青海川の中では金山谷は比較的多くの遡行者を迎えている。もう一つの魅力的な支流であるアイサワ谷は下降路の手間と長さがあるためか、遡行記録は多くないようだ。しかし、源流釣り師には古くから知られた場所のようで、山岳渓流北陸編(つり人社)には魅力的な渓谷として紹介されている。
遡行のポイントは一目瞭然で下部ゴルジュである。出合いからゴルジュ地形となるが、川原であったり、ゴーロであったりと進捗は意外に早い。ゴルジュは主に片麻岩(石灰質多め)で構成されているようで、金山谷の黒っぽい雰囲気とはちょっと違う印象だ。時折泳ぎを強いられる小滝が現れる。筆者らの遡行時は渇水状態であったが流れは早く感じた。ここは水量が多いと厳しいところだろう。快適なクライミングとハンマー投げによる綱引き泳ぎで突破した。一旦ゴルジュ地形が弱まるところには取水堰堤の建設が進められている。青海川はデンカによっていまだに開発が進められる河川だが、水枯れを起こす青海川本流をみると川が死んでいるようで悲しい。ちょっと遡行に水を差されるが気を取り直してゴルジュ後半へ向かおう。後半は直登が難しい滝も出てくるが巻きが可能な地形となるので楽である。ゴルジュを抜けると沢登りとしては終了で、あとは釣り師の世界となる。栂海山荘へ向かう支流の850mには美しいスラブ滝がかかるが、そこが魚止めとなっている。以降酷い藪漕ぎもなく比較的快適に登山道へ出ることができるだろう。
後半が緩やかで間延びした印象となるので突破遡行重視派には不満が残るかもしれない。こういうところは山全体を深く味わうのがいい。遡行だけではなく北又谷や西俣谷からの下降として使うのもいいかも。
<アプローチ>
車で橋立まで行きそこから林道を走りアイサワ谷出合い付近の工事現場に駐車した。近年デンカ株式会社によって新たな発電所が建設され、アイサワ谷ゴルジュ内に取水堰堤の建設も進められている。工事車両が多く通行しているが、基本的に大平峠から続く林道は公道なので利用に問題ないはずだ。下降は車を2台使用するとスムーズ。その場合坂田峠が最も楽に降りられる。車が一台の場合は金山谷を下降するか、坂田峠から金山谷右支流を下降するのがいいと思う。
<装備>
ゴルジュ用に適当にパッシブプロテクションあれば十分
<快適登攀可能季節>
7月~10月。オロロや蚊など害虫が多い。これにより7月も登れると思うが7月下旬~8月中旬は避けたほうが無難。
<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、宝温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、宝温泉、地中海などナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能