2015年11月29日日曜日

東山 東南稜





国土地理院の雨中の地図を広げてみてほしい。黒鼻山~中西山西面の等高線の込み具合に妄想が膨らむだろう。しかしここは主に堆積岩の褶曲によって形成された山。地すべりや、雪崩により急峻になっており、壁は望めず、ほぼ斜面であると考えられる。翻って東面は傾斜は緩い場所が多い。白馬岳と非対称稜線が逆になっていることに気づく。どのような大地の営みがあったのだろうか。もちろん成因は異なるだろうが相互に作用しているはずだ。誠に興味深い。

本題に戻ろう。緩やかな東面において唯一の急峻な尾根が東南稜である。西面が均一に削られているのに対し、急峻な尾根がある。ということは硬い岩体が残っているかも・・・・と大いに期待した。が、まあそんな期待は裏切られ戸隠系のボロい海底火山性の岩だった。だが、決してこの山の魅力が地に落ちたわけではない。我々は東稜のピストンのみで終わったが、主稜線の縦走は静かな登山を楽しめる良い場所だと思う。

<アプローチ>
奥裾花ダムから林道を歩き尾根に取り付く。白馬から国道406号線を行くと積雪状態次第では怖い。天候状況に応じて東側から入山することも検討するほうがよさそう。
富山から国道8号~国道406号経由で4時間30分くらい。

<装備>
部分的に岩登りも有るが、基本オーソドックスな雪稜。ピトン少々。

<快適登攀可能季節>
1月~2月。寒いとき。

<温泉>
鬼無里の湯:とんでもないところにあるが、綺麗で良いお風呂。値段も510円とリーズナブル。

<グルメ>
国道18号で行く場合、途中のニューミサという食堂で定食を注文するとご飯お代わり無料。
味も美味しい。

2015年11月26日木曜日

薙刀山北面  Rising☆Sun











白山山域で本格的な冬期登攀を行った記録は少ない。というか多分無い。時は21世紀、軽量で使い勝手の良い装備が手に入るようになった。それなのに山登りの地平は前世紀に比べて狭くなっているような気がする。存在が明白な壁に困難な新しい登路を示す事もちろん意義があると思う。でも静かな深い山の中で「有るかも知れない」壁を求めて彷徨い自然に溶け込み、その時期にしか出会うことが出来ない登路はもっと素敵なんじゃないかしら。

薙刀山の北面は雪のセクションも含め高差およそ80m合計4P。そのうち2Pがミックスクライミングだ。3P目にはM8というグレードが岳友によって与えられた。私はMグレードを体験していないので分からないが、テクニカルでとても良いクライミングだったと思う。薙刀山や願教寺山にはまだまだ課題がある。

さあ、地図を手にザックにクライミングギアを詰め込んで気になる里山へ出かけてみよう。等高線の過密地帯にグラマラスな美女が待っているかもしれない。標高が低くて壁の状態が悪い?それなら、寒い日の夜に登れば良いじゃないか。星を眺めながらのクライミングは幻想的だ。自由な発想で自然に親しもう。もし壁なんか無くっても、山登りは楽しいしね。

<アプローチ>
上在所の白山中居神社の駐車場に駐車し、林道を歩く。除雪の邪魔にならないように駐車しよう。ところで白山中居神社は美濃馬場~白山中宮長滝と繋がる白山禅定道の基地として天長9年(西暦832年)から有るらしい。白山信仰が泰澄によって体系化されたのが西暦717年頃だそう。木曽義仲も参拝したそうな。野伏ヶ岳から縦走すると楽しさ倍増である。下部の雪原は美しく感動する。

富山からだと高鷲インターで降りて石徹白へ向う。東海北陸道利用で富山市内からおよそ3時間30分

<装備>
ひん曲がったアックスと縦爪のアイゼンが有効。ピトンを中心に岩のギア。足回りはスノーシューが絶対的に有利。標高が低いので防寒は適度でよい。雪と氷の状態を考えると登攀は夜が良い。なので照射距離の長いヘッドランプがあると良い。岩質は明神岳2263峰のようなイメージ。

<快適登攀可能季節>
12月~2月。寒いとき。

<博物館など>
石徹白の大杉:立ち枯れながら、なお屹立する姿に涙腺が緩む。登山の終わりに必ず訪れてほしい。




2015年11月24日火曜日

池之俣 御輿谷~久手御輿谷









出だしの大滝、中盤のゴルジュ、上部のナメの小滝と変化に富んだ内容で周遊を楽しめる。池之俣御輿滝は見栄えするスラブ大滝だ。大巻きしなくても脇を登ることが出来る。続くゴルジュ帯の突破も楽しい。左俣を遡行して適当なところで久手御輿谷へ降りる。乗鞍日帰り沢の中では充実度の高いお勧めルート。

<アプローチ>
高山市から国道158号を行き、池之俣川の林道へ入る。または平湯トンネル経由。入渓点まで富山大学からおよそ2時間30分。久手御輿谷から地図に記載されている登山道を利用して御輿谷へ戻った。遡行当時はそれなりに整備されていたが現在の状況は不明。

<装備>
カム少々とピトン各種。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 乗鞍周辺にアブはあんまりいない気がする。

<温泉>
平湯温泉

<博物館など>

光ミュージアム:崇教真光が運営する博物館。ピラミッド型の建築だけでも面白い。浮世絵から書まで展示する正統派で良いなぁ。っとおもったらいきなり現れる教祖の展示が見所。

飛騨高山美術館:アールヌーボー、アールデコのガラス工芸を展示。エミール・ガレ、ドーム兄弟の作品は沢ヤならばきっと気に入るはずだ。

千光寺:仏師界のニコラ・ジャジェールこと円空の作品を豊富に所有する寺。上から目線の悟り表情ではなく、微笑みかける一本彫の仏像に癒される。鬼気迫る両面宿儺も傑作。

世界の昆虫館:豊富な標本と、アート性を兼ね備えた昆虫館。展示内容が多彩で時間がどれだけ有っても足りない。リスとも触れ合える。秀逸なのは蝶で描かれた絵画。蝶が見たら地獄絵図だが。



<グルメ>
41号沿いの弁慶というとんかつ屋は美味しかったと思う。

高原川 沢上谷









小さな谷の中に趣の有る大きな滝が3つある。支流の五郎七郎滝、岩洞滝は全く対照的な滝だ。本谷の塗り壁のような箕谷大滝にはただ呆然としてしまう。谷の流れも滝の形は変化する。もしかしたら1万年後には五郎七郎が直瀑になっているかも知れない。今、この偶然を味わいながらナメを歩く。そんな休日もいとおかし。

<アプローチ>
鼠餅からの県道89号線から適当な場所を選んで入渓。適当な場所で遡行を打ち切り、林道から下山する。
入渓点まで富山大学からおよそ1時間20分。

<装備>
箕谷大滝は巻くことになると思う。多くの記録にあるように左岸に杣道がある。うまく見つけて巻けばロープはいらない。

<快適登攀可能季節>
5月~10月 高原川にはアブはあんまりいない気がする。冬季はカチッと凍るのかな。傾斜が緩いから面白くないだろうけど。

<温泉>
割石温泉

2015年11月23日月曜日

高原川 白水谷









隣の沢上谷ばかりに人が集まるが遡行の楽しさは断然白水谷が勝っている。釜を持った小滝にちょっとしたゴルジュと大滝。沢登りのあらゆる要素がコンパクトにまとまっているのだ。惜しむらくは林道が余りに近傍であること。沢慣れしていない人には入渓し易いとも言える。

<アプローチ>
鼠餅からの県道89号線から適当な場所を選んで入渓。適当な場所で遡行を打ち切り、林道から下山する。白水谷林道は閉鎖されていて一般の車は入れない(はず)。

入渓点まで富山大学からおよそ1時間20分。

<装備>
大きな滝は巻くことになると思う。ブッシュを支点にするので岩のギアは最小限でよいと思う。多少泳ぐ場所も有ったかな。釣り好きは竿を持っていくと楽しいと思う。

<快適登攀可能季節>
4月~10月 高原川にはアブはあんまりいない気がする。早春の釣りも良い。

<温泉>
割石温泉

高原川 ウジガ谷










下流の右岸支流のひとつ。入渓して取水堰堤を越えるとゴルジュとなる。どの滝も水線突破可能だ。ゴルジュが終わるとスラブ滝が連続する。それを超えるとやや平凡な流れとなる。1100mより上は連瀑が続くかと思いきやそんな事は無かった。稜線まで抜けていないので次は突上げて笠谷を下降したい。

<アプローチ>
発電所から林道へ入る。釣り人が入る可能性もあるので早めの入渓を心がけたい。岩魚が居るので釣りをするのも良い。上部の渓相はやや釣りにくい。

入渓点まで富山大学からおよそ1時間20分。

<装備>
大きな滝は巻くことになると思う。ブッシュを支点にするので岩のギアは最小限でよいと思う。

<快適登攀可能季節>
5月~10月 高原川にはアブはあんまりいない気がする。

<温泉>


割石温泉

高原川 芋生茂谷










赤谷の一本下流の支流の芋生茂谷。高原川との出合いは門のように岩壁を擁しているが沢は至って癒し渓。出合いのチョックストーン滝は見事に潜り抜けることが出来る。赤谷よりも流程が短いので沢慣れしたパーティーならば日帰りで左又右又の遡下降可能だ。赤谷同様に源頭は巨大なスラブになっていて迂闊に突っ込むと肝を冷やす思いをする。

<アプローチ>
国道沿いの駐車スペースに駐車する。芋生茂橋を渡り入渓。

入渓点まで富山大学からおよそ1時間20分。

<装備>
大きな滝は巻くことになると思う。ブッシュを支点にするので岩のギアは最小限で良いと思う。

<快適登攀可能季節>
5月~10月 高原川にはアブはあんまりいない気がする。

<温泉>
割石温泉


高原川 赤谷















かつては暴れ川だった神通川も今は富山市内を撫愛するように流れている。その一大支流である高原川には温かみの有る渓が多い。ひとたび谷に入れば子宮に回帰し羊水に満たされるような気持ちになるはずだ。真緑の苔とスラブがおりなす景色はさながら日本庭園である。苔が美しいのは水量が安定していることを示している。高原川は65万年前貝塩給源火道と呼ばれる火口から噴出した火砕流堆積物で構成されている。この火砕流溶岩は流紋岩質で軽石や火山灰を含み流動性の高いものであった。そのためそれまでの凹凸は埋められてしまうそうだ。水源の稜線が台地状になっているのもそのためだろう。その台地に気候がマッチし広葉樹林帯を形成し保水力が生じているのだろうか。自然への興味は尽きることがない。

遡行は1150m二俣までは突破可能なゴルジュ帯が続く。二俣は左も右も秀麗な大滝を掛ける。二俣ベースでどちらかを遡行し、他方を下降する周遊が楽しい。りょうせんまで最も合理的に上がる左俣の左を詰めあがればスラブ状大滝や平坦地の美しいナメが現れる。炭焼き小屋遺産も観察できるので、こちらも大変興味深い遡行となる。

<アプローチ>
国道沿いの駐車スペースに駐車する。本流を渡渉し入渓。春先は水量が多いと渡渉が厳しい。左俣の左を遡行後にオソブ谷を下降する場合にはヤブコギをしてでも岩壁マーク部分を避けた方がいい。ここは溶結凝灰岩の垂直以上の60~70mの岩壁帯であり、さらにその下はスラブ状の谷となっているので下降は非常に困難となる。1319m地点へと下降する谷は驚くほど平和な谷である。溶岩が流れた境目が明確で興味深い

<装備>
小滝が連続するので沢慣れしたパーティーならば少々のパッシブプロテクションだけで十分だと思う。でかい滝は比較的容易に巻ける。二俣から先はスラブで行き詰らないように注意しよう。写真にある入渓して最初の滝は激シャワーで登ると痺れる。水量の少ない秋ならば登攀可能。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 5月でも登れると思うけど本流の水量が多いと渡渉が厳しそう。高原川にはアブはあんまりいない気がする。

<温泉>
割石温泉