乗鞍の谷は困難を求める遡行者には向かないが逍遥好きにはお勧めできる。美しい森と苔の谷を歩き鳥の声を楽しみつつナメを登る。イワナと遊んでもらうのもいい。余裕を持った行程を組んでゆったりと過ごすのである。
黍生谷はゆったり沢旅の筆頭に挙げてもいいだろう。近年の集中豪雨によって乗鞍の谷の多くが荒れた。黍生谷の被害は小さかったようで穏やかな渓相を保っている。標高2000mまでは沢登り的に特筆することは何もない。嘶くような駒鳥の声と朗々と歌い上げるミソサザイの声を聴きながらしっとりと天然林を歩く。筆者らが訪れた6月は食べごろの行者にんにくが自生しており有難くいただいた。2000mで大滝が現れるとナメや小滝が現れ始めて爽快だ。最後はハイマツの森が現れて面食らうが直ぐに低木となり歩きやすくなる。天気と時間が許せば乗鞍山頂へ向かおう。登山道には石仏が安置されており旅情を醸す。どのような行程を選択するにせよ帰路は安楽ではないがこれも谷が静寂を保つことに一役買っている。
遡行は難しくはないけれども登山として登り降りするには相応の力がいるのも事実ではある。適当に入渓して動植物を眺めてのんびり過ごして戻ってくるという関りもいい。
<アプローチ>
黍生谷右岸についた林道のゲート前に駐車して適当なところから入渓。シンプルに遡行して稜線に上がる。幕営可能箇所は多いがやや決定打に欠ける。筆者らは1800~1850mの区間で幕営したが、2000mを超えても適当なところはある。下降は色々考えられるが筆者らは車を一台デポして塩蔵川左俣とした。左俣上部はナメや30m大滝なども出てきて中々面白い。本流も右俣合流後しばらくするとスケールのあるナメが綺麗だ。
1480mから林道に上がったがこれが失敗で林道は車が通っておらず結構藪が濃い。それだけならよかったのだが、途中で大きく崩壊した箇所が2か所ありこの通過が危険極まりない。この状況ではおとなしく最後まで塩蔵川本流を下降したほうがいいだろう。
<装備>
登ることに関してはロープは要らない。沢を下降する場合用に懸垂下降用のロープくらい。
<快適登攀可能季節>
6月~10月 南面なので雪の少ないシーズンならば6月から行ける。
<博物館など>
千光寺:円空ゆかりのお寺で作品を豊富に所有する寺。定番の不動明王はもちろん、宇賀神や水神もいい。しかし、千光寺保有の円空仏といえば鬼気迫る傑作の両面宿儺であろう。円空仏のなかでは複雑で力強く彫られており印象深い。
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