2018年6月17日日曜日

境川 笹小俣谷










富山県には二つの境川が存在する。南砺市を流れる境川は岐阜県との県境だ。大畠谷、ボージョ谷、フカバラ谷などの名渓を携えた有数のキラキラ水系で沢屋の間では名が知れた境川である。一方、本稿で紹介する境川は流程僅か13kmで海までの標高差1500mを一気に流れる新潟県との県境川である。こちらは沢登りという観点では地味な水系と言える。似虎谷などそれなりに沢登りが楽しめるらしいが、全体としてはパッとしない。白鳥山から犬ヶ岳西面の殆どが堆積岩で構成されているため、土砂の流出が激しいためだろう。土砂が詰まりきった鉄骨堰堤からその出水の激しさを推し量ることができる。海産性の堆積物がメインのためか、過去に寺谷からアンモナイトが産出していて、「寺谷の菊石」としてちょっぴり有名だ。

そんな富山・新潟の境川で最もポピュラーなのが笹小俣谷である。黒菱山は太美山層群というSiO2リッチな硬い岩で構成されているため、どの谷も遡行内容は期待できる。笹小俣谷は南東向きの沢で明るく朗らか、かつ楽しい沢。下部は開けた川原を快適に歩きながら、幾つかの小滝で遊ぶ事ができる。山頂へ合理的へ至るのは北支流なのでそちらへ入る。流れが西向きになるまで小さなゴルジュや小滝が続き楽しい登りとなる。慎重に読図をして稜線へ出ると山頂は直ぐ到着するだろう。黒菱山からの眺望は一望千金、気分は最高。筆者らは、登りでロープの必要性は感じなかった。日帰りで手ごろな沢としておすすめである。

<アプローチ>
車は標高100mの橋までしか乗り入れできない。ここから滝淵発電所まで林道を歩く。発電所から少し登った橋から入渓する。なお、450mにある取水堰堤へは道が付いているので下部をカットする事も可能である。沢を下降して車へ戻る場合も重宝するだろう。笹川の黒菱山登山道入り口に車を置けば苦労はない。

<装備>
懸垂下降用にロープ。

<快適登攀可能季節>
6月~11月。標高が低いので楽しめる時期は長い。

<温泉>
境鉱泉:含鉄塩泉の温泉。銭湯価格で温泉が入れるのが嬉しい。石鹸は備え付けてないので持参。

<博物館など>
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。シャクナゲとツツジの時期が素晴らしい。謎の置物も気になる。

朝日町歴史公園:縄文時代の不動堂遺跡が再現されている他、江戸時代町屋であった旧川上家の家屋が当時の状態を保ったまま移設されている。ここでは朝日町名産のバタバタ茶を自分で点てて試飲できる。12月~3月は閉館するので注意。

朝日町立 ふるさと美術館:昨今の大正アートブームで再注目の竹下夢二の作品を所蔵している。江戸~大正期、朝日町の泊は宿場町で大いに栄えており、その盛り場に夢二が訪れていたようだ。妻たまきとの破局事件の舞台は宮崎海岸だ。この情事の続きは朝日町の図書館で。

百河豚美術館:野々村仁清の作品を数多く展示している。デフォルメされた鶏が描かれコップもあり、仁清のモダンな感性を感じる事ができる。他にも話題の伊藤若冲や、尾形光琳に酒井抱一といった琳派ビックネームの作品も展示。

下山芸術の森発電所美術館:きらりと光る興味深い展示をやっている。こちらも12月~3月の冬季は休館するので注意。

杉沢の沢杉:地口か回文のような名称だが素晴らしい場所。田園と防風林の中にポツリ広がる湿地杉林で、まるでもののけ姫の森のようである。近年、入善乙女キクザクラという桜の新種がここで発見されている。この原木は未だ杉沢の沢杉でしか発見されていない。北陸は菊咲きの桜の品種が多いらしい。

帰りには生地の道の駅で新鮮な魚を買って帰るのもいい。

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