2020年2月8日土曜日

大熊山





富山県の県木である立山杉。根っこに近いところの幹は非常に太いが、地面から比較的近いところから枝分かれする樹木が多い。これは若木のときに北陸特有の重い湿雪と強風に叩かれて枝が折れながらも生長したからなんじゃないかと推察するところである。富山の気象と地質が育んだ特異な森の景観だ。その中でも上市川、片貝川、称名川流域に自生する立山杉に際立った巨木が多いような気がしている。片貝川上流には洞杉と呼ばれる岩を抱えた立山杉が自生しているが、これがまた素晴らしいビジュアルなので一度は訪れもらいたい。

大熊山の良さは立山杉の巨木とブナの美しい森林にある。1264mまでは立山杉が多い。はっとするような樹形の巨木も幾つかあり、急登も苦にならない。1200m付近からはブナ林に変わる。かなりの急激な変化なので面白い。ここからは、だらりとした地形が山頂まで続く。積雪期はルート取りに注意が必要だ。筆者が訪れた際はど吹雪だったので、何も見えなかったが展望が素晴らしいと聞く。木々達の声をゆっくりと聞きながらまた訪れるとしよう。

<アプローチ>
小木曽谷右岸の尾根に2010年ころに拓かれた登山道が付いている。赤布も豊富にあるので迷うことは無いと思う。小又川の大きな橋から林道に入って、大きくカーブするところから小道へ入り尾根に入る。冬はここまで伊折のゲートから徒歩。

<装備>
冬~春はワカンなど冬山装備

<快適登攀可能季節>
通年。

<温泉>
アルプスの湯、ゆのみこ温泉

<博物館など>
滑川市立博物館:上市町のイメージが強い早月川だが、人の住んでいる殆どの流域は滑川市を流れている。流域の自然と人の営みをバランスよく知る事ができる。手の込んだジオラマも学習の一助となる。

西田美術館:ロシアイコンや曼荼羅が展示されている。そして剱岳の資料が豊富。魚津岳友会の会報が熱い。

大岩山:行基菩薩の石仏は大迫力。夏はそうめんが名物で多くの観光客が訪れる。

富山県薬用植物指導センター:5月中旬に芍薬の花が満開になるとても綺麗。五月の連休より少し後が見頃になる。芍薬は生薬として用いられるので栽培されている。有効成分はペオニフロリン。有名なのは甘草との組み合わせたもので芍薬甘草湯。グリチルレチン酸との組み合わせである。

2020年1月27日月曜日

霞沢岳西尾根






普通の尾根である。と、霞沢岳西尾根は一言で片づけることが出来るのだが、何事も普通を普通にこなせることが第一歩。雪山を初めて間もない人にお勧めしたい尾根である。

ルートの大半が樹林帯なので環境としては厳しくない。吹き溜まりは多少ラッセルになるものの、急傾斜帯は強い西風によって雪がついてない事も多い。こういう場所では氷化した土に固い氷が付着している。そのような場所ではアイゼンの足運びを訓練できるだろう。頂上のちょっと手前で尾根が一旦細くなり簡単な岩稜が現れる。技術的には大したこと無いが(無いために)油断しないようにしたい。最後は広くなった山稜を気持ちよく歩いて山頂へ。穂高岳沢側の眺望がすばらしい。

雪山要素を十分に含んでいながら、あくが無くさっぱりとした味わい。キャラ濃い目が揃った北アルプスの中では、勝手のいい雛壇芸人的立ち位置だ。

<アプローチ>
国土交通省の砂防事務所付近から北側へと尾根に取り付く。上高地へ下降する調子のいい尾根が無いので同ルート下降が無難。ちなみに、六百山北尾根は岩稜交じりの藪尾根で下降は意外と手ごわい。日帰りで楽しめる尾根だが幕営の練習を兼ねて泊まるのもまたよし。抜群の場所は無いが、そこそこの場所ならば随所にある。

<装備>
念のためロープとスリング少々。

<快適登攀可能季節>
12月~3月 厳冬期だと尾根上を吹き抜ける強い西風により着雪が少ない事も多い。藪が五月蠅い箇所もあるが、踏みあとはしっかりしている。 

<博物館など>
穂高岳周辺の地質は原山智・山本明著『「槍・穂高」名峰誕生のミステリー』に詳しい。ぱっと見、前穂東壁は花崗岩ではなさそうなのだが果たして。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

2020年1月15日水曜日

明神岳2263m峰 西壁大洞穴左












西壁S字ルンゼのゴルジュに入ると右側にスラブ凹角がなかなかのスケールで広がっている。その上部を観察すると立派な洞穴が見える。この凹角から取り付いてあとは適当に登るというのが、西壁第二フェースの粋な冬壁スタイル。洞穴手前から右へ行っても草付きブッ差しクライミングが楽しいし、洞穴左を直上して左面(S字ルンゼ側)を登れば草付きと岩のミックス壁、洞穴左を直上後に右に入ると大ハングを持つ威圧的な岩場がある。いずれのルートも洞穴までは大体同じライン取りになると思う。上部の派生ラインを登りこみたくても出だしから2P目となる脆くて支点が取りにくい岩場が非常に嫌らしいので、「忘れたころ」に上部の派生ラインを登ろうという気分になる。

洞穴左の弱点を突いていった場合、小リッジをトラバースして草付きの窪みを辿る。そののち、灌木が疎らに生えた岩場を登り尾根へトップアウトする。洞穴以降は明神にしては比較的支点が取り易い。

下降の難しさも明神の魅力。S字ルンゼを下降するか、同ライン中に目星をつけた藪で懸垂するかの判断が肝要。加えてS字ルンゼは雪崩頻発ルンゼなので天候判断も重要となる。錫杖前衛フェースとは違った、登山している感を深く味わえるよき岩場なり。

<アプローチ>
S字ルンゼの入り口は樹林帯の何でもない所で非常にわかりにくい。初めての場合、遠目で眺めて取り付くとよいと思う。下降はS字ルンゼのコルまで行くか、同ルート下降。同ルート下降の場合ロープは60mでないと難しくなる。

<装備>
イボ数本、ピトン薄刃~ロストアローサイズ。カムはあまり有効でないが0.2~1.0は使える場所がある。潅木で支点を取るのでスリングは多目に。

<快適登攀可能季節>
12月~3月上旬くらいか。西面は南面、東面と比べると遅くまで楽しめそう。

<博物館など>
福地温泉で日本最古の化石が発見されている。年代は古生代オルドビス期~デボン紀。即ち5億年~3億6000年前である。残念ながら冬期登攀後は観察できない。

<温泉>
坂巻温泉、平湯温泉

2020年1月6日月曜日

滝谷 第二尾根P1フランケ








滝谷の第二尾根といえばP2周辺芝工大、早大、ジェードルルートなどが威圧的な雰囲気を持っていてメジャーである。P1フランケはそれに比べると傾斜が緩く短いので地味な印象は否めない。しかし、気象条件に恵まれない冬季は短時間でも登ることが可能という点で利用価値があるともいえる。

1P目出だしから岩が脆い凹角で結構手ごわい。支点が取りにくいのでベルグラが発達していない条件では注意が必要だ。少し広いバンドに出てから左の凹角に移り高度を稼いでいく。全体の傾斜は緩いが部分的に強傾斜の場所は緊張する。4Pで北山稜最上部へと抜ける。手で持てるホールドが乏しいのでフッキングを楽しみながら登りたい。

<アプローチ>
厳冬期は涸沢西尾根をアプローチする。3月~4月は雪の安定したときを狙って滝谷を遡行するとよい。条件次第では厳冬期も滝谷遡行から取り付ける可能性はあると思う。取り付きはB沢のコルからB沢を標高差150mくらい?下降したところ(ぼろいフィックスが垂れている)から10m程度登ってから右へトラバースしてクラック尾根を乗り越す。この右トラバースは岩が脆く悪いので注意が必要。さらに右へトラバースし第一尾根も過ぎてP1へ向かうルンゼに入る。ルンゼどん詰まり左の凹状から登攀スタートである。氷雪が発達している3月では、B沢下部のP1へ通じるルンゼ入り口から取り付くことができるようだ。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン各種

<快適登攀可能季節>
12月~4月。当然夏も登れると思うが、岩がぼろいので冬の方が快適だと思う。

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2019年12月26日木曜日

不帰西壁 Bルンゼ~中央チムニー







クライマーを引き付けるルートの条件は名前で決まる。と言ったら過言なのだが、私的には6割くらい名前なんじゃないかと思う。山では特にそうだ。注文の多い料理店、氷のリボン、逆鱗といった名詞小粋系名称なんか都会的でそれだけで登りに行きたくなる。一方、古典的ではあるがダイレクト、主稜、中央といった主人公をゴリゴリ主張する描写名称も惹きつけられるものがある。

それなのに「不帰西壁の中央チムニーを目標としています!」って人には出会ったことないのは、残りの4割によるものだろう。確かに不帰西壁はスケールはちょっと小さい。しかし、クライミングの楽しさ瞬間最大風速は名クラシックと比肩する。1P~2P目はBルンゼを詰めるが、ちょっと被った箇所もあり地味に悪い。ここはスラブっぽい抜け口が味わい深い。3P目中央ルンゼに入るとワイドクラックから氷の詰まったチムニーと息切れする内容だ。ルーフ下からチムニーへの入り口はフッキングが楽しい。最後4P目は凹角を登って右折するとプロテクションの取りづらいフェース。傾斜が意外に強いので侮れない。ロープの流れが悪くなるので、凹角出口で一旦切った方がよいかもしれない。

中央の名に恥じない堂々たる内容。これが錫杖岳の壁にあったら人気のショートルートとなっているはずだ。いの一番を主張する第一尾根とともに不帰西壁の風神雷神としてクライマーを待ち受ける。

<アプローチ>
Ⅱ峰南峰、北峰間のコルからルンゼを下降する。すぐ左手に見える顕著な岩峰が第一尾根である。Cルンゼを下降して傾斜が急になるところから小リッジを慎重に乗り越すとBルンゼに入る。Bルンゼから中央チムニーは一目瞭然。あとは自然と登路が見えてくる。

<装備>
カム一式、トライカム少々、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
12月~3月。西面なので雪が締まっている事が多いはず。八方尾根のアプローチも良いので厳冬期でも割と登り易いと思う。初冬の足慣らし、雪稜と組み合わせての継続登攀など遊び方はたくさんある。

<温泉>
みみずくの湯:日本有数の強アルカリ泉です。周辺の温泉は有名。入って損は無し。
倉下の湯:みみずくの湯を含む白馬八方温泉とは源泉が異なり、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉。価格も同じ600円なので気分応じて入り分けられる。

2019年12月17日火曜日

南岳西尾根~大切戸














積雪期の週末にビリビリ来る縦走を楽しみたい。それならば大キレットを越えて新穂高へ下降するのはどうだろう。大キレットは言わずと知れた特級品の岩稜歩き。着雪の具合によってラインに変化するので何度訪れても面白みがあるはずだ。筆者らは12月の中旬に南岳西尾根を登り、大キレットを越えて白出沢から新穂高へ下降した。南岳西尾根には登山道が付いているので、積雪が少ないシーズン初めでも取り付きやすい。上部の岩場帯も1Pロープを出せば核心部は終了するだろう。雪がついていたらもう少し厄介かもしれない。しかし、どの時期でも縦走路に出てからの方が手ごわいのは間違いない。寒暖差の大きいシーズン初めや、春雨の入った直後は固い氷が露出している可能性がある。アイゼンの爪が丸いと、全力キックステップを繰り返すことになる(実際なった)。さらに稜が雪に覆われている場合はルートファインディングにも注意が必要となるはずだ。道標、鎖、梯子があるので何とかなるが無かったら大変厳しい山である。こんな山に容易に通える距離に住む富山県民のアドバンテージは大きい。お金もかからないし、行先に困ったらレッツゴー新穂です。

<アプローチ>
尾根末端の傾斜がきついので、登山道通りに樹林帯の谷中を進むのが賢明。2631mまではえらい急登で雪の付き方が中途半端だと面倒。登ったのは寡雪の12月で下部のデルタ状岩壁はどこなのか解らなかった。マッチ箱周辺も雪稜となっておらず、1手だけマントルムーブのある岩稜で問題はなかった。雪が多い時期だと新穂高を早く出発する必要があるはず。3月になれば殆どの場合滝谷が下降できるのでB沢やD沢などエスケープルートがとれる。涸沢西尾根を下降する場合は3日間みておいた方が安心である。何はともあれ好天のタイミングを狙っていきたい。

<装備>
縦走用にパッシブプロテクションがあると便利だと思う。アックスは1本で十分だが、沢登に使うような小さいアイスハンマー(死語か?)があると便利かも。

<快適登攀可能季節>
いつでもOK。晴れた日

<温泉>
新穂高温泉なのでどこでも入ることが出来る。価格帯は高い。

栃尾の荒神の湯は良い露天風呂。体を洗う場合は石鹸を持っていこう。寒くて洗えないかもしれないけど。割石温泉まで行くのもいいだろう。

2019年12月11日水曜日

宝剣岳西面 第二尾根






「カレーライスばっかりじゃなくて、たまにはハヤシライスやハッシュドビーフも食べたなるしねぇ」という著名人の発言が話題になったのは今年だっただろうか。発言の背景はさておき、確かにそうだなぁとしみじみ思う。冬季は北アルプスや頸城など近場の山で十分過ぎるほどに楽しめてしまうので、ほかの山域は足が遠のく。こんなにも美味しいカレーライスだが、宝剣岳というハッシュドビーフもたまには食べたい。

宝剣岳第二尾根はスケールが3Pと小さいことを除けば充実の内容。見た目もかっこいい。岩稜系なので取り付きが明確ではないのだが、面白そうな場所から適当に開始しても問題ない。意外にもちょっとした凹角に氷が発達しているのが特徴的。これによりエビの尻尾や氷でホールドが埋まり、面白いミックスクライミングとなる。物足りない場合は西面でも東面でも、おかわりすればスケールは補える。近場のコンディションが思わしくないとき、十分訪れる価値があるラインである。でも、不貞行為は程々にね。

<アプローチ>
上松尾根を利用する事をお勧めする。厳冬期なら場所柄くそラッセルになることは少ないと考えられる。前日深夜に出発すれば入山日に一本登ることも可能。幕営場所は玉ノ窪小屋陰にテントを張ることが出来る。風当たりは強め。ロープウェイを使うと登山の趣も無いし、お金は掛かるし、時間を気にしないといけないし、体力は低下する。などなど善くない事が多い。標高は自分の脚で上げよう。
取り付きへは登山道を歩いて天狗岩を過ぎてからすぐのルンゼを下降する。このルンゼの直接取り付きへ向かう方面が凄く急でかなり怖い。緩やかな本流ルンゼをある程度下降したのち小尾根を乗り越し懸垂して取り付いた。

<装備>
カム一式、ナッツ少々、トライカム少々

<快適登攀可能季節>
11月下旬~5月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
妻籠宿:中仙道の宿場町を保存して観光地化してある。いかにもな観光地。おばちゃんの解説はさながら噺家であり職人技である。内容は非常に興味深い。そして歴史資料館も秀逸である。斜に構えて行かないのは損。

義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

寝覚ノ床:木曽川の流れと方状節理が生み出した景勝地。一見の価値あり。裏寝覚め~寝覚めまではボルダリングも可能。お勧めの課題は一斗の缶。