黒部別山の北尾根は急傾斜ブッシュの比較的単調な尾根であり、技術的にはそれ程難しくない。黒部別山の難しさは荷物が重たい中で登らなければいけないことにある。大荷物では難しいので、空荷で登ったのちに背負って登り返し戦略を取らざるを得ない。北尾根の核心部は1050m~1470mまでである。ここは傾斜が最も強いうえ尾根が細いので慎重に登りたい。1470m以降は若干尾根は広がるものの、雪壁の傾斜は相変わらず強いのでロープの出番は相変わらず多い。壁尾根分岐からは楽勝かと思いきや北峰へ登る直前がややこしい。コルへの下降は土嚢袋等を利用した懸垂か慎重にクライムダウンが必要となる。更に3ピッチロープを伸ばして北峰へと至る緩傾斜帯に出る。北峰から黒部別山山頂までは危険なまでに美しい八ツ峰が登行意欲を煽情する。八ツ峰へ向かうのか、真砂尾根へとエスケープするのか判断を迫られるこの場所は緊張感があっていい。
それなりに手間がかかるものの十字峡を横断して取り付く黒部別山の尾根では最も容易なので十字峡の雰囲気を味わい次の課題を見定めるには好適である。お土地柄的に気軽に訪れるのは難しいかもしれないが、そこを何とか打ち破りぶらり散歩旅に出かけるつもりで行ってみてくださいませ。
<アプローチ>
後立山を越えて十字峡に至る経路としては牛首尾根か岩小屋沢岳北西稜となる筆者らは後者を利用した。1583mのピークから十字峡に至る尾根を下降して1150m付近で西へ向かい、傾斜が強くなった所から懸垂下降とする。1583mピークは広河原周辺の壁尾根側壁の眺めが素晴らしいところだ。懸垂下降の出だしは藪だらけなので細かく切っていくといい。12月であれば十字峡より200mくらい上流であれば膝上くらいの水量の渡渉で行ける。ここは北尾根からのルンゼ末端となっているので2月ならばスノーブリッジが懸かる可能性がある。ルンゼを3ピッチ登ると北尾根1040mの僅かに平坦に示されている箇所へと至る。この辺りは意外に尾根が細いが1050m直前であれば幕営できる。このほか尾根の幕営適地としては1470m付近、1800m付近、壁尾根合流地点が挙げられる。壁尾根合流点からハシゴ谷乗越までは風が抜ける所が多く、快適に泊まれる箇所は多くない。なお、北峰からハシゴ谷乗越まで時々黒四から携帯電話の電波が得られるので最新の気象情報の入手して八ツ峰へ突入するか判断可能。
<装備>
基本アックスは1本で良いが1人はダブルアックスができる本数をパーティーで準備するのがいい。荷揚げやユマーリングを考慮して軽量細径スタティックロープを持っていくと大変都合がいい。完全に保証範囲外の利用方法だが、確保にも使用するのが装備が軽くて便利。軽量細径スタティックロープへ噛ませる登行機はタイブロックではなく必ずスプリング付きの機種にしよう。十字峡の渡渉時の足元はネオプレーンソックス必携。渡渉ばかり気になるが、実際には雪の上へ上陸するための道つくりが大変である。この時もネオプレーンソックスのまま雪を踏み固めたり掘削したり作業するのがいい。横断後はスコップの上で燃やせば荷物にならない。標高が低くむちゃんこ濡れるので出来ればシェルは新品で臨みたい。叶わないならば最善の防水&撥水加工を施して。
<快適登攀可能季節>
12月末~3月 根雪が付いていなかったり、雪が無かったりすると厳しい藪漕ぎになって不快かも。
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