ滝が散発的に出てくる。1400mくらいからは淡々と苔むした岩を流れる水を遡る。静かで涼しい風が吹き抜けて気持ちがいい。稜線に出ると錫杖本峰と中央稜の岩場がイカツイ。冬に登った中央稜P3正面壁の下からは見えなかった弱点が見える。次はあそこから中央稜を目指してみようか。牧南沢を注意しながら降りれば歩きなれた登山道である。

<アプローチ>
車か自転車を槍見にデポして笠谷入り口の林道に入り発電所のゲートに駐車。回収を考慮してもう少し手前に駐車するのもいい。林道を歩き本谷へ降りやすい適当な所から入渓してもいいし、途中から荒れた林道を最後まで詰めてもいい。林道終点まで行った場合は少し戻って右俣に入る。筆者らは錫杖岳南側のコルから牧南沢を下降した。牧南沢は錫杖岳本峰を目指す登山者の登路になっているようで割合下降しやすいが急な沢なので油断ならない。

<装備>
スリングだけでOKだが、シャワークライミングをするならギア一式。フェルトでもラバーでもいい気がする。

<快適登攀可能季節>
6月~10月。

<博物館など>
上宝ふるさと歴史館:民具、播隆、円空、縄文土器、郷土の偉人と筆者の大好物が揃った歴史館。岐阜県内の歴史館と比べると施設自体が新しく綺麗である。どの展示も推したいがやはり高原郷の夭折した傑物、本郷村善九郎の伝記が最大の見どころ。大原騒動における胆力のある対応はティーンエイジャーの成せる業ではない。辞世の句も秀逸。

江馬氏館跡公園:江馬氏は室町時代~戦国時代に北飛騨地域を治めた豪族武将である。その時の武将が室町時代に命じて作庭させたのが会所庭園である。来客をもてなす為に作られた石庭は失礼ながら地方豪族が設計したとは思えない瀟洒さで都の風を感じる。作庭費用は鉱山で得た資金を投下したのであろうか。飛騨が天領となった元禄以降は田に埋められてしまったが、昭和に発掘され再現されている。すごくいい庭なのにお庭を眺めながらお弁当を食べられるというフレンドリーさよ。

高原郷土館:鉱山資料館、神岡城、旧松葉家と3つの博物施設が集まった公園。神岡城内では神岡の歴史を概観でき、鉱山資料館では昭和における採掘~精錬までの工程をビデオで学習できる。鉱山資料は少し情報が古いものの鉱業の現場を知ることができるので貴重。そして最も推したいのが松葉家。神岡に現存した合掌造りで農具、山仕事道具(刃物含む)養蚕具が3階建ての中に所狭しと並ぶ。背の高い人は上階で頭をぶつけないように注意。
なお、近現代の生活に関する書物は「奥飛騨山郷生活文化の記録」が面白く、土木開発については「土と木と水と人と : 建設概史」が概観にふさわしい。どちらも国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可


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