2017年9月18日月曜日

高地岳北壁第一ルンゼ





現在登山界においてボルトなどの残置物を残す事は基本的に悪とされている。道具と技術の発達していなかった時代はいざ知らず、時は21.17世紀5.15dやE11も登られる時代である。才能が無く努力しない人間が自然を不可逆に傷つけて、後世のクライマーへ冒険性を絶つなという論理である。そりゃあ、自然に敬意を払いながら挑戦し学び、自らに真摯になるため登攀しているのだからそうしたい。では、個人地主が存在せず後世に遺恨を残さないような場合、自然への影響が非常に少ない場所ならば不問なのだろうか。

高地岳北壁はクラックが極端に少ない壁である。写真の通り泥が固まったように見える壁であるが、岩は硬い部分も多い。核心のクライミング自体はⅣ級程度なのであろうが、中間支点はおろか、ビレイポイントの構築すらままならない。初登でもないし、ボルトを埋設してまで登る必要も無いと判断し途中でクライムダウンして下降した。敗退したものの、取り付きから眺めるカールマルクスフェースや、円形劇場のような第一ルンゼ取り付きの景色は素晴らしく最高の登山であった。

見た感じクライミングはそれ程難しくは無さそうだし、ボルトでも打って登れば素晴らしい景色やそこでしか味わえない体験ができるだろう。登らなかったのは面倒臭く感じたからだ。雪崩の通り道であるここは一冬でボルトなんて無くなってしまうだろう。そして抜落したボルトはあっという間に酸化して地に帰る。岩は元々剥がれやすい上、周囲に生物の影は薄く自然への負荷は非常に少ないと推察される。先の残置悪説はクライマーの勝手な理屈である。クリーンと思われがちなクラッククライミングだって、その中に生息していた生き物の住処を長期間(或いは半永久的に)奪っているし、岩場に生える地衣類は生長が非常に遅く貴重な生物だがバリバリ剥がしていて何の倫理問題にもなっていない。結局、人の気分の問題ですべて人間側の狭い視野でしか考えられていない論理といえる。人間同士のお約束事が嫌で山に来たのに、またお約束に縛られるなんてとってもシュールだ。

高地岳北壁の登り方は個々人に選択の幅が有ってよいのではないかと思う。僕はせっかちなので、ちまちまと岩に穴なんか開けてられないし、人がやるのも待っていられないだろう。それに登りながら穴を開けるのは怖そうだ。加えて吝嗇なのでボルト代が気がかりである。こういう場所はふと気が向いた時にフリーソロで登るのが一番自然で楽しいのではないかと思う。また、登れない場所が有るというのも憧れと想像の余地があっていいものだ。何はともあれ凄い所なので誰しも一度は訪れて欲しい場所だ。

<アプローチ>
山峡パークに駐車し登山道を利用し取水堰堤まで。第一ルンゼは海川本流に滝となって落ちているので多分解る。出合いからルンゼを詰めるが、悪い草付きを詰める場面もあり結構緊張する。テラスからロープを出すことになると思うが、周囲には水が流れており大滝登攀という表現の方が的確である。下降は周囲を見る限り高地岳尾根が無難なようだ。

<装備>
脆い場所でのビレイポイントの作成用にジャンピングとボルト。岩が硬い場所はカムも使える場所も有る。ピトンも使える場所もあるが、岩のチェックは慎重に行いたい。足回りは沢靴でも十分。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。晩秋であれば水は涸れそうである。その場合クライミングシューズで登ると快適だろう。

<グルメ>
たら汁が名物だが、はっきり言ってそれほどでもない。量を食いたいのであれば「きんかい」で定食のご飯大盛りを注文しよう。日本昔話級のてんこ盛りが食える。宮崎海岸のヤマザキショップは定食屋に負けないほど美味しい大盛りカツ丼弁当が500円程で食える穴場。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

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