2026年1月19日月曜日

八右衛門沢 右岸壁4ルンゼ













 六百山から霞沢岳には岩壁帯が広がっているものの、岩壁はマサ化したボロイ花崗岩で人気が無い。その中でも八右衛門沢右岸壁は最もスケールがある岩場である。脆い岩、時より現れるブランクセクションライン、強傾斜帯の出現によりライン取りが難しい岩場である。北面に位置する岩場なので、暖冬シーズンや雨後など利用価値は相応にある。
 
 4ルンゼの側壁は見た感じ八右衛門沢の岩壁の中では最も高差がある。色味から明らかにヤバそうな雰囲気だが取り合えず目指してみる。ゴルジュ上のルンゼを1ピッチ登り横目に眺める岩壁はやはりボロボロ。決死の覚悟で登るような壁だったので、壁左側に回り込んで草付き壁を登った。こちらも技術的には易しいが、がっちりしたプロテクションに乏しいので特有の緊張感がある。6ピッチくらいで尾根に出る。尾根の先が禍々しい雰囲気となっているので、尾根を適当に下降して沢へ降り込んだ。尾根から2514mピークを越えて霞沢岳まで行ければ素晴らしいだろう。

 クライミングをしたというよりも山に登った気持ちになれる岩場である。無理にフェースを登らずに4ルンゼ左岸尾根といった岩尾根を登って霞沢岳まで縦走するといった計画の方が充実感が得られるかもしれない。

<アプローチ> 
筆者らはシンプルに八右衛門沢を詰めあがるアプローチとした。表六百沢や三本槍沢に間違って入らないように注意。三本槍沢を分けて比較的すぐに右岸壁が展開してくる。労力はかかるが場合によっては稜線から下降するというアプローチも有効だろう。トップアウトすると2514mピークの西肩に出る。2514mピークへの下降は難しく尾根登りも困難が予想されるため2514mから延びる尾根を下降して適当なところから三本槍沢へ降りた。尾根は灌木が生えてはいるものの非常に傾斜が強く、ぎりぎりクライムダウンができるくらい。三本槍沢本流への下降点では懸垂したが、上手いこと降りれば強引に歩いて降りられるかもしれない。

<装備>
カム一式、ピトン各種。

<快適登攀可能季節>
1月~3月くらい。雪崩のリスクが高いので入谷は慎重に。尾根登理をする場合には雪がしっかりついた2月~3月がいいかも。

2026年1月4日日曜日

薬師岳中央稜











 北アルプスで最も山深いのは冬の上ノ廊下周辺だろう。そのなかで冬の薬師岳東面は大きく泰然と構えている。赤牛岳からの眺望は周囲の穏やかな山稜と調和した絶景であり自然の妙味幽玄を味わうことができる。薬師東面の雪稜は北から順番に金作谷から延びる北薬師東稜、山頂へ直接至る中央稜、東南稜へ通じる第一稜、第二稜、第三稜とあるが冬はしばしば登られている。かつて第二稜を登ったので第一稜か中央稜を登り剱岳へ縦走するつもりで入山。

 厳冬の上ノ廊下は三度目ですべて別のところから渡っているが、どこも下ノ廊下より神聖な雰囲気を感じられるのがよい。第一稜と中央稜を両にらみできる1692m地点の渡渉であったが、天気めぐりの都合から中央稜を登ることにした。下部は雪の付着が少ない藪の急坂だったのでアイゼンをつけて1ピッチロープを出す。以後の樹林帯はしっとりとラッセルを楽しむ。下ノ廊下よりも標高が高いので乾いた雪が嬉しい。森林限界は2450m付近でここまでは随意平坦な所を選んで幕営できる。核心は想像と見た目通り2550mからとなる。ちょっとした岩場であるがプロテクションはハイマツが使えるので問題ない。難しくはないが荷物が重いので慎重に登ったほうがいいだろう。最後の緩傾斜帯は神聖な領域に踏み入れる前のカーペットのよう。漫として登っていると意外な感じで山頂に至る。直接山頂へ登ることができる爽快さが中央稜の魅力といえよう。山頂で確認した天気予報に恐れおののき立山~剱岳への縦走を諦めて北薬師岳から下降した。丸山へと至るこの尾根は美景でこれも嬉しい発見であった。

 冬の上ノ廊下にはまだまだ味わっていない魅力が沢山ある。今回登らなかった第一稜にも行きたいし、雲の平と高天原逍遥からの第二稜リピートも良さそうだ。上ノ黒ビンガ正面壁も再訪したいし、下ノ黒ビンガも見てみたい。そして剱岳へ縦走したらきっと充実するはず。薬師岳まわりでの富山市内散策は魅力は尽きない。

<アプローチ>
入山場所は幾らでも考えられるが葛温泉からブナ立尾根や竹村新道の尾根から登って赤牛岳北西稜を下降して取りつくのが容易だろう。下部は金作谷側と黒部川1692m地点側からの二手に分かれている。筆者らは1692m地点から取りついた。ここへの下降はできれば不思議なピークのある尾根よりも北側の曖昧な尾根をそのまま下降して懸垂下降1回で川に降りると渡渉はひざ下で楽勝である。それより上流側は腰付近まで水が届く。中央稜の幕営適地は森林限界以下と頂上へ向かう緩傾斜帯である。上部の方は傾斜は緩いけど風は強いので天気が良くない限りお勧めしない。下山路もいくらか取れるが、折立方面は長く辛そう。真川へ降りて立山駅に向かう方が楽であろう。筆者らは北薬師岳から丸山へと延びる尾根を下降したが、森と平原が素晴らしい景観の尾根で楽しめた。剱岳まで縦走して早月尾根を下山できれば最高である。携帯電話の電波が入るところが限られるため、断片的な情報で進行判断することとなり普段よりハラハラする。

<装備>
薬師東面に特別の岩のギアは必要ない。スリングが6本程度あれば十分。ピッケルも攻撃的なものは必要なく軽いやつ1本でいい。急な所が少ないのでストックがあると非常に調子いい。

<快適登攀可能季節>
12月下旬~5月上旬。雪が少ない年末年始には下ノ廊下横断は適さないため上ノ廊下がお勧め。

水無川 東不動沢右俣

 












 ワークライフバランスという言葉はすっかり社会に浸透した気がする。政策や世間ムードによってワークが適宜いい感じに仕上がってくると、ライフの方のバランスが求めれるがこれが難しい。登山とクライミングはあれやこれやと時間を要することからライフの方のバランスを著しく乱してくる。それでも長くやっていると調子がわかってくるものだ。筆者の場合は月の2~3週は半径100kmの範囲内で過ごして、残りをそれよりちょっと遠いとこに行くと具合がいい。
 越後三山は名声は聞くもののちょっぴり遠いので訪れたことは無かった。まずは有名所から雰囲気を掴もうとオツルミズ沢へ計画した。しかし待ち合わせた友人が定刻に現れない。困ったなあと駐車場でのんびりしていると偶然ほかの友人が現れ、より短めで面白い所を教えてくれた。それが東不動沢右俣である。八海山を縦走できるのが大変好ましく無事に合流した友人と転進を決める。
 まず、アプローチに残雪を多く見かけるのに驚愕する。同標高帯比で白山と黒部よりも雪が多いではないか。やはり富山はまったく豪雪地帯ではなく居住最適地であろう。転がる石は縞々の片麻岩のように見えるが異なるという。主として堆積岩の変成岩らしくその名も「上越帯」という超ざっくり分類されているようだ。応用地質として鉱山開発されたものの、これらの岩体の詳細は調査されていないようである。沢の内容はあんまり覚えていないが、草付きの質は北陸三県と随分違っており怖かった。特にニラみたいな草付きが印象的である。滝の流心は意外にホールド豊富で側壁はスラブ状となっており登りにくいが、谷の形状はオープンで気持ちが良い。快適に登って大した藪漕ぎもなく入道山の山頂へ飛びだす。お楽しみの縦走は岩場が続きスリリングでやっぱり面白い。懸垂下降したほうが安全な傾斜を鎖を掴みながら登り下る。これはこれで遊びとしては貴重な体験である。コギ池といった途中の池塘は期待したよりもしょぼかったがこれも一興。坂本神社までの登山道も歩きやすく美しい森でいつまでも歩きたくなる。秋の紅葉はさぞかし美しいことだろう。
 
 毎度のことながら初めての山は一辺で好きになってしまう。そうなると適期にはあの子もこの子も気になってきて益々ライフは浸食される。いや、もしかしたら既にライフは浸食されて尽くしており心を失った山ゾンビなのかも。ゾンビはゾンビらしく彷徨するしかない。お天気だけは注意して彷徨うことにしよう。

<アプローチ>
越後三山森林公園の駐車場から林道を歩いて廃道化してきたら適当に沢に降りて入渓。幕営適地は殆どない。雪が無ければ1050mの二俣。雪が有れば滝マークを超えた二俣の少し手前がいい。車が二台あって縦走したかったので坂本神社へ下山した。神社の人に聞いたら草刈りは年一回はしているが時期は不定とのこと。デトノアイソメ方面へ降りられる鉱山道という古い道が有るらしいが未確認。高倉沢も下降できそう。

<装備>
カム、ピトン少々、足回りはラバーの方がいい

<快適登攀可能季節>
残雪が多いので9月~10月くらいだと思う。

<博物館など>
トミオカホワイト美術館:歴史的に変色や割れのない白色の油絵具の使用が難しかったことを初めて知った。富岡 惣一郎が作り上げた油絵白色の抽象的な世界は心地よい。


2025年10月16日木曜日

加須良川 420m右岸支流









 加須良川上流域の支流は魅力的ではあるものの一泊二日の日程を要するものが多い。日帰りで行けなくもないだろうが、歩行禁止のホワイトロードに閉ざされていることもあり気楽に登山する事が難しい状況になっている。更に河川知名度の低さと近隣の境川が高名であることも重なり訪れる人は稀だろう。
 そんな加須良川で比較的気楽に行けるのが420m右岸支流。沢筋はここ数年の豪雨によって土砂が堆積しておりこの流域の美さが損なわれているのがちょっと残念。殆どの北陸の小さな沢は集中豪雨が起こると楽しめなくなっていくのだろう。因果なものである。それでも小滝登りはそれなりに楽しめ、滝マークの大滝も見ごたえがある。三角点を踏んでからの下降には頭を悩まされる。土砂崩れや駐車場所の都合から楽に戻れる沢を上手く探し当てないといけない。こうなると俄然山登りとして面白くなってくる。
 沢を登ることだけを目的に訪れると少々物足りないと思う。三角点を目指した山登りと捉えると多様なラインが考えられる。これだけを登り降りするならば日帰りとなるが、ほかの沢と併せて登っても楽しめるはずだ。

<アプローチ>
国道156号線の加須良川出合に駐車して国道より下流側の旧道橋のたもとから入渓。1278.7mの三角点から最も近い東側677m地点へ向かう沢はどの支流も土砂崩れによる大規模山抜けが発生しており降りにくい。筆者らは三角点最寄りの馬狩谷への支ルンゼを下降したがガレの堆積や崩壊の懸垂下降など少々危険で面倒な下降だった。椿原橋へ降りる尾根には恐らく送電線巡視路が付いているので尾根に登り椿原橋まで行くと駐車地まで早く戻れるだろう。なお、加須良川左岸についている登山道マークは廃道となっているようで有ると思わない方がいい。鹿の繁殖によってか割と獣道が多くて藪は許容範囲であると感じた。

<装備>
滝マークの20m滝を登るならカム#1までワンセット、ピトン各種、足回りなフェルト+念のためクライミングシューズ。登らないのであればロープだけでOK。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。

2025年10月13日月曜日

大武川 桑木沢










 甲斐駒ヶ岳は富山から遠いけどもクライミングも沢も楽しめて遊び甲斐のある山である。しかも雪が少ない地域なので北陸よりもずっと早く沢登りをスタートできる。
 桑木沢は日帰りで楽しむピリリと辛い沢。序盤は小さな滝は登れるが大きな滝はうまい具合に巻いて登る。1350mを過ぎてからの後半の方が巻きを含めた登り方や沢への復帰方法など判断に惑うことが多い。富山近辺の沢とは雰囲気が違うので難しく感じるが周囲の環境をよく見て登りたい。日帰り沢としては内容も豊富で秀逸である。富山から日帰りで登るのは厳しいので他の易しめの沢と組み合わせたり、瑞牆クライミングと抱き合わせにしたりして訪れてはどうだろうか。

 <アプローチ>
林道のダートが始まる手前のキャンプ場のある堰堤スペースに駐車する。走破性のある車なら林道を進めるが、ゲートが割と近くにあるので意味がないと思う。桑木沢へ向かう林道を歩いて堰堤が終わるところから入渓する。本流出合いからもゴルジュとなっていて登って楽しいことが後で発覚してちょっと後悔した。登山大系には沢沿いに遊歩道があるということになっているが廃道化している。下山は黒戸尾根が楽。

<装備>
カムワンセット、ピトン各種。ラバーでもフェルトでも登れると思うが、ラバーの方が登り易いかも。クライミングシューズは要らないと思う。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 

2025年9月30日火曜日

滑川 前岳沢













 木曽の谷は明るい沢が多い気がする。谷は割合開けていて花崗岩の白に光が差し込むとまばゆいくらいだ。前岳沢は出合いからちょっとゴルジュになっているが、すぐに開けて南向きでとても明るい沢だ。ロープが必要な箇所は2か所くらいがだ特段の悪さは無い。ただ少し岩が脆いので注意は要する。ゴルジュを抜けて大きな段瀑を登るとまるで赤木沢のような清々しい高山の雰囲気を感じる。急な谷で快適に進むため遡行はあっという間に終了する。せっかくなので木曽駒ヶ岳山頂へ向かおう。日帰りで登山を楽しむには中々よいコースである。

<アプローチ>
堰堤のある砂防公園に駐車して滑川上流へ向かう。敬神の滝小屋から上流方面へは林道跡が続いておりしばらくはそれを歩ける。川原に出てからが見ての通り長いが特に何も出てこない。登山道が合流したら上松Aコースである。

<装備>
ゴルジュ用にカム少々、ピトン少々。ラバーソールが適。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。