2025年10月16日木曜日

加須良川 420m右岸支流









 加須良川上流域の支流は魅力的ではあるものの一泊二日の日程を要するものが多い。日帰りで行けなくもないだろうが、歩行禁止のホワイトロードに閉ざされていることもあり気楽に登山する事が難しい状況になっている。更に河川知名度の低さと近隣の境川が高名であることも重なり訪れる人は稀だろう。
 そんな加須良川で比較的気楽に行けるのが420m右岸支流。沢筋はここ数年の豪雨によって土砂が堆積しておりこの流域の美さが損なわれているのがちょっと残念。殆どの北陸の小さな沢は集中豪雨が起こると楽しめなくなっていくのだろう。因果なものである。それでも小滝登りはそれなりに楽しめ、滝マークの大滝も見ごたえがある。三角点を踏んでからの下降には頭を悩まされる。土砂崩れや駐車場所の都合から楽に戻れる沢を上手く探し当てないといけない。こうなると俄然山登りとして面白くなってくる。
 沢を登ることだけを目的に訪れると少々物足りないと思う。三角点を目指した山登りと捉えると多様なラインが考えられる。これだけを登り降りするならば日帰りとなるが、ほかの沢と併せて登っても楽しめるはずだ。

<アプローチ>
国道156号線の加須良川出合に駐車して国道より下流側の旧道橋のたもとから入渓。1278.7mの三角点から最も近い東側677m地点へ向かう沢はどの支流も土砂崩れによる大規模山抜けが発生しており降りにくい。筆者らは三角点最寄りの馬狩谷への支ルンゼを下降したがガレの堆積や崩壊の懸垂下降など少々危険で面倒な下降だった。椿原橋へ降りる尾根には恐らく送電線巡視路が付いているので尾根に登り椿原橋まで行くと駐車地まで早く戻れるだろう。なお、加須良川左岸についている登山道マークは廃道となっているようで有ると思わない方がいい。鹿の繁殖によってか割と獣道が多くて藪は許容範囲であると感じた。

<装備>
滝マークの20m滝を登るならカム#1までワンセット、ピトン各種、足回りなフェルト+念のためクライミングシューズ。登らないのであればロープだけでOK。

<快適登攀可能季節>
8月~10月。

2025年10月13日月曜日

大武川 桑木沢










 甲斐駒ヶ岳は富山から遠いけどもクライミングも沢も楽しめて遊び甲斐のある山である。しかも雪が少ない地域なので北陸よりもずっと早く沢登りをスタートできる。
 桑木沢は日帰りで楽しむピリリと辛い沢。序盤は小さな滝は登れるが大きな滝はうまい具合に巻いて登る。1350mを過ぎてからの後半の方が巻きを含めた登り方や沢への復帰方法など判断に惑うことが多い。富山近辺の沢とは雰囲気が違うので難しく感じるが周囲の環境をよく見て登りたい。日帰り沢としては内容も豊富で秀逸である。富山から日帰りで登るのは厳しいので他の易しめの沢と組み合わせたり、瑞牆クライミングと抱き合わせにしたりして訪れてはどうだろうか。

 <アプローチ>
林道のダートが始まる手前のキャンプ場のある堰堤スペースに駐車する。走破性のある車なら林道を進めるが、ゲートが割と近くにあるので意味がないと思う。桑木沢へ向かう林道を歩いて堰堤が終わるところから入渓する。本流出合いからもゴルジュとなっていて登って楽しいことが後で発覚してちょっと後悔した。登山大系には沢沿いに遊歩道があるということになっているが廃道化している。下山は黒戸尾根が楽。

<装備>
カムワンセット、ピトン各種。ラバーでもフェルトでも登れると思うが、ラバーの方が登り易いかも。クライミングシューズは要らないと思う。

<快適登攀可能季節>
6月~10月 

2025年9月30日火曜日

滑川 前岳沢













 木曽の谷は明るい沢が多い気がする。谷は割合開けていて花崗岩の白に光が差し込むとまばゆいくらいだ。前岳沢は出合いからちょっとゴルジュになっているが、すぐに開けて南向きでとても明るい沢だ。ロープが必要な箇所は2か所くらいがだ特段の悪さは無い。ただ少し岩が脆いので注意は要する。ゴルジュを抜けて大きな段瀑を登るとまるで赤木沢のような清々しい高山の雰囲気を感じる。急な谷で快適に進むため遡行はあっという間に終了する。せっかくなので木曽駒ヶ岳山頂へ向かおう。日帰りで登山を楽しむには中々よいコースである。

<アプローチ>
堰堤のある砂防公園に駐車して滑川上流へ向かう。敬神の滝小屋から上流方面へは林道跡が続いておりしばらくはそれを歩ける。川原に出てからが見ての通り長いが特に何も出てこない。登山道が合流したら上松Aコースである。

<装備>
ゴルジュ用にカム少々、ピトン少々。ラバーソールが適。

<快適登攀可能季節>
7月~9月。良く知らない山域だがこれ位の期間は快適そう。

<博物館など>
義仲館:木曽義仲の資料館。県民には火牛の計で御馴染み義仲公である。旗揚げまではこの地で育った。ここから北陸道進撃が始まったと思うと感慨深い。

2025年9月20日土曜日

尾白川 黄連谷
















 久しぶりに甲斐駒ヶ岳へ登りたいと思った。尾白川の黄連谷は甲斐駒ヶ岳山頂へ自然に至る沢でアイスクライミングで有名だが、夏の沢登りも南アルプスを代表する名渓と聞く。

 尾白川の駒ケ岳神社から登ればさぞ充実するのだろうが、難しいゴルジュ帯があり週末以上の日程を要するので林道終点から入渓する。花崗岩の大渓谷といった風情で雰囲気は良い。偶然高巻きやすい設計になっているので大丈夫だが、多少地形が違えば相当難しい沢になる岩だろう。尾白川本流はやたらとロープや赤布があるが、これがなかったら巻きのラインも考えさせられることになり時間を要すると思う。黄連谷に入っても渓谷美は続く。名前の付いた大きな滝が二つあるが、この巻きは意外とややこしい。ぱっと見で巻きに入るとライン取りを間違えてしまうので地形を注視してから臨んだ方がいい。大き目の二つ目の滝の巻きは獣道が錯綜しており、降り口が分かりづらい。結局巻きから二俣へダイレクトに到着した。右俣に入ると最初は水際や小さく巻く形で登れる滝が続き面白い。奥千丈の滝がどれだが分からなかったが、4か所くらいロープを出して登った。どちらもそれなりにクライミングだったので、ある程度の心得が無いと危なそうだ。スラブが発達しているためイメージしていたよりも高巻きが多い。厳しくも危なくもない巻きだが、やはりアイスクライミングで直登したほうが楽しいだろう。2400mの幕場から進んだナメ状多段滝を1ピッチ登るとあとはロープは要らない。甲斐駒ヶ岳の山頂はガスにもかかわらず賑わいをみせる。流石の百名山である。

 思ったよりクライミングで巻きが多い沢であった。解放感があり眺めが良い沢だし、標高差も十分でよい運動になる。しかしこの沢の本当の価値は駒ケ岳神社から本流を遡行して山頂に立つことかもしれない。少し日数がかかるので夏休みに丁度いいかも。

<アプローチ>
黒戸尾根の登山口となる尾白渓谷入り口か、日向山の矢立登山口に駐車する。矢立の方は駐車スペースが狭いので要注意。幕営は右俣2400mが極上である。他は1900mくらいのところが良かった記憶があるような。下山は黒戸尾根が安牌

<装備>
カム少々(小さめ)、足回りはラバーの方が有利

<快適登攀可能季節>
7月~10月 (多分)

2025年9月18日木曜日

神宮川 笹ノ沢
















 山登りをする人で雨が好きな人は多くないと思う。筆者もその一人である。山では眺望を楽しみたいし、濡れて不快な思いもしたくないし、歩きにくいのも嫌だ。だからお休みの日は晴れを願うことは有っても雨乞いするということは決してない。
 南アルプスの前衛峰に雨乞岳という山がある。眺望が良さそうで機会が有ればハイキングで訪れたいと思っていた山だ。曲折がありすっきりしない空模様の週末に北杜市に居た。そして雨乞岳のことを勃然と思い出した。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登る。こりゃ諧謔性が有って良い。神宮川笹ノ沢から雨乞岳を目指すことにした。

 笹ノ沢は出合いから素敵な大き目の滝が4つくらい出てくる。どれも快適に登れたり簡単に巻けたりするので問題ない。3つ目の滝は滝横のクラックを登って楽しい。興味深い点は猛烈に砂が堆積しているのに渓谷美を保っていることである。マサ化が激しい花崗岩で水深は浅いうえ大岩は無い。不思議と谷中に倒木は少なく何故か苔も繁茂し魚も住んでいる。森の雰囲気と白砂がマッチして特異な美を醸す。北陸ではお目に架かれない不思議な世界だ。マサはただ風化によって供給され、湧水の沢で水量が安定しているために落ち着いた渓相となるのかもしれない。美しい渓相と時折現れる小滝を楽しみながら進む。山頂を最短距離で目指すべく1340m付近で左岸支流へ入る。後から知ったが、多くの遡行者はこの支流ではなく次の谷を右に入るようだ。この支流の途中で結構渋いシャワークライミングの滝がありネイリングとガストンムーブが味わえる。それ以降は落ち着いたゴルジュライクな渓相に戻りロープレスで楽しめる。雨乞岳は通じる登山道に出ると森の雰囲気もよくいい道だ。山頂はやっぱり雨で眺望は無かった。雨乞いをすることのない人種が雨の中雨乞岳に登り晴天を希う。これで念願成就である。次は晴天時に流川から登ってみたい。
 
 笹ノ沢は関東ではポピュラーな沢のようだ。特異な渓相は一見の価値があるので富山から少し遠いが訪れてみると良いと思う。話は逸れるが富山県で雨の中のハイキングするなら樹高の高いブナの森を傘をさしながらぶらぶらのがいい。霧がかった森は一層幽玄となる。雨だれはブナの葉で柔らかになるので傘を閉じてゆっくり音を楽しむのも楽しい。雨音が新緑と深緑の時期で異なるのもまた面白い。大品山や縄が池からの高清水山&高落場山が最高だろう。関東の皆さん、雨の週末は富山県のブナの森へいらっしゃい。

<アプローチ>
神宮川と並走する林道のゲートまで車で入れる。幕営することはない行程だと思うが、しようと思えば快適な場所は割とある。登山道は歩きやすいし、登山道のない尾根も植生が乏しいため上り下りができる。山の管理道かは不明だがそこら中に道が有って迷う。

<装備>
カム少々(小さめ)ピトン、足回りはラバーの方が有利

<快適登攀可能季節>
5月~10月 (多分)