2022年8月8日月曜日

虫川本流

 
















 何度でも述べさせていただきたく存じますが、頸城の山は面白い。物凄く近い山域に高圧変成した古い時代の岩、火山の岩各種が混在しており、岩質が変わると遡行内容が豹変することがある。小さな流域で色々な渓相が楽しめると贅沢な気持ちになれる。

 頸城の山の中でもお気に入りなのは黒姫山、千丈峰、明星山周辺だ。山域と言っていいのか分からないくらい小さな部分なのだが濃度が凄い。その中でも不動滝を有する虫川は綺羅星のごとく現れる岩々に心ときめく。不動滝は下部は海底火山の火砕流みたいな岩、中盤から上部はチャートで泥くさ大滝登攀が楽しめる。その上の渓相も姫川コンプレックスと呼ばれる堆積岩はメランジ様を呈しており、チャートや緑色珪長質凝灰岩そして泥岩が合わさった宝石のような滝が面白い。真っ赤な岩の直後にマーブル模様の滝が現れて度肝を抜く。気分上々でスキップしながら川原を歩くと標高550mくらいでのっぴきならないゴルジュになってくる。ここは安山岩質の溶岩や凝灰岩からなるようだ。出だしの滝は登ってもいいし、左岸から巻いて懸垂で降りてもいい。次の滝は下部はショルダーで超えると快適なクライミングである。地形図で滝マークがあるところの手前でもの凄いゴルジュになってきて嫌な予感がしたらところ、想像通りハングを持つ二段60m滝が現れてゴルジュ突破THE END。ゴルジュ入口まで下降して弱点となる右岸ルンゼから大高巻き45分でハング滝の上に降り立つ。大高巻きも悪いところがいくつか出るのでロープを出した。ここから海谷のような砂岩となり浸食の美しい釜を持つ小滝で遊べる。標高800m付近で再び滝とゴルジュとなるが直登は叶わず、再び悪い草付き木登りを強いられる。これを超えればあとは簡単でヒヨドリ池まですんなり行ける。長く思い続けたヒヨドリ池は静謐で迎えてくれた。感動の土石流は週末ごとに発生するが今回のは特に大規模であった。惜しむらくは紅葉の盛りでないことだ。ヒヨドリ池南側には不思議な道が尾根沿いに薄っすらとあり、これを使うと藪漕ぎはゼロで快適に登山道へ至る。しかも、ブナと杉の大木が混生する林は大変美しいのでここを歩くのをお勧めする。登山道へ合流したら石灰岩へ切り替わる急峻な尾根を登って山頂へ行き付加体のすべてを味わおう。

 虫川という川は頸城の魅力が凝縮された沢だといえよう。これほど良い沢と分からず不動滝、不動滝より上部それぞれを日帰りで登ったのが悔やまれる。一泊二日で不動滝から明星山を登りアサギリ沢を下降する計画であればどれほど素晴らしかったか。大滝登攀から美しい河原を歩きゴルジュを見物して池を眺め山頂の絶景を堪能する。紅葉の盛りであれば一層よいだろう。まだ訪れたことのない幸福な皆さんには虫川で最高の登山をしてほしい。

<アプローチ>
青海から行くならば岡倉谷林道を利用する。千丈峰の大ギラ、小ギラ、中ギラのスラブを見物しながらの運転は楽しい。ただ、ちょっと運転距離が長くなるので虫川集落から行く方が合理的である。ヒヨドリ池まで行き明星山頂を踏むと完璧登山。日帰りならば一台車を登山口へデポしておくといい。一台の場合は一泊で不動滝からスタートして明星山頂経由でアサギリ沢を下降するといい。泊まるのであれば標高700m付近かヒヨドリ池周辺が良い。オンサイトで不動滝から明星山頂を日帰りを狙うのは非常に難しいと思うので推奨しない。

<装備>
カム少々、ピトン数枚、足回りはフェルト。

<温泉>
帰りしなならば、朝日町の境鉱泉、たから温泉といったナトリウム泉の温泉がある。500円くらいで入浴可能

<快適登攀可能季節>
7月~11月。虫が少なく快適な時期がよい。秋の紅葉がいいと思う。

<博物館>
糸魚川有るフォッサマグナミュージアムは素晴らしい。ここでは石の鑑定も行っているので、山で見つけた気になる石を鑑定してもらおう!(一人10個までです)

翡翠園:散策可能な日本庭園。よく考えられていて、どこから見ても趣が有る。島根県足立美術館の作庭が有名な中根金作による庭園である。構成から考察するに、彼はあの巨大なヒスイ原石を嫌悪していたのではないかと邪推してしまう。

玉翠園:同じく中根金作による庭園。こちらは観覧庭園でガラス越しにしか眺めることは出来ない。柔らかな丘による高低が印象的。

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