2023年1月25日水曜日

足尾松木川の岩場 ウメコバ沢 チャンピオン岩稜












足尾銅山は日本公害史に名を刻む地である。一帯は鉱山からの排煙(亜硫酸)による酸性雨や精錬による伐採により禿山となったため出現したという。人間の活動により脈々と続いた自然環境が一瞬で亡くなるのは何だか寂しい。酸性土壌において生じる金属イオン溶出は生物にどのような影響を及ぼすのだろうか。酸性イオン種にも依るだろうが、亜硫酸ガス起因とするならばカルシウムイオンが固定がされると推察される。さらにアルミニウムイオンが溶出することでリン欠乏が生じる可能性も高い。後述するように酸性岩類である足尾では一旦酸性化した土壌はそうそう元に戻ら無さそうである。そうなると植物根の伸長は阻害される。鉱滓由来の高濃度の重金属イオンの存在も見逃せない。さりとて、自然はしなやかで強かである。酸性土壌と化した当地の細菌および真菌といった微生物相は他の地域とは異なっているだろう。特異的な土壌環境が維持されているとすればこの先一風変わった動植物相が現れ、ここにしかない貴重な自然環境となる可能性だってある。この辺は気がかりなのでいずれ文献を調べてみたい。環境を考察するためには無機化学、植物生理、地質など考えることが多く実に楽しい。

松木川沿いの岩場も公害によって出現した岩場だそうだ。ウメコバ沢の岩場は日本とは思えない物凄い景観をなしており、クライミングもとても面白い。白亜紀後期の流紋岩という岩は白山山域を含む岐阜に広く分布している濃飛流紋岩と似ている。松木川の岩場は白山と異なり雪崩によって磨かれていない事、南側からの圧力(少し南は付加体)によりクライミング向きの岩場になったのかもしれない。

チャンピオン岩稜はこの地を代表する看板岩稜。クライミングの内容と景観は素晴らしい。Ⅳ~Ⅴが6ピッチ続いたのち、5.11クラスの岩壁が現れる。以前は5.9程度だったらしいが崩壊により難しくなったとのこと。時間の都合で4ピッチ程で戻ったのでこの岩稜を全て味わっていない。富山からは遠いけど、錫杖とはまた違った味わいのある岩場で頑張ってくる価値は十分ある。何にも増して目新しい環境は想像力を掻き立てられるもので、旅の良さを味わう事が出来る。日光観光と合わせてどうぞ。

<アプローチ>
富山からは言わずもがな遠い。柏崎から一旦国道へ降りて小千谷ICより沼田へ。更に県道を使って山を越えて国道122を経て銅親水公園駐車場へ。そこから工事中の林道を歩いたのち、登山道と化した旧林道を歩く。広い川原の松木沢本谷を歩いてウメコバ沢へ入り口へ。ここは渡渉となる。ウメコバ沢内は大変ありがたいことに、しっかりフィックスが張られている。とはいえ急傾斜の谷を登り、へつるので中々緊張する。チャンピオン岩稜への取り付きは非常に複雑である。中央岩峰正面の比較的広いルンゼを70mくらい詰めてコルへ至り、一旦歩いて下降すると漸く取り付き。各ピッチの終了点にはハンガーボルトが埋設されており分かり易い。下降はクライマーズライトとなるルンゼを利用する。ルンゼ内で傾斜が強いところは懸垂となる。

<装備>
4番までのカムをワンセットで何とかなる。+αで持つならば1番以下が有効。ピトンは使用しなかったが有ったら使えるかも。

<快適登攀可能季節>
多分年中楽しめる。

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