冬のクライミングはどんなシーズンであっても場所を選べば大概どこかは遊べる。また、土砂降りの雨でない限りはだいたい北アルプスで遊ぶことができる。有明山は北アルプスの壁の中でも最も降雪が少ない地域である。冬型でも比較的晴天率は高いうえ、そこら中に広がる岩壁と氷が魅力的で、富山から足を延ばしてでも訪れたくなるエリアだ。深沢の岩壁といえば右俣正面壁が一番人気。なかでも中央ルンゼは北アルプスの隠れた名氷瀑である。そんじゃ、左俣奥壁はというと恐らく誰も気に留めてはいない。奥壁の概念図は松本CMCの古い資料にあるくらいで雰囲気が推し量れる写真は無い。そんな状況であればその引力に抗うことは不可能で気が付いたらそこに居る。
辿り着いた右岩壁は霧が懸かって上部まで見通すことができない。それじゃあ、と移動した左岩壁は薄っすら下部が見えるだけで判然としない。結局、右岩壁の唯一開拓されているルートに取り付く。左俣右岩壁の右。左右に振れたバイブスはソニックブームを放つコマンドを想起し悪くない。最弱点である浅いスラブ状凹角をルンルンで登り始める。カンテを跨いで右隣りのルンゼに入ると5.8くらいの楽しいクライミングで盛り上がる。ここは要所でがっちりと支点が取れるが、崩壊しそうな箇所もあるので、高温時には細心の注意を払いたい。続く草付き壁もハングやスラブトラバースなど多彩な内容で面白い。最後のピッチは岩交じりの草付き灌木を登り尾根上へ出る。合計4ピッチと少々短いが十分クライミングを楽しめた。
薄っすらと見えた右岩壁全景から察するに、これ以上ラインを引くのは難しそうな印象を受けた。過去登られた記録においても右岩壁はこれ1本であるのも相応の理由があるのだろう。奥壁の再訪は左岩壁に懸かる氷柱がバッチリ繋がるような好コンディションを選んでかな。
<アプローチ>
奥壁は深沢左俣1950m付近に位置し、右岩壁と左岩壁という二つの壁で構成されている。右俣の正面壁よりも標高が高いため、比較的コンディションは良好なことが多いと推察する。奥壁の右岩壁と左岩壁は小尾根で分割されており繋がってはいない。幅が狭い岩壁2つが近接していると考えたほうがいい。
有明山の地形は厳しく容易な尾根は無い。下部から尾根のアプローチを試みても途中に現れる岩壁と深い藪に苦しめられる。そんなわけで奥壁のアプローチは週末系冬壁のアプローチの中で最も難しい部類に入る。シンプルに深沢左俣を下から遡行するか、稜線から下降するという2通りとなるだろう。筆者らが訪れたときは氷の発達が悪いシーズンだったので稜線からの下降を採用した。黒川沢から山頂を目指すが、白河滝を登ってから山頂を目指すのがお買い得感があるので推奨したい。南峰から尾根を下降するが、2050m付近でルンゼへ下降する途中の岩壁帯に出会う。この岩壁を懸垂下降2回でやり過ごす。ルンゼに降り立ち、右へトラバースして右岩壁へ通じるルンゼに入ればよい。右岩壁へのルンゼを50mくらい下降して右へトラバースすると左岩壁に至る。山頂ベースの場合、右岩壁を登ったあとは直ぐに下降した尾根に乗れるので意外に早く山頂へ戻ることができる。黒川沢本流下降点となるコルまでの主稜線は稜上が藪と岩で複雑である。晴れていても時間はかかるし、夜間の下降はそれなりに難しいことに留意されたし。
<装備>
カム0.2~#2まで2セットあれば安心。あとは#3とボールナッツの小さいのがあれば使える。
<快適登攀可能季節>
1月~2月 壁が南向きなので多少寒気が入るタイミングの方が安定している。
<博物館など>
碌山館:荻原碌山やその仲間の作品を展示。鉱夫、デスペア、手(高村光太郎)等の有名作品がある。建物も趣がある。安曇野の山に来たらまず行きたい。
碌山館:荻原碌山やその仲間の作品を展示。鉱夫、デスペア、手(高村光太郎)等の有名作品がある。建物も趣がある。安曇野の山に来たらまず行きたい。
安曇野市豊科近代美術館:宮芳平という作家の作品が良かった。特に詩集「AYUMI」は熱がこもっている。
高橋節郎記念美術館:漆を用いた絵画がとても興味深い。
穂高郷土資料館:穂高町で使用されていた狩猟用具や農耕用具が展示されている。二階には近辺で出土した保存状態の良い縄文土器が数多く展示。面白い。
安曇野ちひろ美術館:いわさきちひろの作品を中心とした絵本の美術館。いわさきちひろは絵本を俳諧になぞらえて表現していたとか。人となりを理解して味わえるの展示となっているのが面白い。
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