花の時期に黒部五郎へ登りたいと思った。しかし、黒部川上流の五郎沢から登るとなると折立の大混雑や山中の騒がしさが辛くて楽しめないだろう。南側の金木戸川には滝マークがある急峻な谷が山頂まで続いている。これならば静かで面白い登山ができると思ったのである。
長い林道歩きをこなして古道歩きに興じようとした途端に道が荒廃した。見切りをつけて沢へ降りる。取水されていない金木戸川の流れは重い。本流遡行の醍醐味を味わいながら目標の1625m右岸支流に到達する。
出合は美しい2段滝になっておりこれは快適に直登できる。スラブ状小滝を幾つか挟んで美しい30m直瀑が現れる。直登は難しいのでロープを出して右岸ルンゼを登る。沢を復帰し暫しゴーロとスラブ小滝を登ると再び40m級の直瀑が登場。この直登も難しいので巻きあがるとスラブを基調とした川原になる。さあ、あとは体力勝負の詰めだな。と思っていたら登って楽しく美しい小滝が連続して全然飽きさせない。地形図で薄っすらゴルジュっぽくなっているので何かあると感じたのが正解であった。側壁のニッコウキスゲが余りに美しくぬらりと悪い巻きにも彩りがある。地質図では花崗閃緑岩などと記載されているが、斑れい岩らしき岩と礫岩も有ったりして良く解らない。しばしば断層みたいな直線的なボロイ層もあったがあれは何だろう。その後も小滝とナメを楽しんで稜線直下へ。期待通り百花繚乱の花盛りで月の裏側を見たような感動に打たれた。短い開花のさなか慌ただしく働くマルハナバチが愛おしい。斜面に目をやるとコバイケイソウの当たり年のようで正に大花畑である。黒部五郎の山頂から眺めるカールに残雪が驚くほど少ない。植物や動物たちはこれからどうなるのだろう。残された短い時間ではあるが自然の変容を観察するのが楽しみでもある。
下降した谷はややオープンとなっている地形で上部は易しく快調に下れる。こちらの谷の方が堆積岩の割合が多く巨岩やゴルジュは殆どない。本流出合から高差300mくらいはクライムダウンと懸垂の連続となり少し時間がかかる。最後に核心があるというのはクライミングにおいて一番面白い。本流に着くとほっと安心。狙い通り静かに沢登りをしながら花を堪能できるいい山登りであった。
誰が登るかわからない沢ではあるが登りごたえ十分であり遡下降を1日でこなすと身心ともに充実する。登りたい山を基準に沢を選ぶと時に嬉しい発見がある。この沢だけを目的にすると所要日数と内容が物足りない人もいるかも。そんな場合は夏休みに黒部源流逍遥ツアーや上ノ廊下下降と組み合わせるのはどうだろうか。北アルプスの深みを堪能する遊びはいいものである。
<アプローチ>
双六ダム手前に駐車して歩く。双六ダムはR8年まで工事中のため工事実施日は上流に車を入れる事が出来ない。昔は金木戸川の上部まで林道が入れたものだが、今はゲートは解放されていないし、鍵は割合厳重。1192mの最終取水堰堤から先だが、以前は歩道があったが今回崩壊したのか道が見当たらなかった。さっさと諦めて川へ降りると渡渉と巨岩を登下降する本格本流遡行開始となる。金木戸川本流は水量が多いのでコンディションよっては行き詰まるので注意。幕営は1570mくらいの右岸に適地がある。1625m右岸支流を登った後は1580m右岸支流を下降した。上部は非常に下降しやすいが1850mからクライムダウンと懸垂を繰り返す沢となる。
<装備>
カム一式、ピトン各種、足回りはラバーソールがいいと思う。
割石温泉<快適登攀可能季節>
7~9月 残雪の量次第だが7月から登れるケースもある。金木戸川本流の水量が最も注意すべき事項かもしれない
<温泉>
<温泉>
<博物館など>
江馬氏館跡公園:江馬氏は室町時代~戦国時代に北飛騨地域を治めた豪族武将である。その時の武将が室町時代に命じて作庭させたのが会所庭園である。来客をもてなす為に作られた石庭は失礼ながら地方豪族が設計したとは思えない瀟洒さで都の風を感じる。作庭費用は鉱山で得た資金を投下したのであろうか。飛騨が天領となった元禄以降は田に埋められてしまったが、昭和に発掘され再現されている。すごくいい庭なのにお庭を眺めながらお弁当を食べられるというフレンドリーさよ。
高原郷土館:鉱山資料館、神岡城、旧松葉家と3つの博物施設が集まった公園。神岡城内では神岡の歴史を概観でき、鉱山資料館では昭和における採掘~精錬までの工程をビデオで学習できる。鉱山資料は少し情報が古いものの鉱業の現場を知ることができるので貴重。そして最も推したいのが松葉家。神岡に現存した合掌造りで農具、山仕事道具(刃物含む)養蚕具が3階建ての中に所狭しと並ぶ。背の高い人は上階で頭をぶつけないように注意。
なお、近現代の生活に関する書物は「奥飛騨山郷生活文化の記録」が面白く、土木開発については「土と木と水と人と : 建設概史」が概観にふさわしい。どちらも国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可
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