2021年6月20日日曜日

小川 下若狭谷












 小川は黒部川の陰に隠れた存在ではあるが遡行対象となる谷は多い。その中で曲りなりにも全国的に認知されているのは尾安谷だけと言える。富山の沢愛好家であれば、小さな険谷、打谷中俣を思い浮かべる方も多いはずだ。

 では、下若狭谷はどうだろう。少なくとも私はその名前を知らなかった。地図で面白そうな沢だなぁと目を付けていたが、如何せん名前が判らないので愛着が湧かず後回しにしていた。訪れてみれば知名度0となっているのが全く謎、ピリ辛うまい渓であった。

 小川温泉からすぐ河鹿橋で出合う谷なので絶対に間違うことは無い。堰堤が連続する出だしは右岸にうっすらと残る踏みあとを辿り巻く。標高310m二俣までは問題は無い。序盤に見られる赤いカリ長石を含んだ花崗岩は打谷や布施川と同じ質である。筆者らは右俣を遡行し、左俣を下降することとした。しばらくは快適な小滝登りが楽しめるが、すぐにゴルジュとなる。ゴルジュ内も登れる小滝が続くのが有難い。筆者らは6月中旬に訪れたが、スノーブリッジを潜りながらの遡行となった。地形図が急峻となっている箇所はもれなく20mクラスの滝が付いてくる。この流域に特徴的な花崗岩スラブ滝で手が付けられない。巻きはそれほど悪くないものの慣れていないと往生するはずだ。ゴルジュ地形が終わっても滝は続く。処理できる滝ばかりだが、連続するので緊張が解けることは無い。稜線までは予想通りちょっと際どい泥登りが続くがヤブコギは少ない。

 973mピーク付近から左俣へと下降する。この稜線の地形は迷いやすいので、下降点には細心の注意を払う必要がある。下降し始めは意外に調子よくクライムダウンが楽しめる。このまま行けるかなーと思ったら大間違い。徐々に緊張するクライムダウンが増えてスラブ滝の巻き降りが多くなる。ゴルジュ地形になってくると20mクラスも2~3つほどあったような気がする。

 山は小さいながらも遡下降を終えるとおなか一杯となる。下若狭谷の下降はハマり易い要素が多いので足並みのそろったパーティーで臨んだ方がよいだろう。

<アプローチ>
小川温泉の駐車場をお借りする。ホテル前ではなく、登山者用の駐車場を利用しよう。
車一台であれば左俣と右俣を遡行下降組み合わせることになる。下降が難しい地形なので、時間がかかると思った方が良い。車二台で負釣山の登山道を利用すると時間的余裕は生まれるだろう。或いはちょっと長いけども音谷を下降するのも興味深い。

<装備>
スリングだけで大丈夫だと思うが、念のためピトンとカム。

<快適登攀可能季節>
7月~11月

<温泉>
小川温泉元湯:かつて日帰り入浴は不老館で安価に楽しめたが今はホテルおがわの高級温泉のみ。

<博物館など>
護国寺:別名石楠花寺。とやま花名所に選ばれるだけある庭園。シャクナゲとツツジの時期が素晴らしい。謎の置物も気になる。

朝日町歴史公園:縄文時代の不動堂遺跡が再現されている他、江戸時代町屋であった旧川上家の家屋が当時の状態を保ったまま移設されている。ここでは朝日町名産のバタバタ茶を自分で点てて試飲できる。12月~3月は閉館するので注意。

朝日町立 ふるさと美術館:昨今の大正アートブームで再注目の竹下夢二の作品を所蔵している。江戸~大正期、朝日町の泊は宿場町で大いに栄えており、その盛り場に夢二が訪れていたようだ。妻たまきとの破局事件の舞台は宮崎海岸だ。この情事の続きは朝日町の図書館で。

百河豚美術館:野々村仁清の作品を数多く展示している。デフォルメされた鶏が描かれコップもあり、仁清のモダンな感性を感じる事ができる。他にも話題の伊藤若冲や、尾形光琳に酒井抱一といった琳派ビックネームの作品も展示。

下山芸術の森発電所美術館:きらりと光る興味深い展示をやっている。こちらも12月~3月の冬季は休館するので注意。

杉沢の沢杉:地口か回文のような名称だが素晴らしい場所。田園と防風林の中にポツリ広がる湿地杉林で、まるでもののけ姫の森のようである。近年、入善乙女キクザクラという桜の新種がここで発見されている。この原木は未だ杉沢の沢杉でしか発見されていない。北陸は菊咲きの桜の品種が多いらしい。

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